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闇文庫

主に寝取られ物を集めた、個人文庫です。

花 濫 第12章欲望の果てに3

庭の椿が満開だった。ことしは暖冬だったせいか花付きがいい。買い物に冴子も出かけて、森閑とした土曜日の午後の書斎で、惣太郎は机に
向かったまま、ひとり椿の花の落ちる音を聴いていた。
卓上の原稿用紙の上に一通の書簡があった。先程郵便屋のバイクの音に惣太郎がとってきたものである。大学の後輩である田辺勇夫からのも
のだった。
卒業してから、東京の教職員試験に合格したにもかかわらず、自分から志願して海外青年協力隊に入り、インドを皮切りに、東南アジア各地の
日本語学校を渡り歩いていたのだ。

四〇歳になってから北京の国営の日本語学校の教師になっていた。任期が切れたが、中国政府の要請で、もう三年ばかり延長するが。節目で
もあるので、一度帰国しようと考えていたところ、実家の両親の執拗な要請で、やむなく今回はじめて見合いをする。
生涯独身で遊びたいと考えていたが、自分でもそろそろ年貢の納め時だと思っているから、いい娘なら結婚してもいいと考えている。
今中国ではコンピューター関係の図書が不足しており、その翻訳をしたいから、ぜひ先生のご協力をお願いする。些少だが中国政府からも翻
訳料も支払われる。約一か月先生のご指導をお願いしたい。


東京在住の同窓生である矢島の所に転がり込むはずだったが、胃がんで入院中で駄目だったので、これから下宿先を探すことにしている、とい
う内容だった。
英文科と違って、専攻の少ない彼の専門である言語学教室では、卒業生の名簿を繰るまでもなく、十年前までなら、ほとんどの学生を名前だけ
でなく思い出すことが出来る。言語学教室だが、彼は別の口座で中国語を専攻していた。言語学とか中国語とか、当時、他の学生に人気のない
科目を専攻した方が得だと思って惣太郎と同じところを選んだという彼の打算的な考えが印象に残っている。

背が高く、いつもジーパンをはき、よれよれのシャツを着ており、刻みの深い美しい瞼の陰に男らしさを秘めた眼が、ちょっと凄みをもって見据
える癖のある、野獣のような逞しい青年だった。
 優等生でも学研の徒でもなく、普通の現代風の学生だったから、惣太郎との付き合いも一般的な教師と学生の範疇をでることはなかった。その
上、女子学生を妊娠させて、親からの訴えで教授会で問題になったこともあり、どちらかというと学校としては敬遠したい学生だった。

惣太郎とは、むしろ学校を卒業しからの方が付き合いが深い。数年前に惣太郎が文部省に研究費補助を申請していた「ヒンズー族の語源につい
て」の研究が認可になり、大学から六名の調査隊をインドの奥地に派遣したことがある。惣太郎は団長として学問以外の庶務や現地での食料、宿
などの調達という重荷を背負った。その時、ふと青年海外協力隊員として現地にいた彼を思い出して協力を要請したところ、彼は快諾して、一ヶ月
の滞在中、親身の世話をしてくれて大助かりした。

その時会った田辺は、学生時代よりさらに逞しくなった感じで、青白い顔の多い言語学専攻学生とは思いも及ばない。もう一歩で長髪族とみまち
がえられる長い伸びほういだいの髪で、口髭をはやし、前からすごみのあった視線が雄豹を思わせるような強さを増し、全身が陽灼けした逞しさに
輝いていて、一見アラブ人かインド人のような野生味を帯びていた。反面、学生時代の不良っぽい軽率さがなくなり、律儀で沈着で知性な探検家
のような風貌に変わっていた。

約一ヶ月の間一緒に生活して、学生時代には想像もつかなかった親密な仲になった。その田辺勇夫が帰ってきて、自分に頼ることがあるというなら、
本気でやってやらなければと、またひとつ、聞こえるか聞こえないほどの微かな音を立てて落ちた赤い椿の花を眼で追いながら惣太.
郎は考えていた。

三枚の再生紙らしい粗末な中国の便箋を封筒に戻しかけて、ふと惣太郎の手が止まった。最後の便箋に書かれていた田辺の見合の件が、ふと気に
なった。相手は偶然だが同窓の六年下の英文科卒業の娘で、卒業後は、銀座にあるわが国最大手の旅行会社の本社に勤めていうrOLである、と書
かれていた点である。

あの野獣のような逞しい青年と、銀座のなよやかなOLとを想い重ねた時、なぜか、その見知らぬOLの替わりに、自分の妻冴子が重なったのである。
無意識に重なった、日焼けした田辺の勁逞な身体と妻の軟弱な肢体の幻影に、思わず惣太郎の胸がどきんと動悸を打った。
自分の秘宝を試す機会があった。                    
晴天の霹靂のように、それまで安穏としていた惣太郎の心が乱れはじめてきた。
そうだ、田辺勇夫は冴子を知らない。冴子も田辺勇夫については全く無知である。田辺は今年四〇歳。美しいものを的確に判断する審美眼は備わ
っている。
涯嫁は貰わずに女性遍歴をしたいというほど多情である。実際にその方n経験も豊富で、女を見る目は肥えている。その田辺が冴子をどう見るか。
 
これは重大な事だぞ、と惣太郎は高鳴る新造の音を自分で聴きながら煙草に火を付けた。
野獣のように逞しい田辺が、憑かれたように冴子の白い裸体に重なっていく幻影が、眼の前の出来事のように惣太郎にははっきりと見える。巨樹の
ねじれた根のような頑強で巨大な陰茎が、冴子のふっくらと盛り上がった肉丘の割れ目を強引に開いて突き入っていく。冴子の悲鳴が部屋に響き、か
細い腕が田辺の太い頚に回され、力なく開かされていた冴子の白い脚が痙攣しながら田辺の躍動する腰に、しっかりと巻き付いていく ……。

惣太郎の夢想は、しだいに現実味を帯びて無限に広がりはじめた。
その時には、冴子は最高に美しくなければならないが、二十九歳の女性遍歴も豊かな田辺を果たして惑わすに足りる美しさで対処出来るだろうか。
自分は最高に美しいと信じているが、考えてみれば冴子も、もう二十七歳である。子供も生まないので若さは衰えていない。目尻に皺もないし肌も
輝いている。人並以上に盛り上がった乳房もまだゴム鞠のような弾力を失っていない。腰のくびれやすんなりとした脚や逞しい太腿も魅力的である。
それ以上に惣太郎が自慢に思っているのは、若い男との情交で醸し出された、男に対する無意識の所作である。

無意識というのは、冴子が努力したり演技したりするのではなく、ひとりひとりの男と無垢な心で真剣に交わっている間に体得したテクニックでも
なく、男達から引き出された冴子に潜在されていた天性の淫蕩な媚態が自然のうちに露呈してきたのだった。
例えば、男達が冴子を抱こうとするとき、長い髪の間から上質の香油を溶かしたような艶を湛えた瞳を少し眠らせて凝っと見上げられると、男達
何とも言えず濃い肉感がうごめき出して来て、憑かれたように冴子に吸い込まれる。また、男に磨かれた滑らかで柔らかな肌を、羞恥の姿態でし
をつくるとき、男には冴子の優雅な姿態全体が、香ぐわしい美食を盛った器のように見えて、思わず生唾を呑み込むのを惣太郎は幾度も見ている。

かって劉、ラサールなど、毎晩淫蕩の限りを尽くしていた時に現れた、陰微に落魄した立居振る舞いも最近は消えて、昔の清楚な挙措に還って
いるが、それにしても、一瞬で田辺を収攬するには、まだまだ妻を磨く必要がある。
今更容姿を変えることは出来ない。なんといても妻冴子の女としての魅力は、技巧のない純真な性交の姿態にある。情交時の最高度に魅力ある
冴子を見たのはいつだっただろうかと惣太郎は考えてみた。

いづれも冴子がはじめての男と情交をかわす時の羞恥を含んだ、それでいて純真な大胆さで男を受け入れているときである。いままでの妻の相
手は、妻が好ましいと思っている相手ばかりだから、妻に期待感があった。やっと想いが充たされるという興奮と羞恥が解け合って、あの得も言わ
れぬ淫奔な解けるような姿態になるのだった。

しかし今度は違う。なにしろ見たことも聞いたこともない男が、いきなり目の前に現れて、それと交わるという前代未聞の事態が起こるわけだから、
冴子には期待感も事前の欲望昴揚といったものはない。下手をすれば恐怖に顔を歪め、逃げるかも知れない。
それを事前にどうして調整するかが問題だ。田辺の魅力を妻に教え込んで、妻が先に媚態をとったのでは、秘宝をどう他人が見るか試す事には
ならない。生の妻をそのまま見せなければ意味がない。

だが、どんな秘宝でも、他人に鑑定させる前には、必ず磨き抜いて秘宝の真価を出来るだけ引き出し安くするのが普通だ。しかし女という秘宝
は、どうして磨けばいいのだろう。

惣太郎は、ここまで考え及んで、煙草に火をつけた。もう論文をまとめる意欲は失われていた。立ち上がると、書庫の中から録音テープカセット
収納箱を取り出した。今まで集めた方便を記録したテープの一部である。惣太郎の収集したテープは、北海道のアイヌの各部族から沖縄まで五百本近いが、二十
本ほどカセットの入ったこのケースは、全部未整理と朱で書かれていて番号と記号だけしか打っていない。惣太郎は、その中からRUという記号のカセットを取り出し
て、テープデッキに入れた。
スピーカーからジーツと微かなノイズ音がしばらく聞こえていたが、    

「いやよ……」                           
いきなり妻の短い声が聞こえて、家具の軋るような音がした。妻が何かを拒否している様子だが、その声は決して本気で拒否をしている声ではな
く、なにか甘い響きがある。
「……着物の袂というのは、こういうことをするために開けてあるの? 」
笑いを含んだ劉の声だ。
「馬鹿ね……。ああ……」
妻が劉にどこかを触られて思わずため息を漏らした。その後は、衣類の触れる音や畳の下の板がきしる音に交じって、時々舌打ちをするような
短い唇の吸音が聞こえるところをみると、明らかに妻と劉は長い接吻をしているようである。

時計の振り子の音が聞こえているので、ふたりがそのために毎夜のように使っていた階下の玄関横の和室であることも判った。一体ふたりはどんな
姿態で接吻しているのだろうか。衣類の触れあう音ではなく、あるいは布団が、二人の動きで揺れる音かも知れない。
惣太郎は浩二や田宮の場合のように、妻と劉の媾合の現場にいたことはない。今テープで聞くのと同じように、二階の書斎や、時には和室の襖の
外の廊下で立ち聞きしただけである。

ただ一度だけ、ある冬の寒い夜、書斎にいたら、いつもとは違う、発狂でもしたような激しい妻の嬌声に驚いて、足音を忍ばせて階下に降り、襖
をそっと少し開けて、中の様子を窺い見たことがある。
その時は、胡座をかいて布団の上に坐った劉の上に妻が跨った座位で、ふたりは激しく動いていた。くの字に曲がった妻の両脚が劉の腰を挟んだ
まま激しく揺れていた。火の気もない和室の底冷えの中で二人は全身に汗を流していた。劉の肩に両手を回して長い髪を後ろに垂らしてのぞけった
妻は、かろうじて妻の背に回された劉の両手で上体を支えられていた。

激しい痛みにでも襲われているように眉間に深い立て皺を寄せ、咆哮を放ち続ける大きく開いた口からは涎が流れていた。
ちょうど妻の背が斜めに見える位置で、妻の表情も斜めからしか見えなかったが、劉の顔は斜めではあるが、惣太郎が覗いている襖の方を向いて
いたので、気付かれる恐れがあり、ほんのわずかの時間しか惣太郎は盗み見しなかった。しかし、短い時間だからなおさら、底冷えのする寒い夜
に、火の気もない和室で、全身に汗を流して狂喜の媾合をしてる二人の姿態を、いまでも鮮烈な印象となっている。

「……冬休みの間が長かった。台湾にいても奥さんに会いたくて……、今日ここにきて奥さんに会うと、もう……こうなっちゃって……食事の時なん
か、先生に見つからないかと気がきでなかった……」
「まあ……」
くすん、と笑う妻の声がした。多分、劉が勃起した自分のものへ妻の手を導いたのだろう。
「あたしも会いたくて……。あなたを見た時、思わず顔が紅潮したのが自分でもわかったのよ」
「わかってます。今日の奥さん、いままででいちばんきれいだった……」

切なそうな妻の聞き取れない鼻声がして、ふたりはまた接吻を始めたようだった。テープはしばらくノイズ音しか伝えてこない。
惣太郎は、このテープは、劉が冬休みで台湾に帰省して帰ってきた時のものであることに気付いた。
惣太郎も、あの夜のことははっきりと覚えている。冬休みに入って、浩二は広島に劉は台湾に帰省し、ヴエンもラサールも帰省しない留学生のた
めに開かれた蔵王のスキーキャンプに行って、荒れ狂っていた妻の淫奔な生活が、俄に静謐になった後だった。それまので毎日の乱交は、妻に凄
艶な美貌を与えそすれ、商売女がみせる頽廃や淫蕩な落魄したような変化はなかった。

しかし、惣太郎は約半月の禁欲生活を余儀なくさせられた妻の容貌に、明かな変化が現れているのに気付いた。それまでの昼夜を分かたぬ淫乱
の限りを尽くしているあいだの妻は、平素でも、なにか悦楽の余韻を含んだような目に潤みがあり、妻の全身からは妖し気なメスの匂いが立ちの
ぼり、その原因はどこからと指摘出来ないままに、雰囲気にむせ返りそうになる妖艶さであったが、禁欲を続けると、濡れたようの目の潤みが、
いつの間にか、きらきらと輝いくる。

姿態も、それままでの体液をしたたらせているような湿った軟らかさとは違い、甘酸っぱい若い女の匂いが内部から照りはえてくるような薄い皮膚
が艶やかになり、動作も敏捷になってきた。妖艶さよりも、こりこりとした若い女の肉の匂いに、惣太郎でさえ口内に唾のたまってくるような食欲に
通じる性欲を感じさせるような魅力が出てきた。                             

新年会から惣太郎が帰宅して、ひと風呂浴びて茶の間に戻るため廊下を歩いてきたら、玄関で劉を迎えた妻が、劉に寄り添うようにして茶の間に
入るのとかち合った。その時、昏い廊下から明るい茶の間の灯に照らされた妻の顔を見て、惣太郎は一瞬、それが先ほどまでの妻かと疑うほど輝
いているのに驚いたのを思い出した。

先ほどまで白かった妻の顔が、目元に血の赤さを染め、目がぽっと潤み、全身がどことなく華やかさに匂い立っている。女の精が劉の男に触発さ
れて一瞬にして身体中に拡散したような感じがあった。劉に座布団を出す拍子に腰をひねった姿勢までなまめかしい。そして座布団を受け取るため
に向き合ったふたりの間に、男と女の強烈な吸引力が作用しているのを惣太郎は肌で感じた。

男として忘我でぬめり込んでいきそうな女の魅力があの時の妻にはあった。それは禁欲が限界に達して、若い妻の肉体が男の肉を需めて疼き、悶
々としていた矢先に、予期せぬ恋人の出現に妻の欲望が爆発して、体内のあらゆる性の機能が一斉に活動をはじめたとでもいうような活力に満ちた
姿態だった。どう表面をつくろっても隠しえない妻の血のたぎっりが、女の命のあらん限りの美しさを放出しているといった情態だった。

そうだ、あの時のように、妻を禁欲の極限まで追い込んで置けば、自然と異性を需めて、女として輝きはじめてくる。だが、あの当時とは違って、
今の妻は毎日が禁欲情態である。だから、田辺が来た時に、二人が結ばれるにふさわしい雰囲気だけつくってやれば、妻の方は自然に輝き出すに
違いない。出来れば、前に従兄弟から貰ったままになっている催淫剤の灸を事前に打っておいけば、さらに効果があるだろう。

二本目の煙草に惣太郎は火をつけた。テープは二年前の劉と妻の情交の模様を忠実に再生していた。妻の咆哮が激しくなっている。どういう体位
でしているのかわからないが、さかんに湿った肌と肌が打ち合う音が聞こえている。
問題は、二人の出合をどう演出するかだ。惣太郎は、それを考えただけで、もう動悸がはじまり、全身がぞくぞくと欲望を催し出すのを抑えられな
かった。

もう後へは引けないと惣太郎は考えた。妻の冴子がどう反応するだろうか。あの浩二や田宮や留学生達に狂った妻だから、今度も簡単に陥落する
と考えるのは軽率な気がする。当時は、妻も初体験の歓楽に酔いしれて我を失っていたが、冷静に本来の自分を取り戻している妻が、本気で乗って
くるだろうか。また、独身とはいえ、田辺勇夫は三七歳の甲羅経た男で、あの童貞ばかりだった純情な浩二や留学生達とは違う。一歩間違えば、惣
太郎の人格までおかしく評価される。絶対失敗は許せない。

だが、田宮はどうだったか。あれほど遊び馴れた男でも冴子にめり込んで行ったではないか、と惣太郎は、怯む感情を奮い起こす。
幸い田辺勇夫は酒が好きだ。インドの奥地でも、彼は毎夜の酒だけが楽しみのような男だった。酔うと磊落になる性格の男で、女の話しも自分から
はじめるくらいだ。若い女ひとりが、一か月二千円で雇えるインドでは、自宅に四人の若い女を常時女中に使っていたが、全部に手を付けたという
話しも酔って聞いた。夜の面倒まで見させて二千五百円も払えば充分だったらしい。一晩にどれだけやれるかと、四人の女を並べてやってみたが、
ひとり二回づつでダウンしたと、砂漠の風音を聞きながらのテントの寝酒でしゃべっていたことも惣太郎は覚えている。

惣太郎と一緒にいた間も、現地の部族の若い娘を手なづけて、夜のお伽をさせたのも彼だけである。それも酒がなければ出来ないらしく、飲み過
ぎて酔った晩に限って、娘を買いに付近の部落に出て入った。

娘でも先天的な病気をもったのいるから、身体の隅々まで厳重に調べなければ危ないと、親から買った娘を、テントの外に置いた金盥に湯を入れ
た風呂に入れて、全裸にしたまま自分のテントに連れ込んで行くのを見たこともある。田辺は好色であることは間違いない。その上、あの野獣のよ
うな猛々しい身体付きといい、精悍な動作や、筋肉の盛り上がりといい、性的絶倫な様相であるし、経験の豊富さから察しても技巧的にも優れてい
ると思われる。

それにしても、浩二の場合のように、自分が同席した乱交は無理と考えなければなるまい。酒は好きだが、浩二のように我を忘れるようなこと
はないから、酔うだけ酔わせて、させるわけにもいかない。また、酔った忘我の状態では、秘宝の価値判断は出来ない。
しかし妻が酔うぶんにはいっこうに問題はない。酔ってしどけなく横たわる美しい妻とふたりだけの夜の密室において、どうなるか。これこそ秘宝の
真価が問われる、真迫の鑑定である。

テープの妻の声が断末魔の様相を帯びてきた。今聞こえている場面が自分が垣間みた時だろうか。惣太郎は目を閉じた。向き合って坐わり、しっか
りと抱き合った恰好で、互いに全身に汗を流しながら、狂ったように腰を揺すっていた妻の姿態が思い出される。
自分が同席出来ないとすれば、興味は半減する。自分の妻に惹かれていく男の情態。男によって快楽の極限に追い上げられ酔いしれていく妻。
この状態をどうしても見たい。

自分が部屋にいないとすれば、このテープのように盗聴という手がある。最近買った小型ビデオで盗撮とう方法もある。地方に行って、老人同士の
方便を取材すと時に、最近ではテレビなどの影響で、土地の人間でない物がいると、つい標準語を混じえて話す場合がある。そのためテープを仕掛
けていたのだが、最近、小型のビデオカメラを買って、これを部屋に隠しておいて取材することにした。テープでは拾えない、唇の動きまでが、は
っきりわかるので重宝している。これを使うことにすればいい。テレビカメラからは、電波で受信装置まで映像と音声を送ってくるから、自分の書斎
に受信装置を置けばいい。問題はカメラだ。どの部屋に仕掛けるかが問題だった。カメラは自分が買った物と学校にあるのと二台が使えるから、居
間と田辺を泊まらせる客間に仕掛けよう。だが、もし、酔った勢いで、田辺と妻が使っていた玄関横の和室か妻の部屋に行ったら万事休すである。

和室には、なにか荷物を入れて置いて使えないようにしておく。妻の部屋だけはどうすることも出来ないが、まあ、初対面の者を妻が自分の部屋に入
れる事もあるまいと判断した。
テープが静かになっていた。囁くようなふたりの睦言が流れている。
「愛している……」
「綺麗だ……」。弛緩した躯を並べて横になり、掛け布団を掛けて抱き合って、接吻を繰り返しながらしゃべっているに違いない。

惣太郎は、ともかく田辺勇夫に、遠慮なく自分の家に滞在するように早急に手紙を出すことにして万年筆を握った。書くことによって、夢想の中での
さまよいから、現実がしだいに戻りはじめた。                   

ふと、時計を見ると十一時過ぎだった。もう買い物に出た冴子が帰ってくる時間である。
惣太郎は、立ち上がって秘密のテープをカセットデッキから取り出して仕舞った。これがあることは冴子は知らない。自分だけの秘密である。   
だがもし自分が心臓マヒとか交通事故とかで突然死するようなことがあったら、冴子に分かってしまう。ある時期には処分しなけれならないと思った。 

今の自分にとって、このテープは、わずかに残った男としての欲望を奮い立たせるための最高の催淫剤であるから放棄することは出来ない。せめ
て六十歳になるまでは持っていたい。だが、自分が六十歳になったとき、妻の冴子は四十九歳である。女の四六歳と言えば、一番脂ののった
頃である。その頃には、自分の欲望も失せて、初老の静謐な生活を望むようになっている筈だ。
惣太郎は、若い妻を娶った男が味わう悲哀と恐れを、いま確実に感じはじめていた。
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  1. 2014/12/03(水) 08:50:24|
  2. 花濫・夢想原人
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失業の弱みに付け込んで・栃木のおじさん (3)
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借金返済・借金夫 (5)
妻で清算・くず男 (5)
妻を売った男・隆弘 (4)
甦れ・赤子 (8)
1話完結■借金 (8)
■脅迫 (107)
夢想・むらさき (8)
見えない支配者・愚者 (19)
不倫していた人妻を奴隷に・単身赴任男 (17)
それでも貞操でありつづける妻・iss (8)
家庭訪問・公務員 (31)
脅迫された妻・正隆 (22)
1話完結■脅迫 (2)
■報復 (51)
復讐する妻・ライト (4)
強気な嫁が部長のイボチンで泡吹いた (4)
ハイト・アシュベリー・対 (10)
罪と罰・F.I (2)
浮気妻への制裁・亮介 (11)
一人病室にて・英明 (10)
復讐された妻・流浪人 (8)
1話完結■報復 (2)
■罠 (87)
ビックバンバン・ざじ (27)
夏の生贄・TELL ME (30)
贖罪・逆瀬川健一 (24)
若妻を罠に (2)
範子・夫 (4)
1話完結■罠 (0)
■レイプ (171)
輪姦される妻・なべしき (4)
月満ちて・hyde (21)
いまごろ、妻は・・・みなみのホタル (8)
嘱託輪姦・Hirosi (5)
私の日常・たかはる (21)
春雷・春幸 (4)
ある少年の一日・私の妻 (23)
告白・小林 守 (10)
牝は強い牡には抗えない。・山崎たかお (11)
堅物の妻が落とされていました・狂師 (9)
野外露出の代償・佐藤 (15)
妻が襲われて・・・ ・ダイヤ (6)
弘美・太郎棒 (11)
強奪された妻・坂井 (2)
痴漢に寝とられた彼女・りょう (16)
1話完結■レイプ (5)
■不倫・不貞・浮気 (788)
尻軽奈緒の話・ダイナ (3)
学生時代のスナック・見守る人 (2)
妻・美由紀・ベクちゃん (6)
押しに弱くて断れない性格の妻と巨根のAV男優・不詳 (8)
妻に貞操帯を着けられた日は・貞操帯夫 (17)
不貞の代償・信定 (77)
妻の浮気を容認?・橘 (18)
背信・流石川 (26)
鬼畜・純 (18)
鬼畜++・柏原 (65)
黒人に中出しされる妻・クロネコ (13)
最近嫁がエロくなったと思ったら (6)
妻の加奈が、出張中に他の男の恋人になった (5)
他の男性とセックスしてる妻 (3)
断れない性格の妻は結婚後も元カレに出されていた!・馬浪夫 (3)
ラブホのライター・され夫 (7)
理恵の浮気に興奮・ユージ (3)
どうしてくれよう・お馬鹿 (11)
器・Tear (14)
仲のよい妻が・・・まぬけな夫 (15)
真面目な妻が・ニシヤマ (7)
自業自得・勇輔 (6)
ブルマー姿の妻が (3)
売れない芸人と妻の結婚性活・ニチロー (25)
ココロ・黒熊 (15)
妻に射精をコントロールされて (3)
疑惑・again (5)
浮気から・アキラ (5)
夫の願い・願う夫 (6)
プライド・高田 (13)
信頼関係・あきお (19)
ココロとカラダ・あきら (39)
ガラム・異邦人 (33)
言い出せない私・・・「AF!」 (27)
再びの妻・WA (51)
股聞き・風 (13)
黒か白か…川越男 (37)
死の淵から・死神 (26)
強がり君・強がり君 (17)
夢うつつ・愚か者 (17)
離婚の間際にわたしは妻が他の男に抱かれているところを目撃しました・匿名 (4)
花濫・夢想原人 (47)
初めて見た浮気現場 (5)
敗北・マスカラス (4)
貞淑な妻・愛妻家 (6)
夫婦の絆・北斗七星 (6)
心の闇・北斗七星 (11)
1話完結■不倫・不貞・浮気 (18)
■寝取らせ (263)
揺れる胸・晦冥 (29)
妻がこうなるとは・妻の尻男 (7)
28歳巨乳妻×45歳他人棒・ ヒロ (11)
妻からのメール・あきら (6)
一夜で変貌した妻・田舎の狸 (39)
元カノ・らいと (21)
愛妻を試したら・星 (3)
嫁を会社の後輩に抱かせた・京子の夫 (5)
妻への夜這い依頼・則子の夫 (22)
寝取らせたのにM男になってしまった・M旦那 (15)
● 宵 待 妻・小野まさお (11)
妻の変貌・ごう (13)
妻をエロ上司のオモチャに・迷う夫 (8)
初めて・・・・体験。・GIG (24)
優しい妻 ・妄僧 (3)
妻の他人棒経験まで・きたむら (26)
淫乱妻サチ子・博 (12)
1話完結■寝取らせ (8)
■道明ワールド(権力と女そして人間模様) (423)
保健師先生(舟木と雅子) (22)
父への憧れ(舟木と真希) (15)
地獄の底から (32)
夫婦模様 (64)
こころ清き人・道明 (34)
知られたくない遊び (39)
春が来た・道明 (99)
胎動の夏・道明 (25)
それぞれの秋・道明 (25)
冬のお天道様・道明 (26)
灼熱の太陽・道明 (4)
落とし穴・道明 (38)
■未分類 (569)
タガが外れました・ひろし (13)
妻と鉢合わせ・まさる (8)
妻のヌードモデル体験・裕一 (46)
妻 結美子・まさひろ (5)
妻の黄金週間・夢魔 (23)
通勤快速・サラリーマン (11)
臭市・ミミズ (17)
野球妻・最後のバッター (14)
売られたビデオ・どる (7)
ああ、妻よ、愛しき妻よ・愛しき妻よ (7)
無防備な妻はみんなのオモチャ・のぶ (87)
契約会・麗 (38)
もうひとつの人生・kyo (17)
風・フェレット (35)
窓明かり ・BJ (14)
「妻の秘密」・街で偶然に・・・ (33)
鎖縛~さばく~・BJ (12)
幸せな結末・和君 (90)
妻を育てる・さとし (60)
輪・妄僧 (3)
名器・北斗七星 (14)
つまがり(妻借り)・北斗七星 (5)
京子の1日・北斗七星 (6)
1話完結■未分類 (1)
■寝取られ動画 (37)

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