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闇文庫

主に寝取られ物を集めた、個人文庫です。

序破急 - 序の1

柚布子は重盛に肩を抱かれていた。 重盛の吐息が右の頬に当たり迫ってっくるのを感じ取っていた。 重盛の唇は柚布子の唇を目指しているのは間違いない。 重盛に肩を抱かれているというか抑えられている状態では逃げ場はない。
「だめ」
柚布子はそう言っておもいきり顔を左に向けた。 重盛の唇は深追いはせずに柚布子の右耳へと転進して囁いた。
「どうして、いいだろう?」
重盛の吐息が柚布子の右耳にかかり首筋が熱く感じ易くなっていった。 その首筋に重盛は唇を着地させ軽く吸った。
「はぁっ」
微かに柚布子は声を洩らしてしまった。
「だめ、いけないわ」
柚布子の声には耳を貸さず重盛は唇を上下させ髪の香りとも肌の香りともつかね女の香りを吸い込んで「この女を絶対ものしてやる」と心で呟いた。

柚布子の肩に回した手を肩から脇へと下ろし、ブラウスの上からだが胸の隆起を掌に収めようとしていた。 柚布子は肘でそれを食い止めようとすると重盛の唇の進行を重盛の上体を押さえて防いでいた手を引かざるを得ない。 柚布子は唇の進行を食い止めることにした。
重盛は柚布子の左胸をまさに掌中に収めていた。
「お願い、やめて、だめっ」
柚布子は依然として拒否の意思表示をしている。
「どうして、もういいだろう?」
重盛は左の掌をゆっくり動かしはじめると同時に首筋を少し強く吸った。
「あ~、だめ、やめて、重盛さん」
柚布子の意思とは裏腹に重盛の左手の指は柚布子のブラウスの上からでも乳首が堅くなってきたのを検知し、人差し指と中指の間に挟んで揉みはじめていた。 もはや唇を奪うのは時間の問題と重盛は思った。

柚布子は重盛と会う時はビジネススーツが多いが、この日は重盛の会社ではないので普段会社に着ていくシフォンスカートを履いていた。 その薄手の生地は重盛の残った手の進入を容易に許してしまっていた。 柚布子は腿を固く閉ざしてはいるが奥に重盛の手が届くのは時間の問題である。 重盛は固く閉ざした腿に指を這わせて、奥にいくほどストッキング越に湿り気を感じ取っていた。

重盛の指が奥に到達して敏感な部分に触れたと同時に柚布子は公園のベンチから立ち上がった。


夕闇が臨海地区の公園をすっかり覆い、そこかしこのベンチにはカップルが腰を下ろし語らうもの、あるいは頭のシルエットが重なっているカップルも出始めていました。 それらのカップルの中に中務柚布子(31歳)と重盛浩太(34歳)の姿があった。 歳の頃も同じでどこにでもある仕事帰りのカプルに見えた。
そして、このカップルの為の公園に連れのない男が柚布子たちの方を歩道橋の階段の踊り場から凝視している。 中務英生(36歳)、柚布子の夫である。

英生からは二人はベンチに座って重盛が柚布子の肩を抱いて耳元で何か囁いているように見えた。 そして柚布子が立ち上がり、新交通システムの駅に向かって歩きだし、重盛もそれを追っていた。 英生も離れてその後を追った。 地下鉄に乗る時に柚布子と重盛はそれぞれの自宅方面の路線へと分かれて行った。 英生はそれを見届けるとどこか一杯ひっかける場所を探した。 柚布子には付き合いで飲んで帰ると電話をするつもりだった。 妻と重盛の光景をみて素面では妻の顔が見れないかも知れないと思ったからである。
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  1. 2014/10/31(金) 22:16:33|
  2. 序破急・中務
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序破急 - 序の2

柚布子はとある機器会社の営業支援課でいわゆる販売の為の機器の技術的なサポートと納品までの全てを行っている部署である。 その会社の営業は御用聞きみたいなもので契約書と請求書の処理だけしていれば給料が貰えるので、営業支援課が納品を仕切っていると言ってもいい。


もともと柚布子はその会社の子会社からの転属であった。 柚布子は理工系の大学を出ていることもあり、子会社ではファームウェアサポートを担当していた。 数年前の不況で子会社を整理することになったが、サポート部門は残さざるを得ないので柚布子は親会社に引き取られたのである。

夫の英生とは子会社時代の先輩、後輩の中である。 英生は開発部にいて日本独自仕様への変更を行っていた。従って、サポート部門は開発部門に技術的な問い合わせを頻繁に行うので親しくなり、付き合うようになって結婚した。 会社では旧姓で通すのが常識になっていて、給与明細等の人事労務関係以外は全て旧姓を使用していた。 親会社へ転属した時に夫の姓にしても良かったのだが、E-mail は親会社のドメインを使用していた為、そのまま旧姓を使う方が業務上都合が良かった。

一方、英生の開発部門は競合する会社に売却されてしまい、柚布子とは別の会社に勤めるしかなかった。 さらに競合会社と言っても受注残が柚布子の会社より多かったので子会社整理の風が吹くのが数年遅かっただけであった。
結局、また会社を変え今では派遣でとあるSI会社のデリバリー部門にエンジニアとして働いている。そのSI会社では以前の親会社、つまり柚布子の会社の製品も扱っているので英生にとってはうってつけであった。

英生が派遣されているSI会社担当の新しいアカウントマネジャーが柚布子であった。 柚布子と英生が夫婦であることを知るものはそこには居ない。


重盛浩太はSI会社の製品企画部の中核社員である。 取引先から製品を購入し、システムとして組み上げ販売している。 どこの会社も全面禁煙で、重盛の会社も地下駐車場の外れと屋上の緑地の陰が喫煙所となっていた。 雨が降らない限りは重盛は屋上の喫煙所を使用している。

「重盛さん、午後は臨海地区の展示場でのエキスポに行くんですよね?」
喫煙しながら部下から尋ねられた。
「ああ、行くよ」
「購買部の小宮山さんも昨日行って、取引先の生田さんとお茶デートしたらしいですよ」
「ああ、知ってる。」
「なんか、スカートも仕事で来る時と違って短めで、ブラウスも色っぽかったらしいですよ」
「あいつの大げさな表現だよ、そんなわけねぇ~だろ、バーカ。営業だよ、営業でお茶しただけに決まってんだろ」
「そっすか、重盛さん先越されましたね」
「バーカ、なにくだらねぇ~とこ行ってんだよ」
重盛と部下は煙草の火を消すと屋上から降りていった。 喫煙所は生垣で2つに区切られていて、もうひとつの喫煙所には英生が煙草を吸わずに生垣越に重盛の会話を聞いていた。 そして、妻の昨日の出掛ける時の服装を思い出していた。 取引先の生田とは柚布子の旧姓である。

柚布子の会社も展示会に製品を出品していて、期間中は柚布子も応援に行っているのである。
  1. 2014/10/31(金) 22:17:30|
  2. 序破急・中務
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序破急 - 序の3 兆候

英生はたいして酒を煽れずに一時間ほどで飲み屋を後にして自宅へ帰った。 自宅には当然、柚布子が先に帰宅している。
「あら、お帰りなさい、早かったのね」
いつもと変わらない妻の声がして英生はほっとした。
「あまり、盛り上がらなかったんですぐにお開きになったんだ」
「そうなの、でも飲んで来るって言ったから何も用意してないわよ」
「うん、いいんだ、ちゃんと食べてきたから」
「そう」
いつもの他愛のない会話である。

「ところで、展示会の方はどうなの?」
英生は展示会のことに話を振った。
「結構、来場者多くて混んでたケド、ほとんど冷やかしの客ばかり、不況だから」
「そ~なんだ」
「お得意先とかも来たんでしょ?」
「来たとは思うんだけど、バタバタして挨拶も出来てないわ」
柚布子は親会社に転属してから営業と一緒に出歩くようになっていたので営業トークが上手くなっていた。 自分でも夫の追及を流してしまったことに驚いていた。
「うちの、小宮山とか重盛も来たんじゃないの?」
「来場者記録まだ見てないからわからないけど、招待状出したから来てると思うわ」
「ふ~ん、そ~なんだ・・」
妻は明らかに嘘をついている。 隠すことでもないのに隠されて、 英生の胸の中を取り残された感の風がよぎった。 しかし、そこは夫婦、柚布子は風を読み取った。
「ねぇ、まだビール飲める? 私も飲みたいから」
「ああ、飲めるよ」
「何か作るね、その間にお風呂入っちゃって」

二人はソファーに並んで缶ビールを飲みながらテレビの映画を観ていた。 しかし、映画の中身はどうでもよかった。 夫に寄りかかる柚布子は今日の重盛とのことを思い出していた。 そして英生もまた、今日の公園での妻と重盛の様子を思い出していた。

英生は柚布子の左肩に手を回していた。 その手を脇の下へ伸ばし、胸へと運んだ。 そして、掌全体で胸を揉みはじめていた。 スウェットのトレーナーの上からでもブラジャーに包まれた乳首の勃起がはっきりと分かった。 英生は柚布子の右の耳たぶを甘噛みした後舌を耳の穴へと尖らせて入れた。
「あ、あ~」
重盛にされた時と同じような状況ではあるが、英生に身体を委ねていることだけは違っていた。 英生は首筋に舌を這わせ、時より強く接吻した。
「ん、うん、あん」
柚布子の艶かしい声が漏れはじめていた。 英生は胸を揉んでいた手をトレーナーの裾から中へ滑りこませると胸まで引き上げブラジャーを上にずらし、左の乳房を露にさせたかと思うとトレーナで再びその膨よかな胸を覆った。 そして、トレーナーの上から乳首を探し当てて指で弄んだ。 その行為が柚布子には重盛との行為を思い起こさせていた。
「あん、は~、んっ」
柚布子は一瞬、夫と重盛を頭の中で入れ替えていた。 そして公園では必死に防いでいた唇を自ら英生の唇を求めて、濃厚な接吻を始め、互いの舌を絡め合わせ吸い合った。 公園では堅く閉ざしていた腿も今は何とかして欲しいといった体で開いていた。 英生は勝って知ったる距離感で、舌を絡ませながらでもスカートを捲り下着の中に指を滑り込ませた。 そこはすっかり潤んでいた。
「あ、う、ううん」
柚布子の声は淫らさに変わっていった。

英生は右手で股間を弄りながら、トレーナーとブラジャーを片手で捲くりあげようとするが片手ではぎこちない。 柚布子は唇を離すと、自分でトレーナーとブラジャーを取り、英生の唇に再び吸い付いて舌を絡めてきた。 英生は暫くは柚布子のしたいように舌を絡めていたが、唇を離すと右の乳首に吸い付いて舌で乳首を愛撫した。 時には赤子のように吸い付き、時には軽く甘噛みした。 その度に柚布子は淫らなため息を洩らしていた。

英生は右手の掌に柚布子の愛液が流れるのを感じていた。 「今日は随分と早く濡れているな」と思った。 柚布子の脳にはサブリミナルのように重盛が浮かび上がっていたのを英生は知る由もない。
「むこう、行こうか」
英生が寝室の方を顎でしゃくると、柚布子は頷いて、ソファーから立ち上がってスカートを取るとパンティだけの姿になって寝室へと向かった。
  1. 2014/10/31(金) 22:18:30|
  2. 序破急・中務
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序破急 - 序の4 営み

柚布子は自分がいつもより濡れていることを自覚していた。 目を閉じて舌を絡めている時も瞼の内側には重盛の陰影が映っていた。 絡めていた舌は柚布子の舌を離れると柚布子の唇をなぞり始める。 その舌を柚布子の舌が追いかける。 何週か舌の追いかけっこ終わると、舌は顎から喉、胸へと尖らせてまま移動した。 口を塞がれていた柚布子は舌が移動すると、喘ぎ声を洩らし始めた。 「あ~、重盛さん」 思わず口から声が出てしまったと思い慌てて口を手で覆って目を開けると、夫の英生が左の乳首に取り付いて強く吸い上げていた。

英生はいつも柚布子にしているように右の乳房を揉みしだきながら、左の乳首を舌で愛撫していた。「いつもより、声出ているな」と思いながら妻の柚布子を見ると口を手で押さえながら喘いでいた。 そんな柚布子を見るのは結婚前に付き合い始めた頃以来だ。 そんな妻を英生は嫌いじゃないと思った。 英生は両方の乳首の愛撫を終わると、脇へと舌を進めた。 脇は柚布子の性感帯のひとつであることを夫婦になってから探し当てたのだ。 左の脇腹から脇の下へと舌を舐め上げるのと同時に右の脇は同様に掌で撫で上げるのである。 その動きに合わせるように柚布子は仰け反って背中を浮かせるのである。 反った胸は小ぶりの乳房ではあるが乳房の上にピンと乳首が立っている。 それを英生は片方を指で揉んで、もう一方を口に含んで甘噛みするのである。 そうすると柚布子は「あ、あ~ん」と淫らな声を上げるのである。

柚布子の脚は膝を立てたり伸ばしたり、開いたり閉じたりしてその付け根を何とかして欲しいと訴えていた。 英生の舌は臍から舌へと移動して柚布子の脚の付け根に到達するところである。 結婚前、柚布子は無駄毛の処理をしていた。 特に下のヘアーはパンティーからはみ出ないように剃っていた。 英生はその剃り痕に失望していたので結婚後は下のヘアーは剃らせなかった。 逆に脇の下はきっちり処理しているのを好んだ。 今、英生の舌はそのへアーを覆っている淡いブルーのビキニ・パンティーの淵をなぞっている。 僅かにパンティーからヘアーがはみ出している光景がたまらなくなく英生は好きなのである。 しかもクロッチ以外の生地は透けていてレース模様の間からヘアーが透けているのが英生にとってはなんとも言えないないのである。

英生も好きだが、柚布子もこの下着を勝負下着的にしているのを知っていた。 「これを付けて重盛と・・・」 そんな思いがふと英生の頭を過ぎった。 勿論、英生が入浴している間に柚布子が履き替えたものだ。
英生が下着の両方の腰辺りに手を入れるのと同時に柚布子が腰を浮かすと、英生は下着をお尻から脱がして膝まで下げると柚布子は両方の脚を器用に動かしながら脚から外した。 そして自ら脚を大きく開いてその間に英生を誘った。
逆三角形に見事に生えた茂みは陰核を覆い、大陰唇へと続いていた。 その大陰唇の茂みの間から小陰唇のピンクの襞が見えていた。 襞には既に薄っすらと愛液が光っていた。 英生は処理していない茂みに唇を細めて息を吹きかけると、茂みがそよいで陰核が顔を出す。 すると「あ、あっ」と柚布子は声を洩らした。

英生は人差し指と薬指で柚布子の大陰唇の茂みを上下に撫でてから小陰唇の内側へ指を移動させ、襞を開き中指を伸ばした。 充分濡れているとは言っても膣口はまだ狭い。 中指がやっと入るくらいに絞まっている。 英生は指を徐徐に奥に入れていく。 柚布子細かい喘ぎ声を連発させていた。
英生は柚布子の脚の間から一旦外に出ると右手の人差し指と中指を膣口からゆっくり挿し入れると同時に腹から上えとキスマークを付けるように接吻をしていき、三度柚布子と舌を絡めた。 英生の右手は膣襞のザラッとして部分を二本の指で激しく擦るのと同時に親指で陰核を押しつぶすように押さえた。
舌を絡めていた柚布子は快感に舌を絡めてはいられなくなり、口を英生をから逸らすと「あ、あ~、あ~ん」と叫んで、英生にしがみついた。 "プチ逝き"と英生は名付けていた。

夫婦の呼吸とは不思議なものである。 英生と柚布子はどちらに促されるということもなく上体を入れ替えた。 柚布子は軽く英生と舌を絡めると英生がしたことと同じように舌を英生の乳首まで運ぶと両方の乳首を舌で愛撫した。 女のように喘ぐことはないが気持ちいいと英生は思っていた。
柚布子は一気に下腹部へと舌を進め英生のトランクスを脱がした。 茂みを掻き分け英生の男根のカリから下を上下に扱いた。 柚布子の指が英生の男根を昆虫の足のような動きで絡むのを見ているのがとても好きであった。 ましてや柚布子は今年になってからネイルに凝っているから、その爪でカリを刺激されると英生は我慢汁を洩らしてしまうのである。 主婦でありながらネイルに凝るなんてろくに料理も出来ないに違いないと言う人もいるが、この光景を失うくらいなら料理なんて俺がやるとまで思っている。
 
柚布子は我慢汁を亀頭全体に塗りたくると男根を口に含んで吸いならが口でしごいた。 英生と結婚して二人でAVを見ながら会得したものである。 柚布子はそうすると英生が悦ぶことを知っていた。 しばらく英生の男根をしゃぶったり扱いたりして充分に男根が硬直しているのを確認すると柚布子は枕元に手を伸ばし、コンドームを手に取り袋を破ると中身を取り出し、男根に被せた。 この瞬間男子ならだれでもそうであるが、英生も少し醒めるのであるが、幸いにも柚布子のネイルの指がゴムを被せる仕草は卑猥だと感じて硬直を保っていられるのである。
  1. 2014/10/31(金) 22:19:16|
  2. 序破急・中務
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序破急 - 序の5 営み

柚布子はベッドに仰向けに寝ると、脚を開いて目を閉じた。 ベッドの揺れが開いた脚の間に誰かが進んでくるのを知らせている。 柚布子は「あ~ん」と淫らな吐息を漏らしてその者に全ての自由を捧げる合図を送っているように見えた。

英生は柚布子の股間に腰を進めると男根を片手で握りその男根で柚布子の小陰唇を僅かに割り上下させた。
「あ、あ~ん」
柚布子の声が漏れる。英夫には薄いゴムを隔てても充分濡れているのが分かった。 英夫は男根のカリで柚布子の陰核を擦った。
「あ、いや~」
柚布子は腰をくねらせて挿入を催促しているようだった。 英夫は亀頭を小陰唇を割って膣口に押し入れた。
「あ、あ~ん」
柚布子の声は更に淫らさを増してきた。 英夫は亀頭がすっぽり隠れるくらいのところで止めると、そこで小さいストロークで擦り始めた。
「あ、あ、うん」
柚布子は喘ぎながら上体を少し起して手を延ばして英夫の腰を掴みにきた。 それは焦らさないで一気に奥まで入れて欲しいという合図なのだ。 英夫はその手を取ると、互いの掌を合わせて指を交互に交差させるように手をつないで、腰をゆっくり押し進めた。
「あん、あ、あ~」
由布子は背中を浮かせるように仰け反って英夫の男根を膣全体で感じていた。 英夫は柚布子に覆いかぶさると激しく舌を絡めた。

英夫は柚布子の尻を少し持ち上げるようにしてさらに密着度を上げると、亀頭の先が子宮口へ触れた。 その瞬間、柚布子の腰が引けた。 「まだ、早かったか」英夫はそう思いゆっくり腰を動かし始めた。 子供を産んでいない柚布子の子宮口はそれほど開発されていなかった。 むやみに触ると快感より痛みを感じた。 挿入初期段階で、その痛みが子宮全体を支配する快感になるほど経験はなかった。 英夫も痛がるものを無理やり感化させることはしていなかった。 挿入を続けて柚布子が高まって、逝くようになると痛みが和らぐのであった。 この開発の遅れが、いつか夫婦の危機になるとは思ってもいなかった。 結婚して5年も経つのに自らの男根で子宮口の快感を憶えさせなかったのが英夫の最大の落ち度であった。

柚布子は膣の中に挿入されたものの律動に合わせて喘ぎ声を上げていた。 前戯の時は瞼の重盛に高まっていたが今は英夫を完全に重盛に置き換えて喘いでいた。
「あん、重盛さん」「あ、来て」「重盛さん」言葉では単一の言葉を発しているが脳ではそのように叫んでいた。 そうすることにより一層高まるのを既に前戯の時に知っていた。
柚布子は喘ぎの中で違う男と契っていた。 やがて、下腹部に麻痺するような熱さがやってくるのを感じていた。

英夫は柚布子を突きながら覆いかぶさり柚布子の表情を魅入っていた。 「こんなに艶っぽいのは初めてだ」そう思いながら、唇が喘ぎの合間に違う動きをしているのに気が付いた。
「シ」「ゲ」「モ」確かにそのように動いたと思った。 英夫の中にムラムラと嫉妬心が湧き、いつもより高まってきたのを感じて、息が荒くなった。

「柚布子は重盛に抱かれたのか、抱かれているのか」そう思うと喘いでいる柚布子が重盛に抱かれている柚布子に見えて来た。
「柚布子、あー」
英夫は膣を突きながら両手で胸を荒々しく揉みしだいた。
「あ、あーん」
重盛に胸を揉みしだかれた由布子は悲鳴を上げた。 と英夫は錯覚すると肛門から内股にかけて自立神経が高まってきているのを感じた。
「あ、あ、柚布子、逝く」
「う~ん、いくぅ、逝って~」
同じ幅のストロークなのに時たま子宮口に当たるようになり、その瞬間柚布子が眉をしかめた。 英夫は子宮が下がって来たのを感じていた。
「柚布子、あっ、あっ」
「あ、あ~ん、あなた~」
柚布子は背中を浮かせ仰け反り、膣の中で英夫の男根が脈打つように動いているのを感じていた。 背中をベッドに落とすと呼吸の度に胸が上下し生き物のように乳房が揺れていた。 その乳房を英夫は揉み両方の乳首を交互に吸った。 そしてそのまま柚布子の上に覆いかぶさった。 すると柚布子は英夫の背中に腕を回し、互いに余韻を楽しむように暫く動かなかった。
  1. 2014/10/31(金) 22:20:36|
  2. 序破急・中務
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序破急 - 序の6 奸風

「ねぇ、ねぇってば、もう」
柚布子は英生の背中に回していた腕を胸板に当てて押しのけようとしていた。
「漏れちゃうってば」
英生は柚布子からティッシュボックスを受け取ると促されて柚布子の身体から離れた。 離れる時にティッスボックスからティッシュを2、3枚取り出し由布子の股間に当てた。 柚布子の膣から萎縮した男根が避妊具とは別に引き抜かれた。 英生は避妊具から精液が漏れないようにティッシュで押さえて避妊具を処理した。 そしてティッシュを更に2,3枚取ると柚布子の性器を綺麗に拭き取った。
いつもの夫婦の営みであった。

英生が避妊具の始末をしてベッドに戻り、横になるのと同時に柚布子が英生の腕を取って腕枕にした。 普段ならここで毛布を掛けて寝てしまうのであるが、この日はまだ興奮していた。

「今日、よかったわ」
「おまえも、いつもより燃えてたじゃないか」
英生は腕枕にされている腕の上腕をまげ、柚布子の髪を撫ではじめた。 そして疑問をぶつけたくなった。
「女って、あの最中に違う男のこと考えるって言うけど、ほんと?」
「男の人って、自分の妻が他人に犯されてるところを見たがるってほんと?」
柚布子は負けず嫌いではないが、営業と一緒に得意先を廻るうちに、相手の言うことに対抗する癖が付きはじめていた。 図星だったのでそれを隠す為に対抗することを言ったのであった。 それは会社の化粧室で既婚女性社員達が話していた井戸端話を聞いていたからであった。 柚布子は言ってしまった後に、言った自分に驚いていた。

「・・・・」
「ねぇ、そうなの?」
最近の夫婦の会話では立場が逆転することがよくある。 それは英生がリストラされてから顕著になってきていた。 年収こそまだ英生が上ではあるが正社員と派遣社員の格の違いを知っている二人であるからこそであろう。

「・・・・」
「そ~なんだ」
英生の腕に抱かれながら柚布子は上目使いで英生の表情を見た。 英生は天井を見つめながら髪を撫でていた指を耳たぶに持っていき暫く弄った後に中指を柚布子の耳の穴の周りをなぞったり少し突いたりし始めた。 これは英生のやりたいといういつもの合図であった。 柚布子は英生の男根に手を伸ばすとカリの辺りを握った。 すると掌の中で握ったものが膨張するのを感じていた。

「ごめんなさい」
柚布子は少し責めすぎたと思った。 確かに英生の問いに対する柚布子の反撃は飛躍し過ぎていた。

「何が?」
「少し言い過ぎたわ」
「うん? うん」
「ごめんなさい」
「いいよ、もう」
「うん、でも、女ってそういうこともあるかも」
「・・・・」
「一般的に、ね?」
「そっかぁ~ で、柚布子もさっき?」
「・・・」
英生は柚布子の耳の穴を小指で弄り始めると同時に、もう片方の手で乳首を弄りはじめていた。
「誰のこと考えて? 重盛か?」

柚布子は軽く頷いた、その瞬間に弄っていた乳首が急に硬くなったのを英生は感じていた。 英生は乳首だけではなく乳房全体も揉み始めていた。

「なぜ? 何かあったのか? もしや」
柚布子は大きく首を振った。 そして、公園であったことを英生に告白したのであった。
「キスされたのか?」
柚布子は首を振った。 英生は柚布子にキスをした。 初めて柚布子とした時のような唇を重ねて吸うだけのキスをした。 すると柚布子が堪らず舌を入れて来た。 直ぐに英生は唇を離した。
「重盛とキスする時は柚布子から舌いれるんだ」
「意地悪・・・」
柚布子は英生の舌を求め絡めてきた。

「胸は? 触られたの? 乳首も?」
柚布子は小さく頷いた。
「でも、服の上からよ」
柚布子は赦しを請うような甘えた声で弁解した。
「服の上からでも、重盛にここを固くされたんだな?」
柚布子は頷くしかなかった。 その瞬間、柚布子の掌の男根がピクリと動きさらに膨張しようとしていた。

キスはされていなかった。 仮定の話で柚布子が舌を入れたかも知れないという英生の妄想だが乳首はちがう。 たとえ、服の上からだとしてもやられたという思いが募った。

「おまえ、こんな風にされて、固くなったのか?」
英生は乳首を強く摘んだ。
「あん、あなた~、いたい」
柚布子は英生の行動に少しばかり動揺した。 英生が乳首を強く抓ったことなどなかったからである。 柚布子は強く首を振った。

英生は手を胸から股間へと移動させた。 もう片方の手は柚布子が逃げないように肩をしっかり抱いていた。 柚布子は動けなかった。 そして英生が柚布子の性器を指でなぞり始めた。
「ここも、こうされたんだろ?」
「・・・」
柚布子に邪(ヨコシマ)な風が吹いた。 夫を煽ってみようと・・・ 重盛がスカートの中に手を入れ奥に進めた時に柚布子は大事な部分を触られないようにベンチから立ち上がったのだが、英生の問いには静かに頷いた。 柚布子の勘では柚布子の返答次第で英生の男根がピクリと動くはずであった。 英生は更に強く小陰唇をなぞった。
「こんな風にされたんだろ?」
「う、うん、でも下着の上からだから・・」
「本当にそうなのか? 正直に言っていいだよ、柚布子のせいじゃないんだから」
「御免なさい・・・ 下着の中まで・・・ 手が・・・」
「こんな風にだろう!!」
英生は中指を膣口に差し込んだ。
「ああ~ん」
柚布子は淫らな叫び声を上げた。 果たして、英生の男根は大きく動いた。
「あなた、ごめんなさい、それ以上のことされてないから・・・」
「濡れたのか?」
「・・・・・」

柚布子は身体を起こすと、英生の男根を咥えさらに固くし、枕元の避妊具を被せた。 そして、英生に跨り英生の男根を膣口にあてがい、ゆっくり腰を沈めた。
「あ、ゆうこ・・・」
「あん、あなた~」
柚布子は英生に覆いかぶさり舌を絡めた。 そして互いに吸い合った。

無理やり上になるように言わなければ乗らない内向的な妻が、自ら上になって男根に腰を沈め、更に腰を自ら上下させるとは。 英生の中にも邪な風が吹いた。

「ゆうこ、ほんとうはこんな風にされたかったんだろ?」
上になった柚布子の胸を両手で胸を激しく揉んだ。
「あ、あなた~」
柚布子は首を横に振った。
「ゆうこ、こんな風にされて乳首立って感じたんだろ?」
「あ、いや~ん」
英生も腰を使い始めていた。

「ほら、重盛に揉まれて感じたんだろ?」
「いやん、ちがう~」
喘ぎながらでも柚布子は応えていた。

「重盛の手が揉んでるぞ・・・・」
「だめ~、あなた、そんな」
「重盛に揉まれたいんだろう? こんな風に・・」
「あ、あ、だめ~ 感じちゃう~」
「重盛に揉まれてみろ、揉まれて感じろ、揉まれて来い」
矢継ぎ早に英生は叫ぶと、由布子と身体を入れ替えた。 その時に英生の男根は一旦柚布子から離れた。

柚布子の息が既に荒い。 英生は柚布子の脚を広げ性器をむき出しにさせ、腰を進めた。 そして男根で小陰唇を愛撫しながら;
「こんな風に、されたんだろ?」
「ちがうわ」
「指じゃなくて、重盛のチンポで」
「いじわる、お願い・・・」
「お願い、なんだ?」
「はやくぅ~」
英生は膣口に男根をあてがい、動かない。 柚布子の腰がそれを迎えいれようとするのを、英生は腰を引いたり進めたりして焦らしていた。

「早く、何? ちゃんと言ってごらん」
英生も柚布子も新婚早々、同じようなことをしていたと思い出した。 但し、その時は「英生のチンポ」と言わされていた。 今回は違う。 柚布子も感じていた。 英生が何を言わせたいのか。

「し、しげ」
「言ってごらん、言っていいんだよ」
言わなければ先に進まないのを柚布子は知っていた。ベタな責め方だと互いに思ってはいるが、「バッカじゃないの」と言ってしらけさせる仲でもない。 柚布子は覚悟を決めた。
「重盛さんのチンポ」
「ちゃんと、言って!!」

「重盛さんのチンポ入れて~」
「重盛に犯されたいんだな? よ~し」
英生は腰を進めた。柚布子は歓喜の声をあげ、英生の腰の動きに合わせて喘ぎ始めた。

「あ、ゆう、こ、あ~、重盛のチンポ入れられてみろ・・・重盛のチンポで感じろ・・・」
英生は腰を動かしながら、震える声でそう呟いていた。
「あ、あ~、ゆうこ、逝く」
「あなた、私も、逝くぅ~」
「あ、ゆ~こ~、あっ、あ~」
英生は腰を強く押し付け精液を搾り出した。 そして、柚布子の膣から男根を引き抜いた。 膣口から離れる瞬間、男根は興奮状態にまだあったので小陰唇から陰核をなぞることになった、 その時柚布子小さな声を上げた。
英生は急いで避妊具を外し、ティッシュで拭くと柚布子の膣に再び挿入した。

「あなた、だめぇ~」
柚布子は叫んで、腰を引こうとした。 だが、英生は腰をしっかり押さえていた。
「大丈夫、もう出ないから」
英生は興奮から醒めない男根を通して柚布子の膣の肉襞もまだ興奮しているのを感じ取っていた。 だが、それは急激に鈍くなった。 萎縮してきたのだ。

柚布子の膣はここ半年精液を浴びていない。 夫がリストラされてから、将来の不安が先行し、子作りする気になれないのであった。 柚布子が棚ぼたとはいえ、アカウントマネジャーになって仕事が充実してきたせいもある。 だからと言って避妊しなくてもいい日もあったが、避妊具を付けるのが習慣になっていた。

英生は柚布子から離れると、ティッシュで柚布子の性器を綺麗にして電気を消して毛布を二人に掛けた。 柚布子は英生の腕枕で眠りに就いた。
「今度、何時、重盛にオマンコ触らせるの?」
柚布子は眠りに落ちながら「まだ、プレイしてる・・・」と思いながら
「明々後日・・・」
柚布子は深い眠りに落ちて行った。 英生も柚布子のおでこにキスをして眠りに就いた。


翌朝、二人は一緒に駅へ向かう道を歩いていた。 英生が派遣で働くようになってから通勤時間が異なる為、英生が先にゴミ出しをして出て行くのが日課だった。
この朝、柚布子は英生からごみ袋を取るとマンションのゴミ捨て場に置き、英生の腕を掴んで歩き始めた。

英生は新婚時代を思い出していた。 昨晩のことが二人を活性化させたのであった。
  1. 2014/11/01(土) 08:46:58|
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序破急 - 序の7 そもそもの始まり

『前回までのあらすじ;
中務英生(36)、柚布子(31)夫婦は機器関連会社で社内結婚し共働きをしていたが、夫はリストラされ、とあるSI会社へ派遣でエンジニアとして働いている。 一方、妻はリストラを逃れ親会社の営業支援課に転籍した。 柚布子はアカウントマネジャーに昇格し、偶然にも夫が派遣されている会社の担当となった。 SI会社の製品企画部の重盛浩太(34)が窓口となることが多く、次第に柚布子と親しくなっていく。 それをネタに夫婦の営みは活性化したのだが・・・・』

その前段のエピソード(まだ序の段)

「だから、お前はあのときそう言ったろう!!」
「・・・・」
「寝ぼけたこと言ってんじゃないよ!! 貴様、何様だ!!」
「・・・・」
「仕事はちゃんと、やれ!! 子供の使いじゃないだろう!!」
「だから、それは前からダメだと言ってるだろ!! いい加減」にしろ!!」

末永は憂鬱な気分で打ち合わせ台で他の出入り業者が怒鳴られているのを聞いていた。 約二ヶ月前には更にひどい罵声を末永は満座の前で浴びせられていた。
ここは、とあるSI会社の製品企画部の席のある大きな事務室で、他の部門もその様子を見てないフリして聞いている。

机を叩いて怒鳴っていたのは執行取締役製品企画部部長の山田である。 山田は悪い人間ではない。 中堅社員になって怒鳴る役を押し付けられて今に至っている。 普通なら分の悪い役を押し付けられた者はいつの間にか主流から外されていくものだが、運良く山田は残っていた。 それに権限が付いてくるとただの怒鳴り役ではなくなってくる。

山田は出入りの業者を退散させると末永の方をチラッと見た。 そして、自席に戻ると
「エミちゃん、応接どこ?」
「第2応接ですけど」
事務員の橋爪恵美は答えた。
「じゃあ、購買のコミィーにテレしちゃって、応接入るって」

「お~い、こ~た、行くぞ」
山田は重盛浩太に声を掛けると事務室を出て応接に向かった。 重盛は末永と磯貝を手で案内するよに促して山田の後を追った。

今日は手打ち式の日であった。
末永はある機器会社の営業部長、磯貝は営業部員である。 ある機器会社とは中務柚布子の勤める会社である。 この日は二ヶ月前に柚布子の前任のマネジャーがミスをし、柚布子の会社は出入り禁止になっていた。 出入り禁止になったのは勿論山田の一言であった。 今のご時世に出入り禁止などあるのかと言えば、この会社にも無いのである。 たまたま柚布子の会社に発注する案件が無いので製品企画部に出入りが無いだけで会社として出入り禁止にしているわけではない。

ミスをして迷惑を掛けた都合上、禊として出入り禁止という用語を利用しているだけである。 ここに来て柚布子の会社に発注する案件が出て来てしまった為、山田の上げた手を下ろす儀式にすぎないのであった。

応接室の前に来ると、山田は既に入っており、重盛が応接の中を覗いて末永達に外で待つように伝えた。 ほどなく購買部のコミィーこと小宮山がやってくると、重盛は応接に入っていった。
今日の手打ち式は購買部の小宮山の仕切りであった。

末永と磯貝は小宮山の案内で応接室に通された。
冒頭、末永の前回のミスの謝罪と重盛のその後の対応で大変だった事などの話になり、更に謝罪の言葉を末永は並べることしか出来なかった。

山田はまだ一言も発していない。
小宮山は流れを変えるべく、自分の課の女性が来週から産休に入る話題をした。 彼女の夫は山田の部に在籍している。言わずと知れた社内結婚であった。 すると山田が口を開いた。
「女はさ~、いきなり、ぷぅ~ってお腹膨らんじゃうから戦力として計算出来ないんだよなぁ」
更に山田は続けた。
「社内調達なら確実に自然減1だからな」
末永は他人事だが冷や汗が出てきた。
 
山田が口を開いたとこで、小宮山が次の案件は末永の会社に発注することの了承を山田に求めた。
「あの、ぼんくらマネジャーはもう顔出さないだろうな」
山田が少しキツイ口調で言った。

「はい、もう顔を出させませんので・・・」
「で、今度は誰がなるんだい。 他に居ないだろ、まともなのは・・・」
末永の答えに間を置かずに言い放つ山田。

「○○○システム担当でアシスタントマネジャーをしていて評判のよい者を今度・・・」
○○○システムと聞いて山田は身を乗り出した。 それは山田達にとってはライバルに当る同業者の会社であるからだ。 そこで評判の良かったアシスタントと言ってもマネジャーを引き抜くのだから悪い話ではない。

同業者の名を聞くと外注苛めを簡単に止める山田ではない。
「評判がいいのは腕じゃなくて女だからじゃねぇ~のか?」
「・・・・」
末永は直ぐには言葉を返せなかった。 山田もまた否定されると思ったが当ってしまって驚いていた。

「おんな、かよ~。 まさか結婚してるんじゃ・・・」
山田はさらに続けた。
「おまえ、独身ならうちの社員の嫁になれるけど、結婚してるんじゃ、直ぐに腹ふくらんじゃうぞ?」

「こ~た、お前も独身だから、そのマネジャー嫁にもらってやれ」
これがセクハラ、パワハラになるかは分からないが山田特有の外注苛めである。

「ぶ、部長、そんなまだなんにも聞いていないじゃないですかぁ」
重盛が諌めるように言った。
「ま、そうだ。 で、歳は?」
「30ちょっと過ぎです。 独身男性以上に良く働く女性です。」
ようやく末永は発言することが出来た。

「で、独身か」
山田の質問に間髪置かずに答えなければならないと末永は思った。 口には出さずに頷いた。 これがこの物語のはじまりである。
磯貝は下を向いたまま、また仕出かして出入り禁止になるなと確信した。

「よかったなぁ~、こ~た。嫁が出来るぞ」
山田は高笑いをしていた。 末永は本人がスケジュールの都合で居なかったことに救われた。

小宮山は山田の上げた手が降りたと判断し、この場を締めることにした。
「それでは、このへんで、続きは弥勒亭で7時から。 その時には新任さんも来られるのですよね?」
「はい、来させます。」
弥勒亭とは山田が良く利用する店でそこで本当の手打ち式の接待が行われるのである。
  1. 2014/11/01(土) 08:48:47|
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序破急 - 序の8 生贄の朝

英生が台所のゴミ袋を持って玄関に向かおうとすると寝室の柚布子の姿が見えた。 白の上下の下着姿のまま箪笥の扉を開いて悩んでいた。
「どうした?」
英生が廊下から声を掛けた。

「今日、貴方のところの手打ち式でしょう? 何着ていこうかな?って」
柚布子は何着か出してはまた戻した。
「初めてでしょう? あんまり大人しいのでもどうかな?って。 それに、その前に○○○システムの打ち合わせも残っているから・・・・ どうしようかな?」

「手打ち式は何時?」
英生が聞いた。 相手の山田部長や担当の重盛についてはどういう感じの人かを妻に伝えていたが、英生は手打ち式の詳しいことをそういえば聞いていなかった。
「3時にアポ取ってあるらしいんだけど、その時間は○○○システムにまだ居るから私は行けないの。 夜の7時から弥勒亭っていうところ、そっちには顔を出すわ。 だから夕飯チンして食べてね。」
「うん、分かった。 手打ち式の方が大事だから、そっちに合わせなよ」
「そーねぇ・・・」

英生は廊下にゴミ袋を置くと寝室に入り箪笥の中から一着のスーツを取り出した。
それは英生のお気に入りの濃いグレーの下地にペンシルストライプの縞柄のスーツである。 スカートはミニではないが座った時には腿がかなり見える。 更にスリットとまでとは行かないが両方の腿にあたる部分に切れ込みがあるものだった。 スカートの切れ込みを除けばごく普通のビジネススーツである。

英生は格好いい妻を自慢したかった。 派遣社員として見下げられているが、こんな格好いい妻がいるんだと。
「ちょっと、派手じゃない?」
「夜の店は暗いから、こういうのが丁度いいかも」
「そっか・・・」

「下着も合わせたら?」
「これで、大丈夫よ」
「あれがいいよぉ」
英生はまたお気に入りの下着を指定した。 それは白を基調とした上下で、パンティーはビキニで灰色の柄が側面にあり、正面はやや透けてる感じで黒のレース調の縁取りのあるものであった。 履いたなら、濃い柚布子のヘアーが薄っすら透けて更にはみ出しそうである。 ブラも同じ柄でカップは浅めで何故か乳首がある辺りには柄が無いのである。
「貴方、こういうの好きねぇ、人が見たら何て言うかしら」
「下着は見える訳じゃないから、楽しもうよ・・」
英生の密かな楽しみであった。 手打ち式の接待をしている妻の下着を知っているのは英生だけである。 その優越感を英生は味わいたかった。

今日は夫の派遣されている職場に行くのだから夫のいうことに柚布子は従うことにした。
下着を着替える為に柚布子が全裸になると、英生は急にドキドキした。
柚布子が手打ち式の生贄に捧げられるような錯覚を覚えた。

手打ち式、それは手締めのことでシャンシャンシャンと手を打って終りにすることである。 つまり、過去のミスは過去のこととして互いに先に進みましょうといい意味のはずである。 もともとは歌舞伎や相撲等の伝統芸能で使われていた言葉だが、暴力団同士の抗争を収めるのにやはり手打ち式があり、儀式がある。
手打ち式→やくざ→儀式→生贄 悲観的な連想となったのであろう。 当然酒の席だから柚布子の会社のミスの話や柚布子自身も酒の肴になるかも知れない。


英生は柚布子に歩み寄ると、胸と股間に手を伸ばし両方同時に弄った。
「あなた、夕べしたでしょ? だめよ」
「多少、セクハラがあるかも知れない」
英生は不安を口にした。 柚布子はだまって弄られていた。
「そんなことする人達じゃないって、言ってたでしょ?」
「ああ」
「じゃ、どうして?」
「分からない」
英生は本当に分からなくなった。
「だいじょうぶヨ、私一人じゃないんだから」
「そうだよな・・・」
乳首が硬くなっていたが英生は妻から離れた。
「もう、アナタったら」
柚布子は下着を付け始めた。


英生は廊下に戻るとゴミ袋を持って、柚布子が服を着ていくのを眺めていた。 ブラウスを着てスカートを履いてホックを留めて回して整えると妻の綺麗な姿に満足していた。 そして「気をつけて、行って来る」と声を掛けて出掛けていった。

英生はこの日柚布子が帰るまで、もんもんと仕事も手に付かなかった。
  1. 2014/11/01(土) 08:49:56|
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序破急 - 序の9 夫の知らない妻

柚布子は社内の仕事を淡々とこなしていた。 と、言っても相変わらずメールの整理が殆どであった。 この日も制限ぎりぎりの容量のファイル付きメールのおかげでメールボックスはパンク寸前の為、必死にフィルを整理するだけで肝心のメールの内容は読めていなかった。

そんな中、○○○システムから柚布子に電話があった。
「はい、生田でございます。」
「あ、居たー、くぜ(久世)で~す。 ゆ~こぉー、アンタさぁ~、なかなか電話よこさないね。」
「申し訳ありません、久世様。」
「久世様なんて、よそよそしいなぁ、メール見てないの? やっぱ外れるんだ・・」
「いえ、その、一応会社の電話なので、対応は・・・」
柚布子は声を落として答えるのと同時に急いで久世からのメールを探した。

『Hi, Yuko

久世です。

さっき、アンタんとこの課長さんが来て、オマエさんが2ヶ月ほど外れるって言いに来たよ。
マジ?

一昨日の夜、何も言ってなかったよな?

それから、その時紹介した業者、どう?

メール見たら電話よこせよ。』
昨夜久世から送られて来たメール。 会社間のやり取りとは思えない口語調のメールが久世の特徴であった。 柚布子は課長がわざわざ言いに行くとは思っていなかったのでSI会社の担当になったことを話していなかった。 他の会社のことでもあるし、柚布子としても引き続き久世の会社も担当する予定でいた。 柚布子は少し焦った。

「す、すいません、話が急でまだ確定していなかったものですから」
「へぇ~、課長はもう前から決まっていたような口ぶりだったけど?」
「い、いえ、上では決まっていたようですが、正式に決まってはいなかったようなので・・」
「なんだよ、急に丁寧な話方だな。 本当かよ?」
「だから、他の会社の人にも聞こえるから・・」
柚布子はまた声を落として答えた。

「とにかくさぁ、今日、午後来るんだろ?」
「はい、2時半に遊佐様と打ち合わせがありますので」
「あ、遊佐さんね。 そっちはさ、おっさんに任せておけばちゃんよやってくれるから、4、5分も打ち合わせればいいから、ちゃちゃっと済ませて、こっち来てよ」
「はぁ?」

柚布子は久世からのメールをプレビューウィンドウで読んでいた。 スクロールバーで隠れていた所を表示させた。
『それから、明日4時半にキッティングセンターで話あるから

その後、軽く行くか?

今度はもっと格好いい他の業者紹介しようか?

じゃ、

以上、宜しくお願い致します。

○○○システム株式会社
久世 昌哉』
「今夜はちょっと、用事が入っているので・・」
「なんだ、来ないんだ」
「いえ、キッティングセンターには伺います。」
「なんだよ、折角イケメン呼んであげるのに・・・ 一昨日のもイケメンだったろ?」
「・・・・」
「じゃ、4時な、一昨日の結果も聞くからな」
電話は一方的に切れた。
  1. 2014/11/01(土) 08:51:02|
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序破急 - 序の10 夫の知らない妻(2)

都会の風景が一望できる高層ビルの36階。 ○○○システムのオフィスの打ち合わせ室。 扉までがガラス張りで床上約1メートルまでが透明で上は曇りガラス。 同じような大小の部屋が並んでいる。 窓は床から天上までガラスで都会を見下ろす。 柚布子はこういう光景に憧れていた。 一度、夕方まで打ち合わせになった時の景色は見応えのあるものだった。 遠くで花火大会がある時は予約禁止で抽選で各セクションに割り当てられ、普段禁止されているアルコールが許されるらしい。 流石に外資系と柚布子は憧れた。

英生もこの会社へ派遣される引き合いがあったが、英生は断った。 この会社は外資系なので派遣や契約社員が多く、その中から正社員になる人も多かった。 英生は外資系が好きになれなかった。 柚布子は、もし英生がこの会社に派遣されていれば、今頃正社員になって、以前のように夫婦で同じプロジェクトで働いたかも知れないと、ここに来る度に思っていた。

午後3時。 打ち合わせ室で柚布子は遊佐と打ち合わせをしていた。 機器の仕様に関することなので、間違いのないように柚布子は注意深く聞いていたが、遊佐は急いでいた。 何度も柚布子は遊佐の説明を止めた。
柚布子は遊佐がこんなに早く説明するのを始めて見た。 柚布子は遊佐が50歳近いと聞いていた。 正社員ではなくプロジェクトマネジャー専門の契約社員らしい。 今では久世の右腕とも、鞄持ちとも言われている。 久世の言うことに決してノーとは言わないという噂である。 久世とのコンビは遊佐が就いていた正社員のマネジャーが退職した際に辞めるところを久世が拾ったことから始まったらしい。

遊佐は久世とは正反対で無駄口や冗談は一切言わず、必要なことのみ事務的に進めて行く人に柚布子には見えた。 たまに柚布子に仕事上で役に立つことを優しく教えてくれるので柚布子は好感を持っていた。
その遊佐が急いでいた。 柚布子が堪らず聞いた。
「何か私に落ち度がありましたでしょうか?」
「いいえ、全くありません。 時間がないもので、すいません。」
「時間ですか?」
「4時にキッティングセンターですよね? もう出ないと間に合わないですよ。」
遊佐は胃が痛そうに顔を顰めて答えた。

メールでは4時半となっていたが、電話で4時と言われていたのを遊佐は知っているのだ。 流石に久世の右腕と呼ばれる男と柚布子は思った。
「遅れて、代わりに何捻じ込まれるか分かりませんよ。」
と、遊佐は心配そうに続けた。 柚布子も遊佐の言うことを理解出来た。 久世は小さいミスをさせてそれより大きなものを得るようなことを取引先としているのを知っていて、営業的な損害はないが、柚布子もその洗礼を受けたことがあったからだ。

遊佐はキッティングセンターへ向かう由布子を悲しい眼差しで見送った。 時計を見て4時には間に合わないと思った。


キッティングセンター。 それは港の近くの倉庫街にある。 主に輸入したパーツや製品を一つのキットにして梱包し直して国内のユーザーに送る準備をする場所である。 最近ではシステムが小型になり、ユーザーのところで組み立てて試験することが多くなったのでキッティングセンターは消耗品やパーツの倉庫になっていることが多い。 従って常駐している社員は殆どいないが、そこは外資系、設備は本社並みである。

柚布子の会社の製品はここには置いていないので、プロジェクト上の話ではないことで呼び出されているのを柚布子は分かっていた。 久世の暇潰しに付き合うのだ。 だから、遊佐との打ち合わせの時間をそれほど気にはしていなかった。

そもそも、こうなったのは久世が柚布子に他社の扱っている製品のことを調べさせたが調べられなかった。 調査を請けてしまったことを責められ、ここに置いてあるその製品を直に調べさせたのである。 その調査自体もどうでもよくて、結局このキッティングセンターに柚布子をよこさせる口実であった。 そうでもなければ柚布子がここに来る理由などなかったのである。

久世昌哉 35歳、既婚。 柚布子がこのキッティングセンターで久世の暇潰しに付き合うようになって柚布子と同じ大学、同じ学部の出身であることが分かった。 だが、柚布子が入学した時久世は4回生だったので面識は無かった。

どんな社会でも、共通項が見つかると急に距離が縮まったりするものである。 特に出身学校だったり、同郷だったり、二人だけの共通項だと尚更である。
柚布子は社会人になって大学の同窓生に会うことなどなかった。 就職した時も柚布子の部門には歳の離れた先輩ばかりで唯一歳が近いのが夫の英生だった。 つまり、柚布子は社会に出てから友達感覚で話す異性がいなかったのである。 同窓で歳も近くタメ口で話す久世は柚布子にとっては親しみのある異性になったのは偶然だろうか・・・ そして、外資系が嫌いな英生には久世のことを話すことはなかった。
  1. 2014/11/01(土) 08:52:09|
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序破急 - 序の11 夫の知らない妻(3)

柚布子がキッティングセンターに着いたのは4時20分だった。 タクシーの運転手が留めた位置が悪くドアを開けると駐車している車に当たりそうだったので位置を直して柚布子はタクシーを降りた。

入館受付には既に久世がゲスト用のIDカードを持って待っていた。
「おせ~よ、ゆーこ」
久世はIDカードで柚布子の頭を小突くとIDカードを柚布子の首に掛けた。
「遅れてごめんなさい、まぁ君」

柚布子は久世の会社からそう遠くないダイニングバーに久世から何度も誘われた。 「軽く行くか?」と言えば、そのダイニングバーのことであった。 久世の会社からの帰りだけでなく、自社に居る時も誘われた。
その店が帰宅経路の途中にもなっており、久世も既婚であることから、そこに居る時間は1時間以内と正確だった。 1時間だからこそ、話しの内容はストレートで濃厚なもので、柚布子はそれを楽しんでいた。 ドリンクもカクテル1杯か2杯でつまみはナッツ程度なので、帰宅しても十分食事が準備出来て英生と一緒に摂ることが出来たのである。
久世のことを「まぁ君」と呼ぶことを許されたのはそこでの成り行きだった。 勿論、それは社外でのことに限定されてのことだが、周りに人が居ないと自然とそう呼ぶように柚布子はなっていた。

「まぁ君じゃねぇ~だろ」
久世は持っていた書類で柚布子の頭を小突いた。
「痛っ」
柚布子は思わず声を出した。 久世の表情がいつもと違っていたのを柚布子はこの時気が付いた。

「こっち、早く」
久世は柚布子を早足で導いた。
「ねぇ、どうしたの、何なの?」

久世はとあるパーティションの扉を開いて中に入り、柚布子を手招きで中へ導いた。
「え~、うそ~、まぁ~くん」
「だから、まぁ~君じゃねぇ~だろう・・・」
久世はそこに置かれている機械の操作盤の電源釦を押した。

操作盤の幾つかの LED が点滅し、やがて中央の液晶パネルに表示が浮かび上がって来た。
「すご~い、これエフエックス(FX)ね!!」
柚布子は感激の声を上げた。
「どう?」
久世が自慢気に聞いた。
「凄いわ、もう日本に来ているなんて。 FXだって言ってくれれば良かったのに。」
「ば~か、誰が輸入してると思ってるんだ。 オマエに見せてることがバレたら大事だぞ。」
久世は声を落として答えた。
「通関手続きが遅れたからこうやって見れるんだ、そうでなければ昨日に船積みされていたんだ。」
久世は経緯を説明した。

この機械は柚布子の会社には太刀打ち出来ない○○○通商が輸入したものだった。 そして相手が弱小会社でも商売敵に納入前の中身を見せるのは掟破り、紳士協定違反である。
久世はポケットから白い綿の手袋を出して柚布子に渡した。

柚布子は手袋をすると操作盤の前に立って、液晶画面をみながらパネルを操作し始めた。 画面が変わる度に柚布子は感激の声を上げた。 5分位操作しただろうか、実際に機械を動かすことは出来ないのでメニューを選んではキャンセルを繰り返していた。 それだけでも、どういう機能を持っているかが分かるのである。

「ゆ~こ、もう、いいだろう」
久世が押し殺した声で柚布子に声を掛けた。
「もう少し、いいでしょ?」
久世はそのまま1分くらい待って、時計を見た。
「ゆーこ、そこまでだ、メニューを戻せ」
「まぁ~くん、あとちょっと、もう少し」
「いい加減にしろよ」
久世の声が少し大きくなった。 しかし、柚布子は操作に夢中になっていた。
「折角なんだから、いいじゃない、あと少し」
「よせ、ゆーこ、メニューを戻せ」
「何よ、もうちょっと、触らせて!」
最初は押し殺していた声が、普通の声になっていた。
「ゆ・う・こ 止めろ!」
「ちょっと、黙ってよ!」

「止めた方がいいですよ」
久世ではない太い声がした。その声の主は柚布子の手を取り操作パネルから離し、更にその手を久世の方に放り投げるようにした。 柚布子の身体は手を追うように久世の胸に受け止められた。
声の主は○○○通商のプロジェクトリーダー柳沢だ。 柚布子はFXを目の当たりにしてそれに触れて高揚していた顔色が一瞬に青ざめた。

「どういうことですか? 久世さんこれは」
柳沢が久世を問い詰めた。
「いや、偶然通りかかっただけ・・・」
「ほう、偶然にしてはメンテ(綿の手袋)も用意されていますね? この方は?」
柚布子は久世の胸から背中へと隠れた。
「確か○○精密機器の生田さんではなかったでしょうか?」
柚布子は更に青ざめ、鼓動も激しくなった。 これが会社間で問題になればSI会社の出入り禁止どころの話しではない。
「ちょっと、こちらに来てもらえますか?」

久世と柚布子が柳沢の後に続いて用意されている控え室に入ると柳沢は人払いをした。
「久世さん、困りますね」
柳沢は背が高いので威圧感がある。
「一旦はうちに納品されるんだから、うちが許可すれば問題ないでしょう?」
久世はもっともなことを言った。
「確かに、でもこういう初物は他社には見せないという慣習なのでは? それにまだ、検収は済んでいませんから、厳密にはうちの管理下ですね。」
柳沢も負けていない。

「そう、硬いこと言わずにさぁ」
久世はいつもの軽い調子で話し掛けた。 柚布子は声が全く出せない状態であった。
「ええ、私もこれ位で大事にするつもりはありませんよ、ただ、仁義を欠いて貰ってはね・・・」

「そっか~、じゃ、柳沢さんの見たい○○精密の製品を見せるってことで」
と、久世が提案した。
柚布子は穴があったら入りたいくらいの気分であった。 何故なら、○○○通商がわざわざ見たいと思う柚布子の会社が扱っているものは無いからである。
「残念ながら、それは、ないですね~」
予想された答えが柳沢から返ってきた。

久世は後ろに隠れていた柚布子の腕を取って自分の前に立たせると、背中を押して柳沢の方へ押しやりながら
「じゃ、こいつ分解しちゃっていいから」
柚布子は今度は柳沢の胸に受け止められた。 柚布子は何が起きたか理解出来ず、時間が止まったように感じた。
  1. 2014/11/01(土) 08:53:45|
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序破急 - 序の12 夫の知らない妻(4)

柳沢は柚布子の背中に片方の腕を抱くように回し、もう片方の手で柚布子の顎をしゃくった。 そしてしゃくった手はそのまま喉から胸へと下り、ブラウスの釦を一つ外した。 英生の選んだ下着が柳沢の目に入った。 柳沢は「ほぉー」とその下着を見て小さく呟いた。 そして再び顎をしゃくり、柚布子の顔を上に向けると唇を近づけた。 柚布子は腕を振り解き久世の後ろに逃げた。
柳沢は両腕を広げて「おや、まぁー」というようなポーズをした。 柚布子に後ろめたいことがあったとしても完全にセクハラである。

「久世さんも面白いこと言いますね。 今日はこれから出荷の準備をしなくてはならないので、何時か分解させた頂ますよ」
そういうと、柳沢は控室を出て、現場に戻って行った。 柳沢の後ろ姿を見送ると久世も控え室を出て歩き始めた。 柚布子は一瞬止まっていたような時間が動き始めて久世の後を追った。 久世はカフェテラスへと向かった。 柚布子は分解が久世流のジョークだとその時は思った。

カフェテラスへ着くと、柚布子はどうしたらいいか分からず久世のすることを見ていた。 久世は無料の自販機からエスプレッソを煎れると柚布子に渡し、窓際のカウンターを顎で指示した。 久世も同じものを取り、カウンターへ向かった。
久世が来るのを待って柚布子はハイスツールに腰掛けた。 久世も隣に座ると互いに向かい合うように椅子を回転させた。

さっそく、久世が柚布子を責めた。
「そも、そも、なぁ、オマエさんが遅れるからだろう? 4時って言ったろう!」
「・・・・」
「4時に来てりゃ、20分遊んだって柳沢には見つからなかったケドな」
「・・・・」
柚布子は言葉が無かった。 遊佐の心配を無にしてしまって申し訳ないと思った。 思い起こせば遊佐は柚布子の為になることしか助言していなかったと気づいた。

「ったくさ~、俺の止めろというのも聞かねぇ~で、何やってんだよ!!」
「御免なさい」
柚布子はやっと声を出すことが出来た。 確かに柚布子は最新の製品を見て興奮していた。 柚布子の会社の扱うものは俗にいう枯れた製品だからである。 しかし、枯れた製品はそれなりに実績があるのでそれはそれで人気はあるが、新製品のインパクトには敵わない。
FXを秘密裏に見せてくれたのは、日頃の久世の暇つぶしに付き合ってるお返しと自分勝手に解釈してしまっていた。

「会社にバレないかしら?」
柚布子は心配事を口にした。 今夜のSI会社の手打ち式の前にとんでもないことをしてしまったと心配でならなかった。
「大丈夫じゃない、大事にしないって言ってたろ?」
久世は大して心配などしていない様子だった。
「でも、なにか穴埋めしないといけないんでしょ? うちにそんな製品ないわ」
柚布子は困惑した表情を見せた。 代わりに見せる製品が無いと会社に知られてしまうことを心配した。

「穴埋めね。 ま、確かにオマエさんの穴を柳沢ので埋めるかもな・・・まさに穴埋めだな」
「はぁ?」
柚布子は久世が何を言っているのか直ぐには理解出来なかったが、なんとなく自分の穴は何かを考えると想像は出来た。 だが、それを口にすることは出来ない。

「オマエさんさー、やぱりイケメン好きじゃん。 柳沢って結構イケメンだろ?」
「え?」
「だって、キスされそうだった時うっとりしたような表情だったぜ?」
「うそ、そんことないわ、何がなんだか分からなかったから動けなかっただけヨ。」
柚布子は必死に弁解した。 実際そうであり、そのことで柚布子を責めるのは酷である。

「あのまま、キスされて唇奪われちゃうのかと思ったヨ。」
「・・・・」
「柳沢ならそのまま、オマエさんを分解しちゃったかもな。」
「まぁ君は私がそんなことになるのを見て平気だったの?」
柚布子の瞳は潤み始めていた。
「平気なわけないだろう・・・」
久世は男のドス黒い欲望を隠した。 そのまま柳沢の手で分解される柚布子を見たかったのだ。 久世にとって残念ながら柚布子は最愛の女ではなく、欲望の標的に過ぎないのであった。

「もう、泣くなよな、俺のせいかよ?」
久世は面倒臭い会話を切りたくてノートパソコンの蓋を開いて話をそらそうとした。 パソコンは無情にもピーピー電池切れの警告を発していた。 柚布子の来る時間が分からなかったのでスタンバイにせずにそのまま放置していたのだった。
久世はACアダプタをカウンターのアウトレットに挿そうとしたが上手く手探りでは見つけられず、ハイスツールから降りてカウンターの下を覗き込んだ。

柚布子も落ち着くと後ろに置いた鞄で携帯のバイブが鳴っているのに気が付いて、そのままの姿勢で鞄に手を伸ばした。 その時偶然にも柚布子の膝が割れた。 久世がカウンターの下を覗くより一瞬早く柚布子は鞄の方へ顔を向けたので、久世のことは視界に入っていなかった。

久世は反射的にスカートの奥を覗き込んだ。 ガラス張りのカフェテラスは西陽の紫外線だけをカットし、可視光は柚布子のスカートの中の行き着くところまで届いていた。 柚布子は薄黒いパンストだったが、薄黒い色は太腿の中程までで、そこにはフェイクのガーター模様になっており、その先は色も模様もなかった。 完璧なまでに下着を見せていた。

白いクロッチの上側は柚布子のヘアーが透けているのが手に取るように分かった。 おまけに黒いレース調の縁取りには縁取り以外の黒い毛がはみ出しているのがパンスト越に見えた。 久世は今まで柚布子の裸やヘアーのことなど想像したことはなかったが、見てしまうと柳沢にそのまま犯らせるのはもったいないと思うようになった。

柚布子は電話を取って振り返ると膝が割れているのに気が付き慌てて閉じた。 久世の視線の残像が残っているように感じた。

「はい、生田です。」
「私だ。 どうした、なかなか電話に出なかったじゃないか」
「すいません、移動していたものですから」
「今、どこだ」
「○○○システムで打ち合わせが終わったところです」
「ほんとうにそうか?」
「はあ?」
「さっき、先方の担当に磯貝が電話したら誰も居なかったらしいぞ、今どこだ」
「○○○システムのキッティングセンターで久世様、遊佐様と一緒でした」
「やぱり、そこだったのか」
「なんでしょうか?」
「大変なことになった」
「何が大変なのでしょうか?」
「君のことだ」
「私の?」
「そうだ」
「私が何か?」
「逢って話をしなくてはならない、大事なことだ、SI会社の手打ち式に行く前にだ」
「・・・・」
「磯貝が○○駅で待ってるから合流してくれ、いいな」
「・・・・」
「どうした、早くそこから離れろ、いいな」
「はい」
電話の主は営業部の末永部長からだった。 柚布子はもうFXの件が知られたのだと思った。 柳沢とのやり取りを他に見ていた人間が居たかも知れない。 その誰かが密告したのかも知れない。 別に久世と柚布子は隠れて逢っていたわけではなかったから、キッティングセンターで暇つぶしをしているのを見られていたとしても不思議ではないと思った。

「ちょっと問題が出たので、帰るわね」
柚布子はこれ以上久世に迷惑を掛けてはと思い電話の内容を久世には話さなかった。

ハイスツールから柚布子は降りた。 その時、柳沢によって外されたブラウスからブラジャーが久世の視界に入った。
「ブラウスの釦、外したまま帰るの?」
久世に言われて、そのままだったことを思い出して慌てて胸を押さえた。
「もう、まぁ~君たら、エッチ!」
「パンツもエッチだったよ。 そんなエッチな下着で久しぶりに旦那と外で逢うんだ。」
「ちょっとぉ~、信じられない。 違います。」
「え? 旦那じゃないの? やるね柚布子も・・・」
柚布子はブラウスの釦をとめて、スカートの裾を手で払った。

「今日はご迷惑をお掛けしました」
柚布子は改まって挨拶した。
「大丈夫、気にしなくていいよ。 ちゃんと後で穴、埋められれば問題ないから。」
「はぁ?」
柚布子は少しむっとした表情で久世に踵を返した。

キッティングセンターを出るところでタクシーが1台停まって中から遊佐が降りて来た。 柚布子と目が合うと遊佐はタクシーの運転手に何か声を掛けた。 遊佐は柚布子に近づくと、
「大丈夫でしたか?」
柚布子は軽く頭を下げた。
「○○駅に行くなら、一緒に乗りましょう。 ここまで来て、急用が入って本社に戻らなければならなくなりました。」
「有難う御座います。お言葉に甘えさせて頂きます。」

柚布子と遊佐はタクシーに乗り込んだ。
タクシーがキッティングセンターのロータリーを廻っていると遊佐がポツリと
「やはり、○○○通商が来ていたか」
その言葉に連れられて柚布子もリヤウィンドウを振り返り、遊佐の視線の先を追った。 そこには一台の営業車が停まっていた。 ○○○通商の車だった。
柚布子はその車に見覚えがあった。 キッティングセンターに来た時に柚布子の乗ったタクシーがその車の前に停まった為、柚布子がタクシーから降りる時にタクシーの運転手が留める位置を少し直したからだ。 その車は柚布子が来る前から停まっていたのだ。 ということは、柚布子がFXに夢中になっている時に来たのではないということだ。

柚布子にある疑念が湧き始めたが、営業部長に呼ばれたことが気になってその疑念は記憶の中に隠れてしまった。


柚布子と遊佐は駅で互いの方向が逆なのでホームに上がる階段で挨拶をして別れた。 ホームに上がると遊佐が乗る方向の電車の入線を知らせるアナウンスが流れていた。 その駅は島式ホーム2面4線の特急の待ち合わせをする駅であった。 柚布子は遊佐の上がったホームに背を向けて電車を待っていた。 程なく電車が入線し、乗り込むとそのまま反対側のドアの前に立った。 降りる駅ではそのドアが開くからである。

発車する時にそのドアに遊佐が映っていた。 柚布子は振り返り反対側のホームの遊佐に深深と頭を下げた。
  1. 2014/11/01(土) 08:54:40|
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序破急 - 序の13 秘策

末永と磯貝はSI会社を出て一旦最寄り駅の喫茶店にいた。
末永が磯貝に聞いた。
「生田君は結婚指輪していたっけ?」
「さあ、あまり気にしていませんでしたが」
「外して痕が残らなければいいが」

末永は自分のついた嘘を嘘でないようにする画策をしていた。
磯貝が心配になって末永に尋ねた。
「あんな、嘘ついてバレませんか?」
「バレないようにするんだ、2ヶ月の間はな」
「2ヶ月ですか?」

平社員の磯貝には知らされていないが、柚布子は2ヶ月間のピンチヒッターなのである。 2ヶ月後には他の支社から男性のプロジェクトマネジャーを転勤させる予定なのである。 今は異動の時期ではないからその間を柚布子が担当するのである。 柚布子もそれは知っていることだ。 だから○○○システムにも2ヶ月外れるとだけ言ってあるのであった。

「兎に角、生田君に連絡を取ってくれ」
末永は磯貝に連絡を指示した。 磯貝は携帯で連絡する為、喫茶店の外へ出た。
5分くらいして戻って来て、
「連絡付きません」
「生田君はどこに行っているんだ」
「午前中の話しだと○○○システムに打ち合わせに行くと言っていました」
磯貝の担当ではないので詳しくは聞かされていなかった。

「じゃ、課長に電話して先方の担当の連絡先を聞いてくれ。 まさか担当者と何処かで遊んでる訳でもあるまい」
末永の耳にもそれとなく柚布子が久世の暇つぶしに付き合っていることは耳に入っていた。 しかし、柚布子が久世に見初められてから久世の会社からの発注が増えているので打ち合わせと言われれば信用するしかないのだ。

磯貝はまた、外に電話を掛けに行った。 磯貝は遊佐の番号を聞き連絡してたが不在で折り返し連絡をもらうようメッセージを残した。 そして戻ってくると、末永と雑談しながら連絡を待った。

雑談が途切れると末永は自分も連絡をしてみると言って、外に出た。 柚布子の携帯を呼び出すが、出ない。
再度呼び出すが柚布子は出ない。 これで出なければ磯貝に任せようと再ダイヤル釦を押した。
留守電に切り替わる寸前に由布子が電話に出た。

「はい、生田です。」
「私だ。 どうした、なかなか電話に出なかったじゃないか」
「すいません、移動していたものですから」
「今、どこだ」
「○○○システムで打ち合わせが終わったところです」
「ほんとうにそうか?」
「はあ?」
「さっき、先方の担当に磯貝が電話したら誰も居なかったらしいぞ、今どこだ」
「○○○システムのキッティングセンターで久世様、遊佐様と一緒でした」
「やぱり、そこだったのか」
「なんでしょうか?」
「大変なことになった」
「何が大変なのでしょうか?」
「君のことだ」
「私の?」
「そうだ」
「私が何か?」
「逢って話をしなくてはならない、大事なことだ、SI会社の手打ち式に行く前にだ」
「・・・・」
「磯貝が○○駅で待ってるから合流してくれ、いいな」
「・・・・」
「どうした、早くそこから離れろ、いいな」
「はい」

末永はほっとして電話を切り、喫茶店の中に戻り磯貝に駅で落ち合うように指示した。 そして末永は先に弥勒亭のある駅に移動して柚布子と話しが出来る喫茶店を探す為に出て行った。

弥勒亭は駅を挟んでSI会社とは反対側にあると聞いていたが、SI会社を出る間際に購買部の小宮山が今日は駅の反対側の弥勒亭ではなく姉妹店の弥勒亭別邸だと告げられた。 別邸はSI会社の最寄駅から二駅郊外に行ったところにある。



磯貝は柚布子を末永が待つ喫茶店へと案内すると弥勒亭別邸へと先に向かった。 SI会社の者が着く前に支払いの話しをする為であった。 弥勒亭別邸の予約はSI会社の購買部でしていたが、今回の手打ち式の性格からいって柚布子の会社が費用を持つことにする為ある。

末永は柚布子の為にコーヒーを注文して席に座るように促した。 柚布子は神妙な面持ちで末永の向かいの席に腰を降ろした。
コーヒーが運ばれてくると、柚布子に勧めた。 末永はどう切り出していいか分からず、由布子がカップを口に運ぶのを見て苦い顔になった。 やはり、柚布子の左薬指には結婚指輪が光っていた。
重苦しい雰囲気になって、柚布子が堪らず話し出した。
「申し訳ありませんでした」
「何が?」
「い、いえ、○○○システムでの打ち合わせが延びまして」
「あ、いや、それはいいんだ・・・」
柚布子はFXのことで呼ばれたのではないような気がして少し気が楽になった。

「生田君は結婚して何年ですか?」
「はあ? 6年ですけど」
「そうか、うちに来たときはもう結婚していたものな。 指輪は外せる?」
「え? はい、仕事中に製品を触る時とか傷付けないようにする為に外します」
「そうか、外して見せてくれるか?」
「え? はい」
柚布子は末永の言ってることが意味不明であったが、会社の上役なので従った。

末永は外した指を見てほっとした。 指に指輪の痕は残っていない。
「生田君、生田というのは旧姓だよね?」
「はい、そうですが、部長どうしたんですか? 指輪とか、旧姓とか」
「す、すまん生田君、この通りだ。 今日、いや、今日からその指輪を外して貰えないか?」
末永は膝に手を突きテーブルで額が擦れるくらい頭を下げた。
「はぁ? ちょっと部長、やめて下さい、主人と何故別れるんですか?」
「いや、すまん、言い方が悪かった。 離婚してくれとかそういうことではないんだ。」


末永はSI会社の応接室でのいきさつを柚布子に話した。 FXのことで神妙な気分でやって来た柚布子には滑稽な話しに聞こえて思わず噴出しそうになった。
「2ヶ月もそんな嘘ついていられますか?」
「そこなんだが、今度の案件でSI会社がうちの誰と話をすると思う?」

そう言われて柚布子は考えた。 柚布子と同じ営業支援課では担当外の顧客とプライベートな事を話す人はいない。 電話を取り次ぐだけで、柚布子のカバーをする人も居ないのである。 それは課としては独立しているが外部から見れば営業部員と同じであるから、柚布子が居なければ代わりは営業の磯貝かその上の課長といいうことになる。

「営業の方が守って頂ければなんとかなるかしら」
「そうだろう?」
末永は自分の思いつきの嘘がなんとかバレずに済みそうなのに自分で感心していた。

「でもバレたらちゃんと責任取ってくれますよね?」
「ああ、勿論、全力で君を守るよ」
「本当にお願いしますからね」
柚布子は外した指輪を財布の小銭入れにしまった。 末永は再び頭をテーブルに擦りつけるように頭を下げた。

「それで、もう私は誰かさんのお嫁さん候補なんですか?」
「重盛とかいう長身の、ちょっとイケメンかな」
「まあ、重婚だわ」
「え? 生田君、もう私を困らせるなよ」
柚布子はここに来る前とは見違えるような笑顔になっていた。 なんだか面白い映画でもこれから見るような気分になっていた。

末永は時計に目をやって、柚布子を促すと店を出て弥勒亭別邸に向かった。
  1. 2014/11/01(土) 08:55:44|
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序破急 - 序の14 弥勒亭 別邸

弥勒亭は和風の料理店である。 席は4~20席の全席個室である。 一人では入れないが2人からなら入れる。 勿論予約がなくても、一見の客でも空いている席があれば利用することが出来る。 SI会社の古株は良くここを使う。 店を入ったところに弥勒菩薩が置いてある。 経営者に弥勒信仰でもあるのでろうか。 その経営者は以前有名所でホステスをしていてその時の財とコネでこの店を始めたという噂である。

弥勒亭 別邸 それは弥勒亭の姉妹店である。 経営者は弥勒亭経営者の妹であるからまさに姉妹店である。 しかし、唯の姉妹店ではない。 弥勒亭と違い一見さんや予約の無い人は利用出来ない。 以前、料亭だったところを買い取って改造して、席は幾つかの部屋毎に離れ形式になっている。 以前の料亭の名残なのか殆どが二部屋の続きになっており、大人数の時は二部屋を開放して使う。 棟によってはトイレやシャワー室まで完備している。

以前は、別邸を一般の人が利用することは稀であった。 殆どが社用族の接待の場として使われていた。 都心ではないことから料金も割安なこともあり色んな社用族に今でも利用されている。 とは言ってもこのご時世、以前のように飲んで接待して密談をするような社用族はいない。 今は色事が伴わないことは無いと言っていい。 宴席の隣の部屋には布団が敷いてあるような事もあったに違いない。

慰安旅行、失われた10年以来すっかりその言葉を耳にしなくなり、都心の近場の温泉街は閑古鳥が鳴いている。 独自の特色を持たない社員旅行頼みの旅館やホテルは閉館せざるを得ないご時世になってしまった。
では、社員を慰安するような行事が無くなったかと言うと、そうでは無く、形を変えて予算も減らして続いている。 会社の近場のレジャーセンターでの娯楽や、バーベキュー大会等である。
それでも以前のコンパニオンを呼んでのどんちゃん騒ぎを忘れられない連中はこの別邸で羽目を外すのである。 コンパニオンは別邸が予算に応じて手配してくれる。 だが、別邸は旅館ではないから泊まることが出来ないので利用する連中はそう遠くない範囲に限られている。 昼間のレクリェーションの帰りに寄って、遅くとも夜の9時には帰るのである。

別邸にとっては社用族の隙間を埋める重要な顧客であり、会社の行事に絡めないで仲間内で宴会をするリピーターはお得意様になって来ていた。


この日もお得意様の宴会の予約が入っていた。 コンパニオンも5、6名用意されていた。

末永と柚布子がSI会社より先に別邸に到着した。 部屋に案内した仲居が仲居頭に柚布子のことを告げた。 仲居は柚布子がコンパニオンと勘違いしたのである。 この辺りのコンパニオンはいかにもホステスですというような格好はしていない。 タクシーでやってくると言っても目立つからである。 殆どのコンパニオンは正業ではないからいかにもという格好はしていないのである。

自前でコノパニオンを手配されては別邸にとって問題である。 仲居頭は磯貝を呼んで確認した。 仲居頭も柚布子を見て納得した。 一瞥しただけではコンパニオンに見えるが、化粧を良く見ればコンパニオンのそれとは違っていた。

部屋に案内された後に柚布子は化粧室に向かった。 今日は午後会社を出てから移動やらで化粧を直す時間が殆ど無かったからである。 柚布子は仲居頭に化粧室の場所を聞いた。 仲居頭は丁寧に母屋の近くの化粧室まで案内してくれた。 手打ち式が行われる棟にも化粧室はあるが、小さく男女兼用なので、広い女性専用の方に案内したのであった。 それが後で不運を招くとに柚布子も仲居頭も知る由もないことであった。

化粧室にいる柚布子のところに仲居頭がSI会社が到着したのを告げに来た。 仲居頭は事情をある程度聞いていたので、柚布子達が出迎えられるようにSI会社には玄関で足止めをしておいた。 柚布子は化粧直しを終えると足早に部屋戻って行った。

SI会社のメンバーは製品企画部の山田部長、重盛、購買部の小宮山とその上役の園田副部長である。 実は、最初の予定では会社の近くの弥勒亭であったが、園田が小宮山から新任が女性と聞くや別邸に変更させたのである。

購買部の園田は食えない人間である。 社の中でも浮いていた。 というのも園田は会社の主要出資先の銀行からの口利きで購買部の副部長の席に就いていた。 仕事らしい仕事はしていない。 唯一仕事らしい仕事と言えば、接待をすることと、されることである。 この別邸のお得意様と言っていい。 だから直ぐに予約が取れたのである。

噂では園田は大手総合電気会社の調達部にいて取引先と癒着し過ぎて問題を起こしてその会社を追われたらしい。 新任が女性と聞いて直感が働いたのであろう。 ましてや得意先ではなく取引先なら上から物が言えるし、無理を言った場合でも別邸なら自分の我侭が通ると思ったのである。
確かに園田はここで得意先に女を抱かせたこともあったし、取引先に女を要求したこともあった。
だが、そういう場合の女は所謂その手合いの女であって柚布子のような素人ではない。

園田にとって邪魔なのは山田である。 勿論、小宮山や重盛も園田のようなことをする男ではない。 助平なことは好きでも節度はきちんと持っているからである。

園田が来たことでお上直々に挨拶に出て時間を繋いだ。 その横をこれも常連の大学の同期生仲間8人が到着し、仲居に先導されて別の棟へと案内されて行った。
仲居頭がお上に目配せすると園田達も部屋へと案内されて行った。 園田達が部屋へと消えると柚布子のようなスーツ姿の女性達を乗せたタクシーが到着したのであった。

園田達は部屋へと向かう廊下を仲居の先導で向かっていた。 廊下を曲がると、園田は部屋の前に外から末永、磯貝、柚布子の順に廊下に並んでお辞儀をして迎えている様子が遠目に見て来ていた。 やがて、仲居がお辞儀をしている3人に並んで園田達を部屋へと案内した。 園田が柚布子の長い髪を見てニヤリとしたのを仲居は見逃さなかった。

いよいよ、手打ち式が始まるのである。
  1. 2014/11/01(土) 08:59:08|
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序破急 - 序の15 生贄の記憶(1)

『前回までのあらすじ;
とある機器販売会社に勤める(旧姓)生田柚布子(31)は夫が派遣されている得意先でもある会社の担当とになったが、前任者のミスの為出入り禁止となっていた。 その出入り禁止を解く手打ち式の日、柚布子が現在担当している○○○システムで商売敵の製品を触っているところを見つかり弱い立場に追い込まれてしまった。 そして怪しげな弥勒亭別邸でいよいよ手打ち式が始まろうとしている。 柚布子はドス黒い男たちの欲望に包まれようとしているのをまだ気がついていない・・・』


柚布子は夢の中を泳いでいるような気がした。 何処かに寝かされているのだろうか。 鳩尾あたりが少し痛い。 結構飲まされたみたいだ。 しかし、それより身体の芯が熱くなり始めていることが気になった。 乳首も硬くなって誰かに揉まれている錯覚を覚えた。 それにしても今日は色んなことが起きたと記憶の一つ一つを手繰っていった。 時より記憶が薄れるのは酔いのせいか、もう自宅に帰りついたのかも分からない。

○○○システムのキッティングセンターで最新のFXを操作した時の興奮、そして、○○○通商の柳沢に迫られたことが蘇って来た。 柳沢は柚布子の顎をしゃくり、その手を胸へと進めブラウスの釦を一つづつ外して行った。 そしてブラジャーが露になると、ブラジャーを上にずらし、柚布子の乳房が柳沢の目の前に晒された。 柳沢は円を描くように乳房の周りを愛撫し始め、その手を顎へと戻し、柚布子の顎を上に向け、唇を近づけた。 そして、迷うことなく柚布子の唇に重ねた。

違う、違う、と柚布子は否定したが、口は塞がれて舌が柚布子の唇を割って来た。 そのリアルな感触が、久世の後ろに逃げたのは記憶違いで実際は唇を奪われたと錯誤させた。
それにしてもリアルな感触を伴った記憶だと柚布子は思った。 記憶の中ならと、柚布子は口を開け舌を動かした。 柚布子の舌に合わせて相手の舌も応じて、口を吸い始めた。 夢なら無味無臭だが、酒の匂いとそれに微かに煙草の匂いがした。 夫の英生ではない。 英生は結婚する時に煙草を止めていたからだ。 誰なの? そう思いながら柚布子は夢の中で舌を絡ませ続けた。

柚布子は夢の中にまだ居ると思った。 記憶を辿ろうとするが、リアルな感触がそれを邪魔させる。 キスだけでなく胸も同時に揉まれていると知った。 気が付くと乳首は硬くなって、指で弄られている。 柚布子は口が開放されると、薄目を開けた。
横を向いた柚布子の視界には自分のスーツの上着が脱ぎ捨てられていた。 自宅に戻ったのか? まだ背景が霞んでよく分からないが上着は畳の上にある。 胸の上には人の気配がして両方の乳首の支配者は交互に指から唇と舌に交代していった。 胸の上の黒い頭の影がまだぼんやりしているが、柚布子は懸命に記憶を辿った。

○○○システムのキッティングセンターを出ると遊佐に会った。 その遊佐と駅まで戻った。 遊佐は急用で本社に戻ると言っていたが、柚布子にはなんとなく嘘だと分かっていた。 柚布子のその先の記憶が蘇ろうとしていたが、 急に胸の上が軽くなったので、また途切れてしまた。
視線を胸に向けるとブラウスがはだけ、ブラジャーは上にずらされた格好になって、起き上がらなければその先は柚布子には見えない。

胸にあった人の気配は下半身へと移動し、柚布子のスカートの中にあった。 柚布子にもスカートの中に誰かの手が入って、パンストとパンティを脱がそうとしていることが分かった。 無意識に手がそれを阻止しようと下半身を押えた。
なんでこんなことになっているのか、下半身を押さえながら思った。 弥勒亭別邸に来る前に末永から独身ということにしてくれと頼まれたことを思い出した。 それと今の状況が結び付かない。

手で押さえても容赦なくパンストとパンティーは膝まで降ろされてしまった。 そして腿を伝って手が柚布子の秘部に達した。 それと同時に胸が再び重くなり乳首が交互に吸われたり、舌でころがされ始めた。 柚布子はもはや記憶を辿る集中心がなくなり、込み上げて来る快感に耐えられなくなって来ていた。 秘部に達した手はその長い指を柚布子のヴァギナを掻き分けゆっくり膣に入って来た。 一旦入ると出たり入ったりを繰り返していた。

柚布子はこの快感に身を委ねるべきか、この状況がどういうことなのかをはっきりさせるべきかの葛藤と戦っていた。 柚布子にも指が柚布子の分泌液によって滑らかに動くようになり、太い指がクリトリスを刺激しているのが分かっていた。
柚布子は夢の中から現実に戻りつつあるのを感じていた。 もう少しで状況が把握できそうであった。

弥勒亭別邸に到着して部屋の前でSI会社の人達をお辞儀をしたまま迎えた。 最初の一人が柚布子の前で僅かに立ち止まったのをお辞儀をしたままの柚布子にも分かった。 それはそう遠くない記憶のはずであったが、柚布子の膣に入った指が膀胱のあたりの肉襞を激しく擦り始め、クリトリスも強く押し付けられて、もう声が出てしまって喘いでいた。 そして周りの状況が見えてきた瞬間、快感に頭が白くなった。

頭が白くなったのと同時に複数の女性の声と大きな音がして、着物を着た女性達が柚布子の周りを取り囲んで柚布子の身体に複数の手が動いていた。 しばらくして柚布子の身体は中に浮いたような感覚になり記憶が途切れた。


「ゆうこ、ゆうこ」
柚布子は夫の英生の声で目を開けた。 カーテンの間から薄日が射していた。 この窓に薄日が射すということは朝陽である。

「ごめん、ゆうこ」
「何が? どうしたの?」
「夕べ、酔って帰えって来た柚布子を見てしたくなっちゃった」
気が付くと柚布子は全裸にされていた。
「何時、脱がしたの?」
「昨夜、でも柚布子が寝ちゃったから、今朝まで我慢してた」
昨夜、柚布子がハイヤーで帰って来て、ベッドに倒れ込んだ。 英生は柚布子の服を脱がせた。 心なしか服装が乱れていたように思えた。 パンストを脱がす時にに微かにパンティに沁みが付いていた。 英生は胸騒ぎと同時に自分の男根のカリの辺りがウズウズし始めているのに気がついた。 英生は柚布子を全裸にすると、身体の隅々まで調べた。 勿論、小陰唇も指でこじ開けて調べた。 医者でもないので、診て判るものでもないが、なんとなく英生は安心していた。

全裸の柚布子を見ていたら、英生は手打ち式の座敷のテーブルの上に大の字に寝かされている柚布子を想像してしまった。 そしてSI会社の連中に視姦されている光景が脳裏に浮かんだ。 連中も全裸で自分で自分の男根を扱いていた。 そして柚布子の身体に白濁した液を放っていた。
英生も同じことをした。 終わった後にに嫌悪感に苛まれた。

柚布子の小陰唇にはすでに英生の指が這っていた。 そして膣口に入って愛撫していた。 柚布子はさっきまでに夢は英生の仕業だと思った。
「ばかね」
そう言うと、柚布子は英生の口に唇を重ね吸い合った。 そして、英生の乳首を舌で愛撫し、さらに英生の男根へと口を運び頬張った。 いつもの夫婦の営みである。

柚布子が枕元の避妊具を英生の男根に被せると、いつもの通り柚布子は仰向けになり英生を迎い入れた。 英生はそのままの姿勢で柚布子にキスをした。 柚布子も応じて激しく吸い合い、舌を絡めた。 柚布子はやはり英生は煙草の匂いがしないことを認識した。

二人はいつもの夫婦の営みを終えると、再び眠りに就いた。 今日は祭日で会社は休みであった。
  1. 2014/11/01(土) 09:01:41|
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序破急 - 序の16 生贄の記憶(2)

前回までのあらすじ;
『とある機器販売会社に勤める(旧姓)生田柚布子(31)は夫が派遣されている得意先でもある会社の担当とになったが、前任者のミスの為出入り禁止となっていた。 その出入り禁止を解く手打ち式が弥勒亭別邸にて昨夜行われた。 その手打ち式から柚布子は心神喪失の状態で帰宅した。 次第に蘇る記憶、肌に既に刻まれていることを知ることに・・・』


柚布子は一足先に起きてシャワーを浴びた。 熱い湯が現実を実感させる。 数時間前には夫の舌が這っていた乳房に熱いシャワーを当てた。 さらにその前には見知らぬ男の舌が這っていた記憶が洗いながされていった。 股間も微かに誰かの指や熱い物の感触が思い出されたがボディーソープの泡が一旦は消し去っていった。
柚布子がシャワーを終えて、脱衣場から出ると、英生が起きて来て入れ替わりで脱衣場に入っていった。

英生がシャワーを終えると朝食の用意が出来ていた。 祭日ということもあって遅い朝食となった。 二人は無言で食事を始めた。 英生は明け方柚布子を抱いたことで少し満たされていたが、柚布子はまだ頭がスッキリしていなかった。 それに記憶の整理が出来ていなかった。

柚布子は英生からの問いかけを待っていた。 何処から話し始めていいか分からないからだ。 柚布子はトーストを頬張る英生を見つめた。

「夕べはどうだった?」
やっと英生が口を開いて柚布子はほっとした。
「どうって?」
「だいぶ、酔って帰ったみたいだから」
「うん、なんか飲み慣れないお酒飲ませれて、酔ったみたい」
「そうなんだ、焼酎かな? ところで誰が来たの?」

柚布子は英生に聞かれながら記憶を辿った。 昨夜も記憶を辿っていたような気がした。
「購買部の園田副部長さんと小宮山さん、製品企画部の山田部長さんと重盛さん」 
「ソノダ? 知らないな」
「そうなの、重盛さんっていう背の高い人が担当らしいの」
「ああ、やぱり重盛ね」
柚布子は昨夜の手打ち式のことをゆっくり思い出しながら英生に話し始めた。


-弥勒亭別邸-
離れの一室がこの夜の手打ち式に用意されていた。 母屋の座敷でも良かったのだが、この日は他には一組の客があるだけだったので離れが用意された。 部屋の大きさは16畳、隣の8畳の部屋とは襖で仕切られている。 同じ作りの部屋が3組あり、周りを回廊のように廊下があり趣の異なる庭を眺められるようになっている。
離れは貸切も同様なので廊下側の障子が開け放たれて、そこなら出入りするようになっていた。

仲居が末永の横に並びお辞儀をしてSI会社の連中を部屋の中へと案内した。 順番は園田、山田、重盛、小宮山である。 園田はお辞儀をしている柚布子の前で髪の毛の匂いでも嗅ぐように息を吸い、つま先から順に品定めをした。 柚布子も歩が一瞬止まり視線が刺さるのを感じていた。

園田達が上座から順に着席すると、末永が部屋の上座側に近い畳に正座した。 それに習って磯貝と柚布子が続いた。 柚布子はその時に4つ視線を感じていた。 廊下から部屋に入り畳に正座する自分を4人の男が視姦しているのである。

園田達は柚布子を始めて正面から見た。 園田はニヤニヤしながら柚布子を品定めした。 勿論、園田だけではなく他の3人も自分なりに柚布子に視線を集中させていた。
身長は160センチ、体重40数キロ、バストは84、5のBカップと園田は読んだ。 濃い灰色のスーツに淡いブルーのブラウス。 髪は丁度乳首辺りまであるに違いない長さのものがサイドポニー風に束ねられている。 今時にしては染めていない黒髪が際立って見えた。 アップにしてシャワーを浴びる姿を園田は想像して更にニヤニヤしていた。

そして、男性の誰もが気になる脚である。 とびっきりの美脚ではないが、僅かに黒いストッキンギに覆われたそれは白い肌に違いないと誰もが想像した。 正座すると腿が露になり両腿のスカートの切れ込みが色気を漂わせている。
ややタイトぎみのスカートのお陰で両脚の隙間はデルタに模ってスカートの奥を覗かせるが、正座する直前に両方の掌によってそれは隠されてしまった。

男達の視線は隠されたデルタに集中していた。 そのデルタを隠した掌の先にはネイルアートが光っていた。 淡いブルーの下地にピンク系のジェルで飾られていた。 それを見た誰もが人妻とは思わなかったに違いない。 誰もがあのネイルで家事をしているとは思わないからである。 そのネイルの手にはハンカチではなく名刺入れが指で挟まれていた。


末永が挨拶を行い柚布子を紹介した。
「生田柚布子と申します よろしくお願い致します」
柚布子はお辞儀をして初めて園田達に顔をあげた。 予想通り男達は柚布子を見つめていた。 柚布子はこの時初めて生贄になったような気分になった。 今まで何度も客先に行き同じように紹介されたが、この日は弥勒亭別邸という場所のせいでもあるのかその時とは全く違った雰囲気を感じていた。 夫の英生が心配していた事がなんとなく分かるような気がした。

末永の口上も手打ち式の為の宴ではなく柚布子の紹介に重きをおいたものであったのもこの宴が柚布子の為に開かれている錯覚を与えた。 それだけ柚布子に華があるとも言える。

この日の座敷はテーブルではなく膳が用意されていた。 特に指定のない限りこの別邸では膳が既定であった。 膳は対峙する形で用意されていた。 柚布子は紹介されて名刺交換を行わなければならないが、どうすべきか悩んでいた。 このような膳の席での名刺交換をした経験がないのと想定していなかったからである。 本来であれば名刺交換はSI会社で行われていたはずであったが、柚布子が他社との打ち合わせを優先した為ここでの名刺交換となったのである。 後から考えればここで無理に名刺交換をしないのがマナーとしては良かったのかも知れない。

園田達は既に膳の前に座していた。 わざわざ立ち上がって貰って膳から少し離れて名刺交換するのがマナーとしては良いのかも知れない。 園田以外は名刺の用意をしていつでも立ち上がれる体制に思えたが、園田は胡坐を崩すそぶりも見せずにいた。 柚布子はどうしたものかと仲居に膳越に名刺を渡しても失礼にならないか小声で尋ねた。 仲居もマナーを熟知している訳ではない。 座ったままなら膳越に渡してもお酌をするのと変わらないのでそうするように答えた。 仲居も園田の態度にはいささか呆れたようであった。

柚布子は「失礼します」と言ってやや中腰のまま座敷の中央を園田の膳の前と進んだ。 4人の男性の視線が柚布子のスカートの裾に集中しているのが分かった。 4人共柚布子が立ったままで名刺を差し出すとは思っておらず、一旦は正座してお辞儀をするだろうと思っていた。 そうであれば再びデルタが見られるのである。 ましてや名刺を両手で差し出すのだから手でスカートの裾は押さえられないはずである。

柚布子は膝を揃えながら脚を折り正座した。 距離はお辞儀をした時に膳に頭が被らないように離れて正座した。 柚布子は三つ指をついてお辞儀をすることに集中していたのでスカートの裾を押さえることをしなかった。

園田は誰がみても仰け反っていると思える体勢でニヤニヤした。 膳からすこし離れて正座したことが園田の満足感を高めていた。 園田の視野にはデルタの奥が映っているに違いない。
  1. 2014/11/01(土) 09:02:53|
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序破急 - 序の17 スカートの中

前回までのあらすじ;
『とある機器販売会社に勤める(旧姓)生田柚布子(31)は夫が派遣されている得意先でもある会社の担当とになったが、前任者のミスの為出入り禁止となっていた。 その出入り禁止を解く手打ち式が弥勒亭別邸にて昨夜行われた。 その手打ち式から柚布子は心神喪失の状態で帰宅した。 次第に蘇る記憶、肌に既に刻まれていることを知ることに・・・』


「ソノダってどんな人?」
英生は新聞を見ながら柚布子に聞いた。 柚布子は台所で朝食の後片付けをしながらカウンター越に話し始めた。
「うん、あんまりいい感じの人じゃないわ」
「そうなんだ、購買は小宮山しか知らないからなぁ」
「お酒は好きなのか、強いみたい、返盃で大変だったわ」
「じゃ、ソノダに大分飲まされんだ」
「新任だから仕方ないわね」
「山田部長も口悪かっただろ?」
「全然、優しい人だったわ、それに重盛さんも」
「へぇ~、山田が優しいとは、よっぽどソノダっていうのが嫌なヤツなんだ・・」
「うん・・・」
柚布子は食器洗い機のスイッチを入れると、ソファーの英生の隣に座り英生にしな垂れるように寄りかかり新聞を覗きこんだ。 新聞の記事はピントが合っていないようにボヤけていた。

それもそのはず、柚布子は園田とのやり取りを思い出していたからである。 購買部と相手をするのは主に営業の仕事ではあるが、柚布子は購買部には足を運びたくないと思った。 夫が派遣されている会社のことでもあるのでそのことを夫の前では言えなかった。


-弥勒亭別邸-
柚布子は園田の前に来ると膝を揃えながら脚を折り正座する動作に入った。 園田は改めて品定めをした。 やや面長の顔に園田好みの唇。 その唇にはピンクのリュージュが塗られている。 園田の脳裏ではピンク色が濃いオレンジか真っ赤なものに置き換えられ男好きするものになっていた。 さらにその唇の左下の黒子も園田には嬉しいものだった。 園田は自らの舌でその黒子を弄んだ後に唇へと進める妄想をしていた。

黒い髪は蛍光灯によって緑に光っていた。 サイドポニー風に束ねた髪は先ほどのお辞儀で胸の前へと垂れていた。 その髪に目をやると自然と淡いブルーのブラウスの開いた胸元が目に入ってくる。 大きいとは言えない胸であるが女盛りの30代の艶香が胸元から漂っていた。

園田は僅かに黒いストッキング越につま先から腿までを素早く舐めるように視線を送った。 足の指には紫色のようなペティキュアが塗られていてストッキング越に見るそれは独身とは思えぬ色気があった。 園田は折りたたまれる脚をスローモーションのように感じながら見ていた。

膝が畳につくと、園田の視界の中に両太腿が埋め合わせられない逆三角形のスカートの奥が入って来た。 園田は隣の山田に気付かれないように上体を仰け反らせた。 園田の視界の中のそれは決してハッキリしたものではなく、ただの逆三角形の物理的な光の反射の結果でしかないが、論理的な意味は大きい。
園田だけがそれを満喫出来ているのである。 隣の山田からは見えない角度であった。

園田は柚布子が独身ではなく人妻ならもっとそそるのにと思っていた。


柚布子は前任者の不祥事のこともあり、三つ指をついてお辞儀をした。 お辞儀を終わって園田の顔を見ると仰け反ったようにニヤついていた。 その視線が自分のスカートの裾に注がれているのに気が付いた。

柚布子は親会社に転籍してから外周りをするようになって、挨拶や打合せの時に男性の目線が何処に注がれるのかは分かるようになった。 そして、それを自分から、あからさまな動作で指摘するようなことは相手に自意識過剰と思われ良い印象を与えないことがあることを分かっていた。
つまり、相手が気が付いていないのに見られていると勘違いして慌ててスカートの裾や胸元を手で隠したりして相手の気分を害させてしまうことである。

柚布子は名刺を差し出す為に両手を畳について正座の姿勢のまま前へ進もうとした。 その時スカートが視野に入った。 裾を気にせずに正座した為少し上にずり上がっていたのに気が付いた。 経験的にスカートの中が見えていると思った。 しかし、相手がスカートの中を覗き込んでいるかどうかは分からない。 ましてや初対面の得意先でる。
柚布子は気付かれていないフリをすることにした。

名刺を差し出すことが出来る距離になると、園田の視界からスカートの中は角度的に消えていった。
「生田柚布子と申します、よろしくお願いします」
柚布子は両手で名刺を差し出すと園田はその指先を暫し眺めた。
「人妻でこのネイルはないな」と思い、片手でそれを受け取った。自分の名刺は渡さない。
「園田です」
柚布子にとってそれは幾度も経験のあることなので気にもせずに左隣の山田へ正座のまま移動した。

園田の時のように下がってお辞儀をしようとすると、山田は手で制して正座すると準備していた名刺を差し出した。
「製品企画部の部長をしております、山田です」
「生田柚布子と申します、よろしくお願いします」
柚布子はいつも行っている名刺交換になったのでほっとした。 が、右側からのねちっこい山田の視線は感じていた。
「よろしくお願いします。それから、彼が貴女の窓口になる重盛主任です」
山田は部下の重盛を紹介した。

柚布子は同じように正座のまま横に移動し、重盛の前に来た。 これが私のお婿さん候補の・・・と、緊張の中にも笑みがこぼれそうなのを堪えた。
重盛は身長は175センチはあろうかという大柄であるが、顔は穏やかな表情でどちらかというとイケメンの方である。 柚布子はどことなく好感を持った。
「生田柚布子と申します、よろしくお願いします」
「・・・・」
柚布子は名刺を両手で差し出した。 重盛は暫くその名刺の指先に見とれていた。 それもそのはず、重盛の会社で柚布子のようなネイルをしている女性は居ないからである。居たとしてもかなり控えめであった。

「し、重盛といいます。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
生田柚布子、アシスタントマネジャー。 重盛は横長の名刺をじっと見つめていた。
重盛浩太、柚布子もまたその名刺を暫く眺めていた。 そして自分でも僅かに微笑んでしまったことを自覚したその時、左から視線を感じた。 もう一人いた小宮山である。

柚布子は再び正座のまま横に移動し、小宮山の前へ来た。
「生田柚布子と申します、よろしくお願いします」
同じように柚布子は名刺を差し出した。 最後ということもあって、所作は雑になっていた。
「購買部の小宮山です」
小宮山はおまけのような名刺交換に感じて
「購買では私が貴女の担当です」
山田の言葉に対抗するようにいった。
「はぁ・・」
柚布子はすこし呆気に取られた顔をしたが、少し下がって浅くお辞儀をした。園田の時と同じ距離であることに柚布子は気が付いたのでスカートの裾を両手で押さえていた。
顔を上げると残念そうな小宮山の表情が見えた。

柚布子が立ち上がると、山田は末長と磯貝に手で善を示しながら「どうぞ」と着席を促した。 柚布子もそれに続いた。
それと同時に廊下で控えていた数人の仲居が瓶ビールを持って入って来て全員のコップに注ぎ始めた。
  1. 2014/11/01(土) 09:03:48|
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序破急 - 序の18 返盃

「弥勒亭って駅の反対側の店だよなぁ」
英生は新聞のスポーツ欄を見ながら肩に寄りかかっている柚布子に聞いた。 「うん」という返事が返ってくると思っていたが、
「え? 二駅先よ」
「違うの?」
英生は驚いた。 実は心配になって英生も同じ派遣仲間と弥勒亭に行ったのである。しかし、山田や重盛を見掛けることは無かった。 座敷の方も気をつけて見張っていたが、ついに発見出来ず二時間の飲み放題が終わり英生一人酔えずに帰宅したのであった。
「料亭みたいな造りのお店だったわ」
「料亭ねぇ」
柚布子はあまり弥勒亭別邸の造りを憶えていないのに気が付いた。
「それに、座敷なんだけど、テーブルじゃなかったの」
「テーブルじゃない? 何、それ・・」
「うん、膳だったの」
「そっか、じゃずっと正座だったんだ」
「そう、テーブルでも正座だったと思うケド・・・」
「スカートだったから大変だったでしょう。 まさか覗かれたりとか」
「・・・・」
柚布子は何か思い出してはいけない記憶があるのではと思った。


-弥勒亭別邸-
柚布子達が席につくと、仲居が3人ビールを持って入ってきた。
膳はSI会社の園田達と柚布子達とは対峙する形で用意されていた。 SI会社は上座から園田、山田、重盛、小宮山の順で柚布子達は上座から末長、柚布子、磯貝の順である。 柚布子の膳だけが他より高さのあるもので脚にはめくら板らしき物が施してある。 これはスカートの女性用に誂えられたものである。

末長が挨拶をして一同ビールを口に運び、膳に用意されていたお通しを食べ始めた。 一同がお通しを食べ終わった頃に料理が運ばれて来た。 料理を運んで来た仲居頭が柚布子の脇に来て小声でなにやら話しかけた。

柚布子は軽く礼を言うと磯貝の後ろを回って、座敷の中央から園田の膳の前に来た。 仲居頭もその後を新しいビールを持って従った。 柚布子にお酌をするようにアドバイスしたのであった。 先乗りしていた磯貝がこういう場が不慣れなので指導を依頼していたのであった。

園田は再び舐めるように柚布子の身体に視線を這わせた。 柚布子はスカートの裾を押さえながら正座すると仲居頭からビールを受け取った。
「お一つ、どうぞ」柚布子は頭の中で何と言えば良いか迷っていた。 仲間内では「ご苦労様」とか「お疲れ様」と言ってビールを差し出せば相手は「ありがとう」と言ってグラスを差し出す。
しかし、この場合どうしたら良いか迷った。
「よろしくお願いします、ビールでよろしいでしょうか?」
「ああ」
柚布子の問いに無愛想に園田は応えてグラスを差し出した。 柚布子は少し膝立ちするような格好で園田にビールを注いだ。
園田は注がれたビールを一気に飲み干すと、グラスを柚布子に差出し、柚布子の手からビール瓶を奪った。 このグラスで返盃を受けろという仕草である。
それを見た仲居頭は柚布子の膳から柚布子のグラスを取り由布子に差し出した。 それを見た園田は幾分ばつが悪そうに自分のグラスを自分の膳に置いた。

「頂戴します」
柚布子はグラスを両手で捧げるように園田に差出た。 園田は泡がなるべく立たないようにビールをグラスいっぱいに注いだ。 柚布子は注がれたビールを時間が掛かったが一気に飲み干した。
「ほう、なかなかイケる口のようだな」
園田は感心したように言ったが飲み方からイケる口でないのは分かっていた。 再びビール瓶を柚布子の前に差し出した。 柚布子は片手で拒否の意思表示をしたが、園田は更にビール瓶を突き出し、催促した。

仕方なく柚布子はグラスを園田に頂くように差し出すと、同じように泡を立てずにグラスいっぱいに注いだ。 柚布子は皆に分からないように息を吐くと、グラスに口を付け傾けてビールを喉へと流し込んだ。

柚布子は3度息継ぎをしてようやくグラスを空にした。
「やっぱり、足らないようだな」
園田がそう言うと三度ビール瓶を柚布子に差し出した。

これには流石に柚布子も閉口したが、相手が相手だけに断り難い。 柚布子は暫し固まった。 それと同時にこれまで立て続けに3杯ビールを飲んだことになり、酔い初めていることを感じていた。 薄っすらと頬も紅潮しだしていた。

「園田くん、その位にしてあげたらどうだ」
山田の声に柚布子は救われた。
「そんなに飲ませたんじゃ、私の返盃を受けられなくなるよ」
山田はさらに続けた。
「さあ、私にも注いで下さい」
そう言うと柚布子にグラスを差し出した。 柚布子は少し立ち膝のまま山田の前に移ると仲居頭から新しいビールを受け取った。 園田は苦虫を噛み潰したような表情をして山田を見ていた。

「よろしくお願いします」
柚布子は山田にビールを注ぐと、山田は一気に飲み干した。 そして、柚布子からビール瓶を受け取ると、柚布子がビール瓶の代わりに持ったグラスの3分の1程度注いだ。 そして、
「口を付けるだけにしなさい」
そう、柚布子に囁いた。
「頂戴します」
柚布子は一口だけ飲むと、お辞儀をした。 山田が優しく微笑んで自分を見つめていることに柚布子は安堵を感じた。

「こーた、君も注いでもらいなさい」
そう言う山田の声と共に柚布子は重盛の前へ移動した。 重盛のことを浩太と下の名前で普段呼んでいることを知ると急に柚布子は重盛に対して親近感を持った。
重盛はやや照れながらグラスにあった残りのビールを飲み干し、柚布子の前に翳した。
柚布子は自然と笑みがこぼれて、更に頬が紅潮しているに違いないと思った。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ」
重盛はビール瓶を持つ柚布子の指のネイルに見とれていた。

柚布子が注ぎ終わると重盛は一気に飲み干し、息を吐いた。 そして、首を二度縦に振った。 その様子を見て柚布子は笑い出しそうになった。 なんとも子供のようにほのぼのとした仕草であったが、左の小宮山の視線を感じて笑いが押し留められていた。

柚布子が小宮山の前に来ると仲居頭が新しいビール瓶を差し出した。
既に、小宮山はグラスを空にして片手で持って準備していた。
「よろしく、お願いします」
柚布子がビールをグラスに注ぐと小宮山は柚布子の手先から腕、胸へと視線と走らせた。
小宮山は注がれたビールを半分飲むと、柚布子の手からビール瓶を取ると、園田と同じように柚布子にその瓶を向けた。

柚布子は自分のグラスを手に取り、小宮山に翳そうとすると
「空けてほしいな」
そう小宮山は柚布子に告げた。 柚布子はグラスの残りのビール飲み干したが、げっぷが出そうで苦しかった。
「頂戴します」
小宮山は柚布子のグラスになみなみとビールを注いだ。

柚布子は直感的に少しでも口を付けなければならない状態と分かっていた。 姿勢を正して4人に酌をし、返盃を受けた。 柚布子が通常飲む量に達してはいないが、ピッチは早い。
柚布子はゲップを抑えながらグラスを口に運び傾け喉に流し込んだ。

最初の一口は飲めたが、息継ぎの時にゲップが漏れそうになった。 それを堪えようとしたがタイミング合わず咽たようになり傾けたグラスのビールが少し溢れた。 溢れたビールは柚布子の左顎から筋となって喉から更に下へと落ちていった。

小宮山はそれを卑猥なものでも見る目で追っていた。 さらに目を下に落とすと、ビールが飛沫になって飛んだのであろう、胸に小さく濡れた痕を作っていた。 角度によっては見辛いだろうが、小宮山の目には濡れたブラウスからブラジャーの淵がくっきり映っていた。

柚布子は慌てる様子もなくハンカチで口元を拭った。 重盛も山田も見て見ぬふりをしていた。 丁度次の料理が運ばれて来たところであった。
「どうぞ、料理を召し上がって下さい」
山田の声に促されて柚布子は自分の膳へと戻った。

柚布子の膳には脇にお盆が用意されていて前の料理がそこに置かれていて、今運ばれて来た料理が膳へと並べられていた。 最初の一杯以降柚布子は胃にビール以外を入れておらず、胃壁はアルコールを効率よく吸収し、肝臓に送られていた。

胃壁にアルコールが染み渡るのを感じて柚布子はいつもと違う酔いが襲ってくる予感がした。
  1. 2014/11/01(土) 09:04:54|
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序破急 - 序の19 着信

いつもより早く酔いそうなのを自覚してアルコールの吸収を抑える為に料理を口にしたが、水分なしに料理だけを胃に落とすのは辛い。 この段階で烏龍茶を頼める間柄の連中ではないので自分のグラスを取ったが、空であった。
その様子に気が付いた末永が柚布子にビールを注いだ。

「すまんな、あまり無理するな」
末永はビールを注ぎなが小声で話し掛けた。 ビールをグラス中ほどまで注ぐと柚布子はコップを少し持ち上げた。 これ以上は注いで欲しくないという合図だ。 末永がビール瓶を自分の膳に置くと、柚布子がそれを取って末永に翳した。 末永のグラスも空いていたのだ。

「まだ、大丈夫です」
柚布子も小声で応えた。 実際はアルコールのない水分が欲しいところだが、見栄を張ることも癖になっていた。
「それに、今日はお見合いですから」
柚布子は末永をからかった。
「もう、また、からかうんだから」
柚布子は末永の困惑している表情を見て自然と笑顔になった。


柚布子と末永の会話は園田には聞こえないが、阿吽の呼吸で会話しているように見えて園田は嫉妬を覚えていた。 確かに柚布子がグラスを持ち上げた瞬間から末永のグラスにビールを注いでその合間に会話している一連の流れは自然で微笑ましくも見える光景であった。

「よう、お二人さん、本当は社内不倫の関係なんじゃないの?」
突然、園田が言い放った。 一同は呆気に取られた顔で柚布子と末永を見た。 しかし、磯貝は柚布子と仕事付き合いがあり柚布子の性格をある程度知っている。 だから柚布子が末永をからかったのだと分かっていたが、それを一同に説明出来ない分笑い顔になった。

「磯貝さんの様子では、そんな関係ではなさそうだよ」
山田が救援の言葉を挟んだ。 もっとも山田にとってもそんな関係の女性であっては困るし、仮にそうであったとしても自分の会社ではそういう素振りはして欲しくないという願望があった。

「これは部長、意地悪な冗談ですね」
末永はビール瓶を持つと膳の脇から正面の園田の膳の前へ行き胡坐を掻いて、ビール瓶を翳した。
「部長も、ビールを注ぎに来ないからって冗談キツイんですから、おひとつ」
末永も伊達に営業部長はしていなかった。 園田の前に座り込み、園田と山田を相手に注がれ注ぎながら話込み始めた。 話題はセクハラで解雇されるされないの下世話話になっていった。

柚布子は流石に営業部長だと関心しながら料理を口に運んでいたが、胸の支えはゲップを堪えていたので残って違和感があった。
それに加え柚布子には正座という責め苦が続いていた。 華道や茶道で慣れている女性ならいざ知らず、正座をする機会の無い柚布子にとっては責め苦以外の何者でもない。
男性は胡坐を掻いているが、女性でしかもスカートの柚布子にとっては正座でしかも前が割れないようにしていなければならない。

そんな時、柚布子の後ろに置いてある自分の鞄から着信の振動があるのに気が付いた。 掛けて来たのが誰かも確認せずに、携帯を鞄から取り出すと磯貝に目配せして部屋から廊下へと出た。

脚は辛うじて立って歩ける感覚を保っていたが、血流が一気に脚に循環し、少しでも動かすと痺れで倒れるにも倒れられない状態になった。 片手を廊下の壁について脚を動かないように支え、もう片方の手で携帯の受話釦を押した。

「はい、生田です」
「よ~う、ゆ~こー、どうだった?」
久世からの電話だった。
「今晩は、久世様」
柚布子は座敷からそう離れていないので丁寧な応対をした。
「なぁ~んだ、仕事中?」
「はい」
久世もその対応で状況を察した。
「大丈夫?」
「ありがとう、ございます」
「仕事中だったんだ、邪魔だった御免ね、また掛けるわ」
「い、いえ、打合せ中ですけど大丈夫です、丁度中座したかったので」
柚布子は小声で会話を続けようとした。
「へ~、そう~だったんだ。」

柚布子は少しずつ脚を引き摺るように動かし、宴の座敷から遠ざかるように移動した。
「それで、さぁ~、何の打合わせ?」
「え、まあ、別案件の打合わせです」
「そ~っかー、ゆうこがメインじゃないんだ、その打合わせ、中座出来るんだから」
「い、いえ、そういう訳ではないですけど、今は大丈夫です」

柚布子は母屋に近い所まで来たころで脚の痺れが取れ自由に動かせるようになていると感じた。
「打合わせの後はどうするの?」
「え? 真っ直ぐ帰りますよ」
「真っ直ぐ? 曲がって帰るんじゃないの?」
「え? どうして?」
「だって、旦那以外の誰かに逢うんじゃなかったの?」
「何、言ってるの? まあ君」
「だって、さぁ~、エッチな下着で旦那と逢うのかって聞いたら、違うって、言ってたじゃん、 だから誰かに見せたりしちゃってるのかな? って・・。」
「もう、そういう意味じゃないってば・・・、それの確認の電話なの?」
「慌てて帰って行ったからさぁ、どうしたのかな? っと思って電話したんだけど」

相変わらずセクハラ紛いの久世の言動だが、柚布子は自分を心配してくれてる事が嬉しかった。 久世は柚布子に対して人前ではSの如き仕事上の弱みを見つけ責めるが、二人きりになると優しい人に変身するのであった。 いつしか柚布子はそのペースに嵌り好意以上の感情を抱いていることを自覚していた。

柚布子が久世と電話している脇を仲居が円筒形のグラスに紫色のカクテルらしき飲み物と同じ形状のグラスにオレンジジュースをベースにした飲み物、それに焼酎のお湯割りセットらしきものを座敷へ運んでいった。

「まあ君、電話ありがとう、助かったわ」
「何? 打合わせで向かいの男がスカートの中覗いていたから?」
「もう、まあ君、酔ってるでしょ? 会社じゃないでしょ」
「いつものショットバー、柳沢にさぁ、呼び出されちゃってさ」
「・・・・」
「心配しなくてもいいよ、こっちはちゃんとやっておくから」
「御免なさい、私のことで迷惑かけて・・・」
「大丈夫、だいじょうぶ・・・ まだ打合わせに戻らなくても平気?」
「戻る、でも30分くらいしたら息が詰まりそうになるかも」
「がんばれよ、じゃ、な」
「うん、ありがとう、まあ君」
柳沢という名前で柚布子は一瞬にして酔いが醒めたように意識がはっきりした。 柚布子は久世の責めたり優しくしたりの会話をもう少し続けたいと思った。 電話を切った後に携帯の表示を見ると、不在着信3件の表示が出ていた。 どれも久世からのもので柚布子が園田達を迎えたころから定期的に掛けて来ていたものだった。
柚布子はそれを見て久世への思いが深くなっていると感じていた。
  1. 2014/11/01(土) 09:06:01|
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序破急 - 序の20 カシスオレンジ

久世からの電話があったことで柚布子は気分的に楽になったのと同時に肉体的な胸の支えがげっぷとなって解放された。 げっぷの気体が鼻からだけではなく耳からも出たのではないかという爽快感で柚布子は思わず「やだ」と呟き口を手で押さえた。

「もう少し飲めそうだわ」柚布子はげっぷが出たことでそう思ったが、視野の遠近感は少し定かでないのも感じていた。

柚布子が座敷に戻ると、末永は園田と山田、磯貝は重盛と小宮山の相手をしていて盛り上がっていた。 柚布子はその場でどうすればいいか迷っていると、末永が「ちょっと」と言って立ち上がり、柚布子の元へやって来た。

「トラブルか?」
「いいえ、仕様のことで、確認があっただけです」
「そうか、直ぐに対応が必要か?」
「いえ、休み明けの対応で了解してもらいました」
「ご苦労さん、じゃ席に戻って、料理をご馳走になりなさい」
「はい」
柚布子が自分の膳に戻ると、紫色の飲み物と、オレンジジュースのようなものが用意されていた。

「それ、ヴァイオレットフィズとかいう飲み物らしい」
園田が説明した。
「最近の若いもんの間ではそういうもんが流行りとかで、重盛が頼んだ」
柚布子は園田の説明に重盛に笑顔でお辞儀をした。 園田の方に顔は向けていない。 園田はそれが気に入らないのか機嫌が悪そうに更に
「もうひとつはカシスオレンジだ、私が頼んでおいた、気に入ってくれたら飲んでくれ」
かなり剣のある言い方であるのが柚布子にも分かったので、造り笑顔で
「有難うございます、美味しいので頂戴します」
お世辞のつもりで応えておいた。


柚布子は残っていた料理を食べていた。 料理のカテゴリーはどちらかと云うと和食である。 料理を柚布子の胃に落とすのにカクテルはベストの組み合わせではなかったが、重盛が頼んだということで無理やり飲んだ。 柚布子はバイオレットフィズが始めてであった。 甘ったるいがドライな感触もあった。 口当たりは良いが、やはりビールの方がましと思った。 しかし、この状況でビールに手を出すのは憚れたので、バイオレットフィズを飲んだ。

柚布子の箸が止まるころ次の料理が運ばれて来た。 どちらかと云うと洋食風の肉料理であった。 一同は自分の膳に戻り肉料理を食べ始めた。

柚布子は水分が欲しかった。 出来ればアルコールの無いものが欲しかった。 柚布子は園田が頼んだカシスオレンジを口にした。 肉料理なので組み合わせは悪くないが、これを飲んだら磯貝に烏龍茶を頼んでもらおうと思っていた。

飲み会でカシスオレンジは何度も飲んでいるので味は覚えていたつもりであったが、今日のカシスオレンジは顎の奥にに苦味が残ると感じた。 それは直前に飲んだヴァイオレットフィズのせいだと思った。 カシスとは違うリキュールのように感じたが、それよりオレンジの水分が欲しかったのでグラスを干した。
その様子を園田がじっと見つめていた。 その横では仲居が焼酎のお湯割りを作って、山田や末永に配っていた。 他の男性はビール一辺倒のようであった。

柚布子は園田に見つめられて姿勢を正さずには居られなかった。 席についてまだ10分は経っていないが、もう脚の痺れが始まっていた。
「その飲み物が好きなようだね、もう空になってる」
じっと見ていた園田が口を開いた。 ヴァイオレットフィズは少し残っていた。 柚布子はそれに気が付くと、慌ててそのグラスを取り口に運んで飲み干した。
「こちらの重盛さんが頼んでくれたお酒も美味しいですよ」
柚布子は重盛の方を見ながら笑顔で軽く頷いた。 何かに対抗しようとするのが柚布子の癖でもあり、欠点でもあった。

仕事上では時には機転の速い賢い女性に見えるが、外れると墓穴を掘ることもある。 柚布子は重盛に気を使ったつもりだが、園田にとっては敵対的な対応である。
「同じ物を、あのお嬢さんに」
園田は仲居にカシスオレンジの入っていたグラスを指さした。 カシスオレンジとは言わず「同じ物を」と言った時にまたニヤけた顔つきを園田はしたが、柚布子はそれが園田の癖だと思っていた。

柚布子は脚の痺れが顕著になって来たので紛らわす為に隣の磯貝のビールを腰を浮かして取り、磯貝に注ごうとした。 磯貝のグラスにはまだビールが残っていたが、構わず注いだ。 ビールを注ぎながらでも神経は脚にあった。 脚は立ち上がれる状態であった。
柚布子は立ち上り際に磯貝に
「戻ったら、私に注いでね」
そう言って重盛の方へ向かった。 足取りはまだ大丈夫と思った。 柚布子は甘ったるい口の感触を拭いたかった。 重盛と小宮山にビールの酌をし、戻って来ると磯貝がビールを注いでくれた。 それを一口喉に流し込むがいつもの爽快感はなく、悪酔いしそうな予感でそれ以上飲めなかった。

二杯目のカシスオレンジが運ばれて来た時には、膳の列は崩れ園田、山田、末永の年長組と重盛、小宮山、磯貝の若年組との座といった感じになって、その両方を柚布子は行き来した。 若年組にずっと居たかったが行き来することで胡坐の掛けない柚布子は脚を伸ばせるのであった。 口当たりに慣れたのか園田の注文するカシスオレンジを更に一杯飲んでいた。 そんな最中、柚布子の鞄から振動音が聞こえた。

柚布子は急いで鞄から携帯を取り座敷の外へと向かった。 柚布子は受話釦を押して廊下まで出るのにスローモーションでも見ているように長く感じた。
母屋に一番近い部屋の辺りまで来ていた。 視界もややぼやけて、脚も痺れていた。
「はい、生田です」
柚布子は最初に「まあ君」と言いそうになったのを堪えた。 久世からの電話に違いないと思ったから着信番号も確認しなかった。
「お仕事中申し訳ありません、遊佐です」
「あ、遊佐様、今晩は」
「すいません、久世より連絡の時間を指定されていたのですが、遅れてしまいました」
「あ、いいえ」
柚布子はあれから30分後に久世から電話があることを期待していた。 しかし、遊佐の説明で自分に代わりに遊佐に電話を掛けさせたのだと理解した。
「例の仕様はこちらで纏めさせて頂きますので、それを連絡するようにとのことでした」
「いいえ、わざわざご丁寧に有難うございます、それで久世さんは」
「あ、外からでした、取引先の方とご一緒かと」
遊佐の声急に元気がなくなって小さくなった。
「そうですか・・・」
「あの、」
「はい」
「いえ、それではお伝えしましたので、気をつけてお帰り下さい」
「ありがとうございます」
「失礼します」
柚布子は久世本人からではなかったので少し落胆したが、遊佐を使ってまで中座出来るようにしてくれたことが嬉しかった。

柚布子が座敷に戻ろうと踵を返したその時、中年の男性とぶつかり廊下に尻餅をつくように崩れようとしていた。
  1. 2014/11/01(土) 09:07:23|
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序破急 - 序の21 指導

柚布子が尻餅をつくように腰砕けになった瞬間、ぶつかった相手の男が右手で柚布子の腕を掴み、左手で腰を抱え支えた。

ぶつかった男は園田。

園田は柚布子の腰を抱えた腕を引き寄せ自分の腰に密着させた。 柚布子は咄嗟に上体だけは園田から遠ざけた。

「危ないなぁ~、大丈夫ですか?」
「は、はい、すいません」
柚布子は右手で園田の腕を掴み作用点のように腕を伸ばし園田の腕を自分の腰から遠ざけ体勢を整えた。

「あ、いや、これは失礼、倒れそうだったので」
園田はニヤつきながらそう言うと、右手を離し柚布子と完全に離れた。 しかし、柚布子はぶつかった衝撃が引き金になったのか立っているのが辛いくらい酔い始めていると感じていた。

「私の足音にも気付かずに夢中で電話する相手ですか」
柚布子は背後の気配に気付かずに電話していたことを不覚に思ったが、遅かった。 SI会社とはライバル関係にある会社の遊佐と話していたのである。 しかも席を外したとはいえSI会社の宴席の場である。 園田がそれを見逃す訳がなかった。

「どういうつもりかね?」
園田の言葉は穏やかで座敷までは聞こえない大きさであるが、目が威圧的であった。
「い、いえ、プライベートなことです」
「そ~でしたか、確か先ほどの小宮山達のところの話では付き合ってる方は居ないと・・」
「い、いえそういう関係の人ではありません」
「は~ん、そういう関係の人は居るんだ・・・小宮山が、がっかりするなぁ」
「は?」
柚布子は園田が小宮山達と話していた内容を聞いていたことに畏怖を感じた。

「こういう場のご経験はあまりないようだね」
「い、いえ・・・は、はい」
「うち流のしきたりもあるし、色々覚えないとね」
「は、はい、よろしくご指導下さい」
「指導ね・・・そうね指導しないといけないみたいだね」
園田は陰湿に笑みを浮かべた。 柚布子の悪い癖がまた出てしまった。 今時の若い女性なら黙って俯いているだけでこの場を凌いだかも知れない。


園田は二人の立っている前の部屋の扉を手で示して案内するような仕草をした。

「じゃ、さっそく指導しようか、悪いところは直ぐ直した方が覚えるからね」
園田は柚布子の肩に手を伸ばし、肩を押すように部屋へと導いた。
「今日の君の悪かったとこから教えようね」
柚布子はそう言われて断る訳には行かなかったし、初めての得意先の慣習を知ることが出来るチャンスだと楽観的に断らない理由を見つけた。 そこの習慣を知らなければ商売が出来ないという時代ではない、他の女性なら断る理由を必死になって探したであろう。 しかし柚布子はそうしなかった。

柚布子は自分の思考力が落ちているかも知れないと思った。 一生懸命に状況を把握して判断しようとしている自分と、もうどうでもいいと思う自分が交互に入れ替わっていた。 それだけ酔いがまわり始めているからだと自分なりに解釈していた。

柚布子は酔いのせいにすることでもうひとつのまともな自分を押しのけて、園田の言いなりになることに傾倒していった。 園田の目を最初に見た時に何か逆らえないものがあると直感していた。

「じゃ、ここに正座してごらん」
園田の陰湿な声が柚布子の耳元を擽った。
園田は柚布子に正座を命令すると、部屋の照明をつけ、座敷の奥に胡坐を掻いて座った。

「そのまま、こちらに来なさい」
園田の次の命令だ。
「両方の掌を握って拳を作りなさい、そしてその拳で身体を浮かせるように」
スカートの裾から柚布子の手が離れると太腿の合わさった奥の逆三角形の部分が再び園田の視界に捉えられた。

柚布子は園田の視線が膝小僧辺りにあると思った。 さらにその視線はスカートの奥に向いていることも感じていた。 今、身だしなみとして隠さなくてはならないスカートの奥を目の前の初めて会った男に晒しているという被虐を不快に感じていない自分がいることを柚布子は知った。

「視線を下に落とさない」
園田のやや厳しい声が飛び、さらに、
「腕は両脇を締めて、拳は身体から離れないところで畳について、そのまま身体を前に出しなさい」
柚布子は言われた通りの動きをした。
柚布子が前に進むにつれてスカートが摺り上がり、園田の視界の逆三角形は次第に大きく、はっきり見えるようになった。

園田はその光景に予想以上に悦んだ。 名刺交換時には単にスカートの奥がチラ見えしただけだった。 しかし、今はスカートが摺り上がると太腿辺りのストッキングの模様はフェイクのガーター模様であるのが分かった。 本物のガータ程の色気さはないが、唯のパンストの奥を想像していた園田にとっては予想外の成果であった。

柚布子は間隔が短くなった脚の痺れと、思考力の維持との二つと戦っていたのでスカートがどういう状況なのかまで気を配れなかった。

「君は肩が傾いているね」
園田はそういうと、立ち上がって柚布子の元へとやって来た。
園田は柚布子の両肩に手を置くと力を入れて押した。
「うっ」
柚布子の声が微かに漏れた。 園田に押されたことにより脚がさらに圧迫されて痛みを感じたからである。 園田は手の力を緩めると肩を撫で始めた。
「もっと、背筋を伸ばして」
言われるままに背筋を伸ばすと脚に重圧が掛かった。 柚布子は脚の感覚が無くなるのを感じていた。

園田は撫でていた手を徐徐に肩から胸へと進めていた。
「これから、お望み通り指導しましょう」
柚布子の耳元で園田が囁いた。 柚布子も大人である。 何の指導なのかとは聞かない。 聞いたとしてもはぐらかされるだけである。 明らかにセクハラである。
しかし、問題はそう主張した場合に自分の立場がどうなるかである。 柚布子は「いつかこの男に抱かれるかもしれない」と、自然に思った。 そして、その思いを必死に掻き消そうと努力している部分がまだ残されていた。

園田に抱かれる。 自分の白い肢体に園田の身体が重なる。 柚布子の脳裏にその光景がサブリミナルのように一瞬浮かんで消えた。 それを掻き消そうとするればするほどその光景が挿入されて来る。
「だめ、他のことを考えないと」と、柚布子は心で呟いた。


「こ、これは、何の指導になるのでしょうか?」
柚布子はこの時ばかりは慎重に言葉を選んだ。
「ん、これはね、こういう料亭で女性がどう立ち振る舞うかを教えようとね」
そう園田が答えると、園田の右手は器用に柚布子のブラウウスの一番上の釦を外した。
そして、ブラウスの襟元から園田の手が入りそうになったその時、 咄嗟に柚布子の両手が胸元を押さえた。

「こ、これって、セクハラになりますよ」
柚布子は思い切って切り出した。
「誰がそれを信じる?」
園田はそう言うとさらに続けた。
「この状況で、君が私を誘わなかったと私に付いた弁護士が信じるかね?」
確かに敏腕弁護士なら法廷でそう切り返すかも知れない。 園田のやろうとしている行為はセクハラ以外の何物でもないが、この場に柚布子と園田が二人きりという状況から柚布子も納得の上での行為と主張するかも知れない。

園田は柚布子の脇に腰を降ろすと片方の手を膝から腿へと進めた。 胸元を阻止していた手のうち片方の手でスカートの中まで入るのを防ごうと園田の手を掴んだ。
しかし、園田の手ははお構いなしに奥へと進む勢いである。
「声、出しますよ」
「・・・ 出してごらんなさい」
園田は柚布子の首筋にキスする位近づけて、不敵に囁いた。

「みんなが、ここにやって来てこの光景を見たら何て言うかな?」
「・・・・」
「私は、『この女、私を誘惑しおって』と弁解するが、いいかな?」
「・・・」
園田はスカートの中への進入を続けると共に胸への進入も開始した。 力の差からすれば柚布子の阻止行動なのど他愛のないもであった。 しかし、園田も強引に侵入するのではなく、様子を見るように力を加えていた。 柚布子もありったけの力でこれを阻止するのではなくズルズルと侵入を許していた。

柚布子は諦めたように目を閉じた。
  1. 2014/11/01(土) 09:08:51|
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序破急 - 序の22 狩野派の掛け軸

「ほ、本当に声出しますよ」
「どうぞ・・・」
「出しますから」
柚布子の両手に力が一瞬入った。 その瞬間を待っていたかのように園田の両手は柚布子から離れ、園田は立ち上がった。

柚布子は出そうとしていた声を飲み込んだ。

「それでいいのですよ」
「・・・」
柚布子は呆気に取られた。
「こういう場で迫られても、毅然とした態度を示せるか、試したんですよ」
「・・・」
「私は会社で一番の紳士だが、そうでない者も残念ながら居る」
山田は更に続けた。
「そんな者に君が会った時に毅然としておればお互いの悲劇が防げるからね」
園田の説明はもっともだとも思うが、その顔つきから園田を信じることを柚布子は出来なかった。 それでも、取り合えず危険は回避されたと思った。

「君を試して申し訳なかった」
「い、いいえ」
柚布子はやっとそれだけ答えた。
「さあ、皆のところに戻りましょう」
園田が手を出したので、これは断ってはいけないと思い、その手を掴んで立ち上がろうとした。 しかし、正座の姿勢から片膝を立ててもう片方の膝を伸ばそうと先に立てた膝に力をいれたその瞬間、柚布子は脚に感覚がないことに気が付いた。

柚布子の重心は臀部に寄っていた。 脚に力が入らない状態では重力の法則に従う他はなく、尻餅を突く格好で後ろに倒れるのと同時に脚は重しから開放されるかのように伸びていった。
柚布子は園田の手を離そうと手の力を抜いたが手は離れず、園田との距離は柚布子が後ろに倒れるより早く縮まって行った。 相対的に見れば園田が迫っていることになる。

柚布子の臀部が畳に着くと園田の重さで背中から畳に仰向けに倒れた。 柚布子の上体には園田の上体が被さっていた。

辛うじて園田の顔を正面で受けることはなく首筋辺りに園田の顔があった。 柚布子はその顔とは反対側に自分の顔を向け、状況把握に努めた。 脚は血流が一気に循環しているせいか刺激を与えるとむず痒い感覚を発生させていた。 その両脚の間に園田の身体があった。

むず痒い感覚は脚全体に広がろうとしていた。 それは園田が腰を動かし柚布子の脚を広げようとしているからだ。 やがて柚布子の脚は完全に開かれ、園田の股間と柚布子の下腹部が密着する体勢になった。

「やっぱり、この男に犯される」柚布子は再び被虐的な妄想をしてしまった。 それは、園田の腰は微妙に動いて柚布子の下腹部に刺激を与えていたからかも知れない。

柚布子は被虐的な想像をするということはもしかしたら、自分がそれを望んでいるのでは? と、冷静に分析する自分がいることに驚いた。 そんな柚布子の分析にはお構い無しに園田の腰の動きは大きくなり、柚布子が下腹部に意識を集中させると、園田の股間が誇張し始めているのが分かった。

柚布子は大きく息を吸い込み、両腕で園田の身体を押し上げようとするよりも早く園田は自ら上体を起こした。 柚布子はまたも気勢を殺がれた格好になった。

園田は上体は柚布子から離したが、腰は密着させたままであった。 その腰をゆっくり離そうと、柚布子の腿に触れた。
「あ、あん」
柚布子の喘ぎとも思える声が漏れた。
「おや? どうしました?」
「あ、脚が・・・」

園田は片手で自分の上体を支え、もう一方の手で柚布子の膝から腿にかけて撫で上げた。
「あ、だ、だめ」
柚布子はむず痒い痺れに堪えていた。 血流が一気に駆け巡るが故に起こる現象で、じっとさえしていれば問題ないが、刺激を与える事で刺激は何倍にも膨らむ。

「お、お願い、触らないで」
園田の身体はいつの間にか柚布子の脚の間から外に出ていて、園田の手は柚布子の脚全体を撫で上げることが出来る体勢になっていた。
「脚の痺れをほぐしてあげましょう」
「あ、い、いや」
柚布子は艶かしいとも思える声を漏らした。

柚布子は脚に力を入れられなかった。 だが、上体は動かせた。 その上体を起こし、自分で脚を摩り、痺れを取ろうとした。 しかし、園田の左手がそれを許さなかった。

園田は左手で柚布子が起き上がるのを抑えるのと同時に右手で柚布子の両脚を膝から腿へと摩り上げた。 園田の視界には柚布子の脚の付け根までしっかりと、しかも鮮明に映し出されていた。

微かに黒いストッキングの下の白い下着には黒の縁取りがありそれが色気を演出していた。 その縁取りを追うと臍の真下辺りの下着との境には縁取り以外の黒い細かなものが見えていた。 状況からそれが何なのかハッキリ見えなくとも察することが出来る。 老眼の始まった園田の目にもそれが柚布子の陰毛であることは容易に判断出来た。 それは下着のクロッチ付近の縁にも見られた。

柚布子は睡魔と園田の手が脚に触れることで感じる痺れと戦っていた。 こんな大変な時に何で睡魔が・・・ そう思うと何時もより多くアルコールを飲んでいると思った。 それもいつもより速いピッチだった。 睡魔が出てくるのも仕方がないことであった。
しかし、この状況を脱する方法はいくらでもあるハズである。

柚布子は敢えてそこに身を置いていた。 園田の手が腿を摩り、次第に脚の付け根に迫ろうとしているのを意識しながら。
もう直ぐ園田の手は楕円を描きながら柚布子の脚の付け根に触れようとしていた。

園田には左手に感じるずの柚布子の両手の抵抗力が消えているのが分かった。 園田はゆっくりその左手を柚布子の鳩尾辺りに置いて上へと摩り始めた。 柚布子の両手は園田の左手を掴んでいるので他の者が見れば柚布子が園田の左手を導いているようにも見える。

園田が脚を少し開かせようと柚布子の右脚を引いた時に左脚が自然と脚を閉じる方向に動いた。 柚布子も園田もそのことは脚の痺れが取れて自力で動かせる状態になっていることを分からせた。
しかし、柚布子は起き上がる様子も見せずに園田に身を任せていた。 閉じた脚は再び園田の手が押し開けた。 今度は反動で戻ることはなく開いた状態を保とうとしているようにも見えた。

園田の左手はブラウスの上ではあるが、柚布子の胸の膨らみに達していた。 まさに園田の掌がその頂を覆い被さろうとしているが、柚布子の手には力が入らない。 同時に右手は脚の付け根をバイパスし、臍の方へこれまでの速度とは異なり無駄なく進みパンストの縁を指がこじ開けようとしていた。

「お願いです」
柚布子はようやく声をだした。 そして、その瞳は潤みはじめていた。
脳は覚醒しているのに、身体は酔いのせいで重い。 何でこうなるのか、この雰囲気に何故逆らえないのか、柚布子は自然と涙が出そうになっていた。
「や・め・て、下さい」
声は尻すぼみに消え入りそうであった。

「ここまでくれば、いつでも堕せる」 園田はそう確信した。 「急ぐことはない、今は山田達もいる」 そう、園田が思うのも無理はない。 初対面でここまで従順になったのだから。 逆にこれ以上のことをすれば、今、山田達に知られることになり園田はこの会社も追われることになるからだ。

園田はいくぶん不満の表情を見せたが、立ち上がり柚布子の腕を取り引き上げた。 柚布子はそれに釣られるように立ち上がり、髪や服装を手で払い整えた。

そして園田が部屋の電気を消し、二人は無言で部屋を出た。

園田が先に部屋をでると「おう」と声を上げた。
「どうかしたんですか?」
部屋の出口に小宮山が居た。 その小宮山が園田に聞いた。 小宮山は訝しげに柚布子の顔を覗くと柚布子と目が合った。 柚布子は顔を下に落とし、園田の後ろを追い越して先に宴席のある部屋へと向かった。

「模写だが、狩野派の掛け軸があるので、それを説明していた」
「そうですか」
園田がそう説明すると、会社の上下関係から小宮山はそれ以上追及は出来ない。 園田も柚布子に続いて戻ると、小宮山は部屋の扉を開け顔を差し込んだ。


部屋の中は暗いが床の間があるようには見えなかった。「おい、小宮山」 園田の声に小宮山は園田の後を追った。 それが、『構うな』という暗黙の命令であることを小宮山は心得ていた。
  1. 2014/11/01(土) 09:10:03|
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序破急 - 序の23 コンパニオン

柚布子は自分たちの座敷に入る前にもう一度身だしなみを確認した。 ブラウスの釦が一つ外れていたのを今更気が付いて狼狽した。 釦の外れた姿を小宮山が見ていたに違いないからである。
柚布子はSI会社の担当を外して欲しいとこの時思った。

「大丈夫ですか?」
座敷に戻ると、磯貝が心配そうに声を掛けた。 柚布子の先程とは一変した様子を他の男性も気になったが、山田や重盛は柚布子とは初対面なので聞くことを憚った。
柚布子は末永とは年中行事の宴席で顔を合わせる程度だが、磯貝とは仕事仲間同士での飲み会で一緒だったりするので、ある程度柚布子の酒量は知っていた。 磯貝には柚布子がいつもより多く飲んでいることと、いつもより酔っていることが直ぐに分かった。

「ちょっと、化粧室に行ってくるわ」
柚布子は自分の鞄を手に取り磯貝にそう言うと、園田と小宮山が部屋に入ってくるのと入れ替わりに出て行き、母屋近くの化粧室へと向かった。 男達は柚布子が出て行ったことで卑猥な話に興じ始めた。
園田は努めて柚布子の話題に触れない方向に話を持っていった。

柚布子は再び廊下を母屋の方へ向かった。 母屋の近くには大きめの女性用化粧室があることを事前に仲居に聞いて知っていたからである。 途中、先程まで園田と居た部屋の前を通る時、口惜しい気持ちが沸いた。 もう、二度とこの部屋の前は通りたくないと思ったが、少なくともあと二回は通らなくてはならない。
だが、柚布子はこの部屋の前を二度と通らない事を今は知らない。

柚布子は化粧室から戻ったら、末永に先に帰宅する許可を貰おうと決めた。 もうこれ以上尋常では居られないと思ったからである。

柚布子が化粧室へ向かう為廊下の突き当たりを右に曲がろうとすると、左から女性が小走りにやって来た。 その女性は柚布子には目もくれずロビーの方へ向かって行った。
背丈、髪型も柚布子と似ていた。 スーツも柚布子のようにビジネス向けでは無いが同じようなグレーのしかもミニを着ていた。

その女性は、もう一つこの別邸で開かれていた宴会に呼ばれていたコンパニオンの一人である。


柚布子は化粧室に入り用を済ませた後、洗面所の鏡に向い自分の顔を見つめていた。 鏡に写った顔は目の周りが微かに赤味を帯びて、酔っているのが分かった。

「すいませ~ん」
柚布子の耳に先程の女性らしき声が聞こえてきた。 先程目の前を小走りで通った女性に違いない。
「あのぉ、煙草がロビーの販売機に・・・」
宴会の客から頼まれた銘柄がロビーの自動販売機に無かったのであろう。
「え~、そ~なの? カードあります?」
帳場とのやり取りの後、再び小走りのような足音がして、その音は一瞬止まって下駄の音に
変わった。 女性はロビーに向かい別邸の下駄を突っ掛けて外へ出ていったようであった。 恐らく、外の自動販売機にでも煙草を買いに行ったのであろう。


柚布子がメイクを軽く直し、化粧室を出て自分たちの座敷に戻る為に廊下を気が進まぬ足取りでを歩いていた。
正面から別の宴会の男性客らしき者が廊下の正面を曲がってやってくるのが見えた。 柚布子はこういう場なので見ず知らずの人の顔を見るのも良くないし、自分もあまり見られたくないので俯いてすれ違おうとした。

あと数歩で柚布子達の座敷へ曲がる所であった。 まさに男が直前に来た時、柚布子の視界に男が拳を作り、反動を付けて柚布子の腹部に迫ってくるのが見えた。 柚布子は酔ってはいたが危機感を感じた。 しかし、それは遅かった。

腹部には激痛が走ったに違いないが、記憶から痛みが残っていなかった。 残っていた記憶は上下逆さまの映像で、自分の鞄が廊下に置き去りにされ曲がるはずの廊下が過ぎていく光景であった。 それも徐徐に暗くなって、やがて音も聞こえなくなった。

  1. 2014/11/01(土) 09:11:02|
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序破急 - 序の24 別邸の仲居 ふさ代

ふさ代は弥勒亭別邸の仲居として働いている。 別邸に勤めて5年目の47歳。 中堅どころで、もう少しで仲居頭になれるだけの経験がある。 別邸に仲居頭は現在二人居る。 専業の仲居頭は一人でもう一人の仲居頭や仲居の殆どが兼業、つまりパート従業員である。 この種の店では大して特別な事でもない。

ふさ代も兼業で昼間はコンビニで混む時間帯だけ働き、夜は別邸で働いている。 以前はスーパーのレジ打ちをしていたが、忙しい割りに給金は良くなかった。 それに比べると別邸の時間給は別格と言ってよい。 但し、別格なのにはそれなりに訳があった。

それは口が堅い事である。 この別邸ではそれが必須条件である。 見聞きしたことはその場だけの事とし、一歩そこを離れれば忘れなくてはならない。 従って、ある程度信頼されるまで上客の場には呼ばれない。

「今日の客は・・・」のような会話を仲居連中の間ですれば口が軽いと思われ、次からは声が掛からなくなり、やがて辞めていくのである。 しかし、トラブルは直ぐに仲居頭や女将に報告して対処しなくてはならない。 その兼ね合いが難しい。 客同士の揉め事に首を突っ込んではならないが、喧嘩沙汰にはならないようにしなくてはならない。

この日の別邸の予約は一件だけであることが前日に告げられていて、ふさ代に出勤の予定は無かった。 しかし、夕方に呼び出しが掛かった。 ふさ代は家族の夕食を急いで作り別邸に向かった。 ふさ代の家族も別邸から信頼され始めた頃から呼び出しが掛かることがあったので慣れていた。

出勤予定の無い仲居にはその日の客情報は一切知らせれない。 ふさ代は出勤してその日の仲居達の面子を見て客筋が分かるようになっていた。 それは仲居達の中に風俗店経験者が居ることである。 勿論、別邸が風俗店のようなことをする訳ではない。 そういう場に慣れている仲居が必要ということである。

この日、一件急な予約が夕方近くに入った。 予約主はSI会社の園田という得意先であった事と人数がそう大勢ではないので、別邸の女将は予約を受けた。 ふさ代は中堅どころということもあり、先に予約の入っていた方に付くことになった。 ふさ代の他には仲居頭と二人の風俗経験のある仲居が担当することになった。

ふさ代は今日の仕事は楽だと思っていた。 それは予約の客がコンパニオンを呼んでいたからである。 コンパニオンが居る場合は料理を運んで、飲み物を何度か追加するとコンパニオンと乱れることが多い。 そうなるとふさ代は宴会がお開になるまで用はない。 用があってもコンパニオンと乱れている最中は風俗経験者が担当することが多いからである。

ふさ代は慌しく着替えて準備している時に女将から今日の客筋を聞いていた。 何度か来ている客で今日のような宴会を定期的に仲間内でやっているような客であった。
その話の中でコンパニオンが一人都合が悪くなって、別に来るかも知れないと聞いていた。



予約客の到着はだいたいバラバラに来るので部屋への案内が必ずしも担当の仲居がするとは限らない。

タクシーで一組の男女がやって来た。 ふさ代が車寄せで迎えた。 人目で自分の担当ではないと分かった。 また、女性の方はいつも来るコンパニオンの服装に似ていた。 強いて言えばスカートが短くないのが違っているくらいに見えた。 ふさ代は一応、担当の仲居頭にその女性のことを告げた。 たまに自前でコンパニオンみたいな女性を別邸に無断で同伴する客がいるからである。

仲居頭が先に到着していた幹事にその女性のことを確認したら、なんとその女性の歓迎会みたいなものだと聞かされた。 それを知らされたふさ代はバツが悪かったが、予約がSI会社の園田ということなので、また園田に献上される女なのかも知れないと思った。 ふさ代は女の身体を売り物にすることに以前は嫌悪を感じていたが、自分も生活の為とそういう光景を見て見ぬフリをしていた。 そして、こういう場で女が男に堕ちるところを垣間見るのが好きになっていた。 それは他の仲居も同じであった。

やがて、ふさ代の担当の客も集まり、コンパニオンも到着して宴会が始まった。 ふさ代はもう一つの予約客のことなど忘れて配膳に忙しく動いていた。


ふさ代の担当する宴会は男女の嬌声が上がり始め盛り上がってきた。 そうなるとふさ代の出る幕はない。 せいぜい、食器類を壊されないようにする程度である。 だが、もう一つの大事な仕事がある。 それは見回りである。 特に今回のようにコンパニオンと乱れるような場合は宴会が行われている離れ以外の人に見られないようにする事である。 酔った客が他の宴席に紛れないようにすることも当然である。

今日は二組しか宴会は行われていないので見張りも楽であった。 ふさ代の客は男性が6人、常連は4名でふさ代には見覚えがあった。 それに比べコンパニオンは5名であった。 都合で1名来られなかったようだ。

ふさ代は人数を数えた。 男性が5名で女性が4名、 男女一組足りない。 大方何処かの離れの空き部屋に入り込んでいるのであろうと推測した。 こういう宴会にはよくあることであった。 ふさ代は離れの他の部屋を見回らなかった。 それは長年の勘で楽しんでいたカップルが仲居が通ることで盛り下がってしまうことがあるからである。

ふさ代は他の仲居に宴席を任せ母屋へ一旦戻ることにした。
母屋の外れまで来た時に空き部屋で物音がした。 ふさ代は勘でその音が何なのか察した。 そして部屋の前で聞き耳を立てると衣擦れの音がしてくる。 いつもなら、ここは離れではないので、今のうちに注意して、離れに行って貰のである。
しかし、他に宴会は一組で別の離れということもあり仲居頭か女将に判断を仰ぐことにした。

その部屋を離れ廊下を帳場へと戻ると、ふさ代はロビーの方から小走りにやってくるコンパニオンを見て首を傾けた。 コンパニオンは煙草の箱をふさ代に向かって振りながらやって来た。
「煙草買ってきたのぉ~」
そう、ふさ代に言うと座敷の方へ消えていった。

ふさ代は直ぐに計算が合わないのに気付いた。 先程の部屋の物音は一人の音だったのか? ふさ代は確かめにその部屋へと戻った。

部屋の中からは微かに人の気配がした。 ふさ代は手馴れた手付きで部屋の入り口近くの引き戸を覗ける程度に開けた。 ふさ代はたまに覗いているが、今日は少し心臓がドキドキしていた。

ふさ代の目に最初に飛び込んで来たのは脱ぎ捨てられてた上着である。 部屋の中の照明は点けられていないので、非常灯の灯りだけに照らされていて殆どシルエットと言っていい。
そして、顔を捩って奥を覗くと男が座っていて女が寝かされていた。 勿論、両者が誰なの分からない。

男は女の胸辺りを手で探っているように見えた。
一体誰なのか。 ふさ代は消去法で考えた。 男性の顔は確認出来ていないが、女性はコンパニオン全てが離れの宴席に今はいる。
と、いうことは今日の客で女性と言えば残るのは一人のみであった。

ふさ代は胸の高鳴なりを感じながら更に引き戸を開け、外の光が入るようにして目を凝らした。 シルエットがだんだん実像に近くなっていった。

やっぱり、あの女だ。 ふさ代は心でそう呟いた
  1. 2014/11/01(土) 09:11:58|
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序破急 - 序の25 仲居の密かな楽しみ

弥勒亭別邸の仲居は口が堅くなくてはならない。 ここでの事が外に知られないで、ここだけで終わることにこの別邸の価値がある。 それだけに、見てはならないことを仲居達は目にしてしまうことがある。

そういう事が多いと逆にそれが密かな愉しみになってくる。
ふさ代の目の前でまさにそれが始まろうとしていた。 今夜、急な呼び出しに応じた褒美のようにふさ代には思えた。

女はふさ代が部屋に案内した客で、ふさ代がコンパニオンと間違えた女に違いない。 意識はしていないが心の奥底には、間違えたことで少しの逆恨みの感情が芽生えていた。 だから、このまま傍観者で居ようとふさ代は思った。 どうせ園田に献上される女だ。 と、いうことは男は園田か? だが、シルエットは園田よりかなり若く見えた。

ふさ代は、もう一方の予約の客がSI会社の園田で、しかも、持て成される側という事を事前に知らされていた。 「園田に献上する前に連れの男が愉しのんでいるのだろう」はたまた「園田が部下に女をその気にさせて最後は園田が頂いてしまう」 ふさ代の妄想は膨らんだ。

ふさ代は女が大人しいのは合意の上だからと勝手に思い込んでいた。
そして、更に引き戸を開け覗き込んだ。 幸運なことに男は体勢を少し変えた。 女を扱い易いようにしたのだろう。 そのことがふさ代の所から両者が良く見える角度になった。



- ふさ代は暗がりで見えない部分を想像で補った -

男は寝かされている女の胸の辺りで両手を揉んでいるよな仕草をした。 ブラウスの釦を外しているようだ。 釦を全部外すとスカートの中からブラウスの裾を出してはだけさせた。
女の身体が寝返りでも打つかのように少し捩れた。 男は手を女の身体から離し様子を窺った。

女は鳩尾辺りが痛いのか手が無意識に臍の辺りを摩った。
男は女が起きないことに安心すると再び胸へと手を置きゆっくり露になったブラジャーの下辺りを女が起きないか顔色を見ながら摩った。 女が起きる様子が無いと判断したのかブラジャーの下から手を入れ片方ずつ上へと押し上げた。

女の乳房が非常灯の灯りで緑色に染まった。 男はその両方の膨らみを同時に外側から円を描くように摩り、掌で挟むように揉みはじめた。 女の吐息が零れた。
暗がりの中でも男にはお椀を伏せたような乳房の頂上に控えめに存在していた乳首が主張するように目立って来たのが分かった。

男は親指でその乳首を押した。 硬くなっていた。
男は両方の乳首を親指と中指で挟み揉んだ。 女の背中が少し仰け反ったように動いた。 男はまた起きるのではと思い両手を胸から離した。 しかし、女は再び背中を畳に落して動かなくなった。
男は掌で両方の乳房を揉みしだき、時より乳首をつまんだ。 女は乳首を摘まれる度に吐息を零した。

男は女の反応を確かめるように乳房と乳首を丹念に愛撫した。 男は女の乳首の硬さに満足していた。 コリコリと充分硬くなって指で弄ぶのを楽しんだ。 女はその愛撫に耐えかねて吐息が喘ぎに変わろうとしていた。 その女の表情を男はじっと満足げに眺め女の唇へ自分の唇を重ねた。

男が唇を重ねると女の唇は硬く閉ざされた。 男の舌の侵入を拒んでいた。 だが、男が片方の乳首を揉み上げると唇は割れ、男の舌は女の舌と接触した。
男は女の舌を執拗に突いて刺激した。 すると、女の舌は男の舌に絡まって来た。 一度絡まると、激しく女の舌は男の舌を追い回しているよに見えた。 男が舌を吸うと女もそれに応えて吸い返した。

息さえ音をたてないように注意深く呼吸していたが、今は互いに舌を求める度に息継ぎの声が漏れるまでになって来ていた。
男が女の唇から離れると、女は虚ろな目を開けた。 その瞳に非常灯の緑色が反射していた。 女は茫然自失の表情を示していたが、急に緊迫した表情になった。 男の手がスカートの中に入って行ったからである。

男がスカートの中に手を入れると女がスカートの上からそれを両手で押さえた。 しかし、男の両手は女の臍の下辺りのパンストの淵に指を入れると、臀部に向かって深く差込み、男の両手が臀部に達した頃には掌がパンストの中にすっぽり入り、その中の下着に指の半分は入っていた。

男は果物の皮を剥くようにパンストとパンティーを降ろした。 女の手はスカートの上にあったので、それを阻止出来なかった。 男は女の膝辺りまでそれを下ろした。 女は脱がされた股間をスカートの上から両手で押さえていた。

男はパンストと下着を下ろした片方の手を内腿に這わせ、そのまま躊躇することなく股間へと向かった。 そして、もう片方の手で女の手を退けると股間を弄った。 女の手から力が抜けと身体の両脇に落ちた。

男は股間に達した手の中指を伸ばし、上下に動かしながら女のヴァギナを捜し当て、それをこじ開けた。 そこは既に暑く滑っていたので、両腿は閉じられていても容易に動かし膣口に侵入することが出来た。

男は片手で膣口の中を弄び、もう片方の手で乳房と乳首を弄んだ。 そして女が感じて喘ぎ始めると、乳房を摘み乳首に唇を寄せそれにしゃぶり付いた。 男の舌がコリコリと乳首を転がすと膣口が連動して収縮したようだった。 女は再び目を閉じて声量は小さいが喘ぎ始めていた。

男は口で女の胸を弄び、片手で股間を弄り、同時に自分のベルトを緩めてズボンを下げようとしていた。 男は自分のズボンを脱ぐ前に女のパンストと下着に手を掛けて、膝から下へ更に脱がそうとして手を止めた。 女も合意の行為なら心配ないが、そうでないとすると行為の後にパンストと下着を無意識の女に着せることは男には無理と判断したからである。 それでも、男は自分のペニスだけは露出される程度にズボンと下着を下した。

男の指は最初は膣口から出し入れしていただけだが、今では入れたまま膣の内壁を掻き廻していた。 男は膣に差し込んだ指を激しく動かし、女が鼻から抜けるような声で喘ぎ、その声が逝ったように途切れると乳房をゆっくり揉み上げ膣内の指を小休止させていた。 女は本気で逝くのを寸止めされているように見えた。 更に男は親指でクリトリスを押さえて刺激を与えた。 女は顔をその度に反対側へと動かし、湧き上がる快感を受け入れているようだった。 その光景が何度か繰り返されていた。

- ふさ代の想像は実像と違わなかった -



ふさ代が覗きに興じていると、後ろからそっともう一つの宴会を担当している仲居が肩を叩いた。 ふさ代は声が出そうなのを堪えて振り返った。 そしてその同僚に向かって、口に指を立て部屋の中を指差した。
同僚の仲居は中を覗きこんで「やってるのね」といった感じで顔だけ笑った。

ふさ代は同僚の仲居が持っている鞄に気付き、指差した。 仲居は廊下の方を指差した。「廊下に落ちていたの」そうジェスチャーで言ってるようであった。 ふさ代にはその鞄に見覚えがあった。 明らかに女性用と思えるトートバックで手提げ部分に小さな熊のマスコットが付けられていたのが印象的だったからである。 それは、ふさ代が部屋へ案内した女のものであった。

ふさ代は同僚の仲居とその場から少し離れ、「男性客はみんな座敷?」と聞いた。 同僚は首を縦に振って頷いた。 ふさ代は悪い勘が当ってしまったと思った。 と、その時部屋の照明が点いた。 ふさ代と同僚の仲居は咄嗟に廊下にしゃがみ込んだ。 照明は直ぐに豆電球の光に切り替わった。 そして青白い閃光が室内で一瞬光った。

ふさ代は少し焦った。 部屋の二人がもう一組の予約客同士と思ったからである。 それは女性は特定されていたことでもう一組の予約客同士と決めてしまっていたからである。 もう一組の予約客の男性が全員座敷に居るということは、部屋の男は自分の担当の客ということである。

それでも両者が同意のことであれば邪魔する方が信用に係わる。 しかし、鞄が廊下に落ちていたということは合意ではないかも知れないということである。
ふさ代は女が最初は人形のように動かなかったことを思い出した。 もしかしたら気絶させられて部屋に連れ込まれての事なのかも知れないと。 そうなれば犯罪になってしまうかも知れないのである。 しかも別の予約客との出来事である。 店としても信用問題になるかも知れない。

ふさ代は手短に同僚の仲居に説明し、女将に指示してもらうように頼んだ。 同僚の仲居は真剣な顔つきになって急いで帳場へと向かった。 その時、再び部屋の中で青白い閃光が光ったがふさ代と同僚の仲居はそれに気付かなかった。
ふさ代は二人の様子を見張るべく部屋の前に戻った。

部屋の照明が点いていることでふさ代も覗き難くなった。それでも慎重に引き戸から覗くと男は女の顔辺りに居た。 そして自分のペニスを女の口に入れようとでもしたのだろうか、それとも一旦は入れてしまったのか、ふさ代には分からないが、男はそこから膝立ちのまま脚の方へ向かった。

ふさ代は女将が来るまでに、一線を越えないでいて欲しいと思った。 ふさ代にとっては二人の人生はどうでも良いが、ふさ代の責任問題になってここを追われることが問題であった。

しかし、ふさ代の思いとは裏腹に男は着々と自分のペニスを女の膣に収めるべく行動を続けていた。 ふさ代は部屋へ踏み込めないもどかしさでいらいらしながらも、二人を覗いていた。

何度も寸止めされていた女はぐったり動かなかった。 男は女の脚の方へズボンを下した不恰好な姿で移動した。 そして、女の脚にはパンストと下着が膝上に止まっている為、男は女の両脚をオムツを換える時のように持ち上げ、その脚の下へ移動し脚を抱えるような姿勢になった。 そのことが、ふさ代からは男の背中越に女を見ることになり、女の様子が見えない位置になってしまった。
ふさ代は女将が早く来るように祈った。

「間に合わなかったわ」ふさ代の祈りは届かなかった。
男は女の両脚を抱えたまま自分の腰を女の股間に当てがった。 そして、ゆっくり腰を送り出したのがふさ代には見えた。
  1. 2014/11/01(土) 09:13:11|
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序破急 - 序の26 別邸の女将

女将には判断する時間はない。 判断に時間を掛けていたら別邸の女将は務まらない。

女将は仲居から事情を聞くと、番頭らしき男性にハイヤーを頼み、両方の客が問題の部屋へ近寄らないように仲居を配置した。

女将は仲居からの報告を聞き終わって判断するのではなく、聞きながらオプションをいくつも策定し、話しを聞き終わった時にはオプションの優先順位が決まっているのである。 システムのプロマネをさせたら右に出る者が居ないかも知れない。 しかも結果は WIN/WIN が要求される。

この場合の一つの WIN は常連の園田達に事情を知られず宴会を無事終えること、もう一つの WIN はコンパニオンと宴会をしている常連客を犯罪者にしないで帰す事である。 しかも別邸の信用を損ねないということは既定である。

この事態に帳場には番頭一人を残し、板場の従業員を除く全員が動員された。 と、いってもそう多くはない。



「間に合わなかったわ」
男は女の両脚を抱えたまま自分の腰を女の股間に当てがった。 そして、ゆっくり腰を送り出したのがふさ代には見えた。

「はあ」
何度か男の腰が突き出された後に、男が吐息を漏らしたのがふさ代には聞こえた。
男は抱えていた女の脚を一旦降ろした。 女の脚を抱えながら自分の腰を女の股間に押し付けるには体勢に無理があるのだろう。 ふさ代は縦位置だが男のペニスが女の膣口に届いていないと思った。

男は再び女の脚を抱えると腰を女の股間に密着させようとしたが、今度は高さが合わないのか女の脚を再び降ろした。 そして、女の股間に指を入れて再び膣の中を弄った。

男はどういう体勢なら挿入出来るか考えているようだった。 女の膝にあるパンストと下着を外してしまえば女の脚は遠慮なく広げられるが、その後の始末が大変である。  

男は自分のズボンと下着を一旦元に戻すと、用を足す要領でペニスだけ出した。 それによって、男の脚は自由に広げて高さが調整出きるからである。

男は女の両脚を両手で抱え上げ、腰を女の股間に押し付けた。
ふさ代は今度こそ万事休すだと思った。 前よりも男の自由度は上がっていたからである。
しかし、何度か腰を押し付けた後に、腰を離し自らの手でペニスを扱いた。 今度は男の硬直が少し足りないのか、それとも更に増そうとしているのであろう。

片手で自分のペニスを扱くということはもう片方の腕で女の脚を抱え上げなくてはならない。 重労働である。 男が腕の力を弱めたのだろうか、女の脚が女の上体の方へ身体がくの字になるような方向に傾いた。 それによって女の股間は天井を向いた。 それと同時に女の身体全体が少し回転した。 そのことが、再びふさ代から男女の腰の辺りが見えるよになった。

男はこの体勢の方がより良い挿入方法だと気が付いた。

片腕で女の脚を抱え、もう片方の手で自分のペニスを握り、女の膣口に擦りつけた。 男はヴァギナの滑りをペニスを上下に動かすことで亀頭に塗りつけた。 後は腰を突き出して挿入するだけである。 そして男は次の動作に入る為に息を止めた。

ふさ代は背後に人の気配を感じて振り返った。 女将と数人の仲居と男性従業員がそこにはいた。 女将はふさ代に代わって引き戸から部屋の中を覗いた。 女将の目にもふさ代が見ていたものと同じ光景が見えていた。

「っうあ」
男の吐息とも喘ぎとも思える声がそこに居た者に聞こえた。
  1. 2014/11/01(土) 09:14:04|
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序破急 - 序の27 女将の才覚

柚布子は夫英生の肩に頬を摺り寄せていた。 頬を摺り寄せる相手がいることがなんてこんなに仕合せなんだろう、と思うと涙が出そうになった。 このまま夫に肩でも抱かれたら泣き出してしまうとだろう。 何故そんな気分になってしまったのか柚布子にも分からなかったが、夕べの事が原因であることは間違いなかった。

柚布子は泣いてはいけないと、ソファーから立ち上がった。

立ち上がったはいいが、その先を考えていなかた。
「ん? 柚布子、どうした?」
「あ、洗濯しなきゃって・・・」
「うん、そっか」
柚布子は咄嗟に答えたが、それが名案だと気付いて脱衣所へ向かった。

脱衣籠には夫の下着とバスタオルがが一番上になっていて、それを洗濯機に放り込んだ。 夫の下着の下には柚布子が先程シャワーに使ったバスタオルがあり、更にその下には夕べ着ていた自分のブラウス、ストッキング、下着が現れた。

それらを順番に洗濯機に放り込むが、パンティーを手に取った時に不自然に感じた。 裏返しになっていたからだ。 夕べは英生が柚布子の下着を脱がした。 それを脱衣籠に入れたのも英生だった。 裏返しになっていたということはクロッチの部分を調べたからに違いない。 

柚布子もパンティーを手に取り、クロッチ部分を指で触って調べた。 夫もそうしたのだろうか? 今は乾いているが、夫が調べた時にはそうで無かったかもしれない。 夫がそういうことをしたことを責めているのではない。 自分の妻の下着を脱がした夫なら誰でもそのくらいの事はするかも知れないからである。

柚布子が責めるべきはクロッチが知っているはずのことが自分の記憶にないことであった。
柚布子は昨夜の手打ち式の殆どに記憶が繋がったが、洗面所を出た後の記憶が未だに定かではなかった。



柚布子が気が付いた時には帳場の奥の部屋で、周りにには女将と仲居頭が数人いて自分を心配そうに見ていた。


-弥勒亭別邸-
女将は問題の部屋の前へ来ると、ふさ代に代わって中を覗いた。 そこには男が寝かされた女の両脚を揃えて片腕で抱え、女の股間に自分の腰を重ねている光景だった。 女の脚にはパンストと下着が膝のところまで下ろされていて、男が動く度に揺れていた。。

「っうあ」
男の吐息とも喘ぎとも思える声がそこに居た者に聞こえた。

女将の判断は早い、というか既にオプションが決まっていて状況に応じてオプションを実行しているに過ぎないようであった。

女将はふさ代に向かって
「どう? もう、やった? 入れたの?」
そう聞いた。 部屋の中には聞こえないが、女将の周囲に居た者には聞こえる大きさであった。
「いいえ」
ふさ代はそう答えるしたかなかった。 それは女将の顔がそう答えなさいと言ってるようだったからである。 実際、ふさ代はその行為自体を確認していないので、嘘を言ってる訳ではない。 しかし、そう答えることが自分の保身になることも分かっていた。

女将も自分でその光景を確認済であるから、わざわざ聞くこともない。 しかし、それは弥勒亭別邸の立場を女将が従業員の前で知らしめた訳である。 実際、中を覗いたのは今のところ女将とふさ代だけであるから、その他の者はそう言われればそう思うしかないのである。



「まあ、まあ、お客さんこんなところで、おふざけを・・」
女将が扉を開けて入るや、そう言いながら男の脇に立ち女の脚を持つと男は驚いたように女の身体から離れた。 男のペニスが勢いよく上を向いているのが見えた。 女将は仲居たちに目配せした。

ふさ代ともう一人の仲居が女の身体に取り付き、下着とパンストを取り合えずスカートの中まで上げ、胸をブラウスで隠し上着で覆うと外に居た男性従業員にふさ代が「お願い」と声を掛けた。
従業員らしい男は女をだっこすると仲居の案内で園田達の座敷を通らない方向へと消えていった。

「お客さん、だいぶお酒をお召しになったんですね?」
女将は男の気を殺がないような言葉を掛けた。 男は暫く呆然としていたが、萎えてきたペニスに気が付き慌ててそれをズボンの中へ収めた。

「何があったんですか?」
「・・・・」
「先程の女性が何か失礼なことでも?」
「い、いや、べつに」
「別に? なにも? 無かった?」
「あ、ああ、何も・・」
「何も無かったんですね?」
女将は詮索するような口調から、急に平常の口調に戻った。
「それは、それは、他のお客様と何かあったら大変ですからね」
「え?」
男はびっくりするよな表情をした。
「お、俺たちの、コンパ」
男はそこまで言って自分の間違いに気が付いた。
「い、いやなんでもない。」

「大丈夫ですよ、佐々木様には何も言いませんから」
佐々木とは宴会を予約した常連でこの会を首謀する者である。
「お部屋にお戻り下さいな」
そう言うと、男を座敷に送り出した。 その後をふさ代が付いて行った。
男は途中、トイレに寄り、自分のペニスを引き出した。 我慢汁がだらりと垂れいたのでトイレットペーバーで拭き取った。
「ちぇっ」
男は舌打ちしてトイレを出てた。 そこでハンカチでも探そうとした時にあることに気が付いた。 携帯電話がポケットからなくなっていた。

男は先程の部屋に戻ろうとすると、ふさ代に呼び止められた。
「携帯を落としたみたいなんだ」
そう言うと先程の部屋へ入って電気を点けた。 ふさ代も勿論、同行している。
果たして携帯は部屋の隅に落ちていた。 男は安堵したようにそれを拾いポケットにしまった。
ふさ代は携帯をあの部屋へ落としたことを不思議がらなかったし、女将にも報告することは無かった。


男は宴会の場に戻っても一人盛り上がらなかったのは言うまでもない。 おまけに、始終仲居に監視されていた。

男は自分で酌をしながら、先程の女のことを思い出していた。 男は携帯を確認したかったが、仲居が始終傍にいるので出来なかった。

そして酔えなかった。
  1. 2014/11/01(土) 09:15:09|
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序破急 - 序の28 スクリュードライバー

「あのさー、お酒ってどんなの?」
英生が脱衣所の柚布子に向かって聞いた。
脱場所では柚布子が水道の蛇口を捻り洗濯機のスタート釦を押した。 洗濯機のドラムが数回周り、水道の蛇口から勢い良く水が放出され始めた。

「なんか、言ったー?」
柚布子は脱衣所から戻ってリビングの英生に問い直した。

「うん、お酒飲まされたって言ってたけど、焼酎?」
「ちがうわ、カクテルみたいなの」
「へ~、そんなのも出るんだ。 で、どんなの?」
「うん、重盛さんからヴァイオレットフィズをご馳走になったわ」
「へ~、ずいぶん古風なカクテルだな、重盛のヤツ」
「そうなの?」
「口当たりは良いけど、結構度数高いからな。重盛のヤツ酔わせようとしたな」
「なに、言ってるの、一杯だけよ」
「そっかー、他には?」
「うん、えーと、なんだっけ、スクリュー・・・・」
そう言いかけて、口をつぐんだ。 何故、その言葉を知っているのか。 飲んだのはカシスオレンジでは無かったのか・・・・ 柚布子の記憶がまた一つ繋がろうとしていた。

「それ、スクリュードライバーだろ?」
英生が柚布子が飲み込んだ言葉を引き取って答えた。
「それ、後から効くんだよね、昔のオヤジ達がバーで女に飲ませて酔わせていたヤツだよ」
「え? そうなの?」
「何杯飲んだ?」
柚布子は英生の説明を聞いて3杯、しかもカクテルグラスではなかったことなど言えなかった。
「それも、一杯だけヨ」
「な~んだ、そっかー、じゃ、チャンポンで悪酔いしちゃたんだな」
「・・・・」
柚布子はカシスオレンジではなく、何故スクリュードライバーと答えてしまった事を思い出すところであった。 そして、昨夜の出来事が時系列に繋がろうとしていた。


-弥勒亭別邸-
柚布子は鼻を曲げるような異臭で目が醒めた。 女将が何かの小瓶を柚布子の鼻先で燻らしていた。 柚布子は上体を起こしたその時、鳩尾に鈍痛を感じて思わずお腹を押さえた。 そして身だしなみが気になった。 それはいつもと違う違和感があったからである。 一応、服装は上着を着ていないことを除けば整っているようだが、着た感じが落ち着かなかった。

「大丈夫ですか? お嬢さん?」
「は? はい」
柚布子はお嬢さんと言われて戸惑った。 そういえば、私は独身ということになっていたんだと思い出した。 柚布子は次第に酔いが醒めるのを感じていた。

「ずいぶん、お召しになったのね、スクリュードライバーを」
「え?」
柚布子は女将の話が分からなかった。
「カシスオレンジなら杯3杯くらい飲みましたけど」
女将は園田が騙して飲ましたことなど承知だった。 それは園田の常套手段であったからである。 年配ならどんなお酒か知っているが、最近の若い世代には知らない者もいるので園田はそこを狙っていた。 それを女将が暴露することはないが、飲み物だけは何を飲んだか教えた。

「あの、わたし、どうしたんですか? それに皆は?」
柚布子はもっともなことを女将に聞いた。 女将も聞く手間が省けた。 女将は柚布子がどこまで覚えているかに依って次のオプションが決まるからである。
「大丈夫ですよ、みなさん、お部屋で待っていますよ」
その事を聞いて安堵したのと同時にまたあの席には戻りたくないと思った。
「あの、わたし・・・」
女将は笑顔でその先を促そうとした。
「覚えていないの?」
「・・・・」
「無理に思い出さなくてもいいのよ」
柚布子は煙草を吸う人との接吻をしていたような気がした。 夫の英生は煙草を吸わない。 他に吸う男性で誰が居るかと思いを巡らせると久世くらいである。 柚布子はまさか久世との接吻を夢の中でしていたのか、それだけ久世に思いがあるのだと自覚した。
しかし、今はそんなことではない。 それに誰かと接吻をしていたなどと女将には恥ずかしくて言えるはずもないので、記憶を辿った。

「誰かに、お腹を打たれたような・・・」
「そう、それは痛かったでしょう? それで?」
「そのあと、視界が暗くなって・・・」
柚布子は、その後の事は接吻以外にもぼんやりと思い出していたが、この時はそれが気絶していた間の夢なのか、現実なのかの判断が出来なかった。 だから女将にその曖昧な記憶は話せなかったし、赤裸々過ぎて破廉恥に思われるかも知れないからである。
「気が付いたら、ここに居ました」

「そうだったの・・・痛かったでしょ?」
女将は次なるオプションを繰り出した。
「貴女に暴力を振るったのは他のお客さんなの、貴女を自分達の部屋にでも連れて行こうとしていたみたい。 呼んで謝らせましょうね」
女将には柚布子が断るのが分かっていた。 女将の長年の経験と言って良い。 柚布子の瞳が暴かれたくないことを望んでいると見て取ったのである。 が、しかし経験則通りに行かないこともあるので、相手の男を帰したりせずに仲居の見張りを付けているのである。 最悪の場合、警察に訴えるかも知れないからである。 女将はそこまでオプションに備えていた。

「酔っていたと言っても、暴力は暴力ですからね」
女将はダメを押した。
「い、いえ、それは・・・」
柚布子の答えは女将の予想通りであった。
「知らない人だし、酔っていたなら・・・」
「そう、いいのね?」
柚布子は誰に謝罪させるかとかより早く帰りたかった。
「はい、それより、わたし・・あ、みんなに・・」
柚布子の声は消え入りそうだった。 それだけ疲労困憊の状態であった。


「ええ、もう貴女はお暇した方がよろしいかしら?」
「は・い・・」
「じゃ、みなさんにお話して来ますから、貴女は化粧室に行って帰る仕度をしましょうね」
「あ、あの、磯貝くんに、送ってもらいたいと言ってもらえますか?」
「そ、そうね、誰かに送ってもらいましょうね」

女将はそう言い部屋を出ていくと、仲居頭が入れ替わり来て柚布子に従業員用の化粧室を案内した。

柚布子は化粧室の鏡に向かって自分の顔を暫く眺めた。 ついさっきも別の化粧室でそうしていたような気がした。 その時と違って服装が乱れていた。 ブラウスの襟は少し依れていて、胸に違和感があった。 それはブラジャーがいつもの位置より違っていたからである。 それが上にずらされたことによるものとは思わなかった。

柚布子はブラウスを一旦脱ぐとブラジャーを嵌め直して再びブラウスを着て、その襟を立てた。 そしてブラウスの裾をスカートの中へ入れる為に一旦スカートのファスナーを下げて緩めると、パンティーストッキングと下着も少し依れていた。 いくら正確に他人がそれを履かせたとしても本人の癖まで真似出来ない。 だから違和感を感じたのである。

違和感は服装だけでは無かった。 気絶から醒めた時から女の芯が夫婦の営みの後のような感覚があったからである。 あの時、周りに女将達が居なければ真っ先に確認していたに違いない。 自宅に帰ってから確認しようと思っていたが、やはり気になった。 自宅まで待てないと思った。

柚布子は誰も居ないと思ったが、個室に入ってパンストと下着を下した。 そして股間に指を入れてヴァギナを確認した。 やはりそこは滑っていた。
「あれは、やっぱり・・・」
  1. 2014/11/01(土) 09:16:09|
  2. 序破急・中務
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序破急 - 序の29 お開き

園田たちは卑猥な話しに盛り上がっていたが、誰もが柚布子の戻りが遅いことを気にしていた。 しかし、磯貝から化粧室に行ったと聞かされてそれを追求するのは憚れていたから、誰もそれを口に出来なかった。

そんな中、女将が座敷にやって来た。 同行した仲居が磯貝の方を手で示すと、女将が磯貝に耳打ちした。 磯貝の表情が少し硬くなって、直ぐに同じ内容を末永に耳打ちした。 末永も今まで卑猥な話しに興じていた顔が真面目顔になった。

女将が柚布子の様子を伝えたようだった。 末永が女将の方を見て頷いた。 「女将の口から説明して下さい」という合図であった。

「園田さま、また、ずいぶん飲ませたみたいですね?」
「女将、また、とは心外だな・・・」
「おや、おや、そうでしたか?」
女将は園田に向かって話し掛けた。 SI会社の誰もが柚布子の事だろうと思っていた。

「こちらのお連れの女性が気分が悪くなって、母屋で休んでいます。」
「大丈夫なんですか?」
山田が女将に問い質した。
「大丈夫ですよ、飲み過ぎただけのようですから、ただ・・・」
女将は少しもったいぶった言い方をした。
「お先に、お引きになった方が良いかと・・・」
「そうですか、どうします? 末永さん」
山田は同じ会社の末永が決めるべきと思ったのであろう。

「すいません、うちの者が始めての機会にご迷惑を掛けて」
「い、いや、知らない事とはいえ、こちらも無理強いしたかも知れません。」
山田はこの中では最年長ということもあり責任を感じているようであった。 それに比べ園田は我関せずといった表情をしていた。

「いいえ、無理強いなんて、そんなことはありません」
「いや、こういう場です、断り辛いこともあったでしょう。 彼女に頑張って貰いたいのは私たちのお酒の付き合いではなく、仕事ですから」
「はい、ごもっともです」
「じゃ、週明けからバリバリやって貰わないとけないから、お開きにしませんか?」
一同、首を縦に振った。

「まあ、そうされます? じゃ、彼方、彼女を送って下さいな、車はこちらで用意しますから」
女将が磯貝に告げた。

末永が〆の挨拶をして、皆女将と仲居の後に付いてロビーへ向かった。

磯貝は会計を済ませる為に女将と帳場へ向かい、他のものは仲居が手配した車を持つことになった。
磯貝は会計を終えるとそのまま裏口の方へ案内された。 そこにはハイヤーが待たされていて、後部座席には既に柚布子が座っていた。 磯貝は運転手に行き先を聞かれると、柚布子の住んでいる町の名前を告げて乗り込んだ。

磯貝は柚布子が気分が悪くなって、介抱されたことを想像していたが顔色はそうでは無いように見えた。 むしろ、薄暗がりの中の柚布子は艶っぽく、ドキッとさせた。 磯貝も柚布子が園田と一緒に座敷に戻った時の表情も少し妖し気に感じていたが、今は確実に女を感じていた。

ドアが閉まると車は走り出し、女将がお辞儀をしている姿が遠ざかっていた。

車は幹線道路に出ると一路、柚布子の住む町へと向かった。 街灯の光が車内をライトセイバーの光跡のように照らしていた。 その光の中に柚布子の脚、胸、顔が順に映し出されていく光景を磯貝は見ていた。 安心しきっているのであろう、脚は心なしか車の揺れに少しずつ開いていた。

磯貝はその脚に見とれていた。

「大丈夫ですか?」
磯貝は車に乗って初めて柚布子に声を掛けた。

「磯くん」
柚布子は泣きそうな声でそう言うと、磯貝の肩にもたれ掛かり目を閉じた。 磯貝は女の匂いを嗅いだ。 そして、磯貝の手が柚布子の脚に伸びて行った。
  1. 2014/11/01(土) 09:17:19|
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序破急 - 序の30 家路

磯貝は入社3年目である。 帰国子弟であるので27歳である。 それでも磯貝より歳下が営業部には居ないので、皆に可愛がられ『磯ポン』と呼ばれている。 女性にも人気があるから渾名はあまり格好いいものを付けて貰えなかった。

柚布子は『磯くん』と親しく呼んでいた。 柚布子が親会社に引き取られたのと同時に営業部に配属になったので歳は違っていても同期のようなもので、飲み会も良く一緒に行く仲である。 磯貝が柚布子に職場で出逢った時には柚布子は既に結婚して数年経っていた。 また、柚布子の前の会社を知らないので、磯貝と柚布子の夫の英生とは面識がない。

磯貝は柚布子と出逢って直ぐにファンになった。 それは柚布子が既婚であったからに他ならない。 柚布子が独身だったなら好意以上の感情を持ったに違いない。 柚布子もそれとなく磯貝の気持ちを理解していた。 そしてそれが仕事にも影響して磯貝が取ってくる仕事を柚布子がサポートすると必ず上手く行った。 それによって、磯貝も3年目にして独り立ちするようになり、余程の大きな受注でない限り一人で手掛けるようになった。

柚布子も磯貝の為には多少無理をすることがある。 今回も本来なら久世の会社の担当なので断っても良いところだが、磯貝の担当顧客ということで二つ返事で承諾していた。
柚布子と二人でこうして車で帰るのも始めてではない。 だからと言って二人がそれ以上の関係になることもなかった。 それは互いが良識を持っていたからである。

磯貝には恋人がいる。 社内恋愛だ。 それは皆が知っている。 尚更、柚布子と磯貝がそれ以上の関係になる環境にはないが、その直前までは互いに許している。 仕事でも信頼し合っているからこそであろう。 もっとも、海外生活経験のある磯貝にはスキンシップは当たり前かも知れない。

今も柚布子は磯貝の肩にもたれ掛かって、目を閉じている。 寝ていないことは磯貝には分かっていた。 何かを聞いて欲しいのだろうと磯貝は感じていた。

「園田さんと何かあったんですか?」
「・・・・」
柚布子は肩にもたれたまま首を横に振った。
「あんなに早いピッチで飲むんだから、驚きましたよ」
「御免ね、失態だったわね、かえって印象悪くしちゃったわね」
「大丈夫ですよ」
「磯くん、なんか、すごく眠い」
柚布子は磯貝の肩に頬を擦り付けるように、今度は眠りに入ろうとしていた。
「いいですよ、着いたらお越しますから」
磯貝は柚布子の肩を抱いた。 いつになく女の匂いが磯貝の鼻を突いた。

本当に寝てしまったのだろうか。 柚布子の脚は車の揺れで少し開いて、それを道路の街灯の光が明暗交互に照らしていた。

柚布子が久世の会社のアシスタントマネジャーになって半年、その間磯貝とコンビを組む仕事は無かった。 磯貝は久世の会社の担当ではないからである。 磯貝は少し妬いていた。 今度の一件も磯貝の進言があって柚布子に白羽の矢が立ったと言ってもいい。 磯貝は柚布子を取り戻した気分でいたが、今夜のことでSI会社の購買の獲物になりそうなのを男の勘で感じていた。

この脚をアイツ等が・・・、この唇をアイツ等が・・・
磯貝は柚布子の脚に手を伸ばし置いた。
柚布子は動かなかった。


柚布子は目を閉じて弥勒亭別邸でハイヤーに乗る直前のことを思い出していた。
化粧室の個室に入り、違和感のあったパンストと下着を下ろした。 そして股間に指を入れてヴァギナを確認した。 やはりそこは滑っていた。
「あれは、やっぱり・・・」
指は糸を引いて股間から出てきた。 柚布子はとんでもないことが起きたと思い、取り合えずビデで洗浄して乾かした。 見知らぬ男が柚布子を自分の部屋へと連れていく為に気絶させられた。 その間に自分は男に犯される夢を見て濡れていた。 そんな破廉恥な自分が信じられなかった。 そうでないとすると、やはり、夢ではなく誰かに・・・・
柚布子は眠りながらでも混乱していた。

そして又も濡れるような気配を感じた。 柚布子は内股を刺激されているのを感じていた。 誰かの手に違いない。 薄目を開けて霞んだ視界には確かに誰かの手がスカートの中で動いている。 状況から判断して磯貝だろうと思った。 磯貝とは飲み会で酔って多少のスキンシップはあったが、ここまではなかった。 柚布子はしばらくその手を泳がせた。
その手も遠慮がちに脚の付け根までは侵入しなかった。

「磯くん、そこから先はダメだからね」
柚布子は小さく、しかしダメと言いながら嫌がっていない甘えた口調で呟いた。
磯貝の手は遠慮がちだがスカートに入り、この体勢でこれ以上奥には入らないという所で止まっていた。 磯貝が思慮深いのではない、柚布子の住むマンションが近いからである。
「もう、また、変な起し方するんだから」
柚布子は磯貝を傷付けないような言い方をした。 気付かぬふりをされるよりか救われる言い方と磯貝は思った。

やがて、車は柚布子のマンションの前着いた。 磯貝は柚布子を介抱するように車から降ろした。 そして、車を待たせセキュリティードアーの前まで連れて来ると、柚布子は磯貝の唇にキスをした。
「ありがとう、磯くん、アメリカじゃこうするのよね?」
柚布子は千鳥足だが、ドアの向こうのエレベータに消えた。

磯貝は運転手に恋人の家の方向を告げた。 誰かを抱かずに居られない夜だったに違いない。
  1. 2014/11/01(土) 09:18:35|
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序破急 - 序の31 兆し

「柚布子、俺、今日、ちょっと忙しいんだ」
「あら、そうなの」
「ん、だから今日会社に来ても声掛けられないかも知れない」
「そうなんだ、いいよ、別に」
「悪いな」
弥勒亭別邸での手打ち式後、柚布子が初めてSI会社に打合わせに来る日であった。


英生は複雑な心境で週の初めを迎えた。 それは妻の柚布子が英生が派遣されている会社の中継ぎとはいえ、アカウントマネジャーになったからだ。 妻がまた自分と同じ職場に来る。 一緒に仕事をする。 二人が出逢って結婚した時のように。

だが、英生の席は妻の窓口担当の席からは遠く、社員という壁で隔てられていた。 実際、派遣は外人部隊みたいなもので、正規軍の社員とでは何もかも違っていた。 柚布子がそんな自分の妻だとしたら、肩身が狭くなるどころか不利なのではと思うこともあった。


製品企画部の打合わせブースに一人の女性が颯爽と入って来る。 誰もがその姿に注目する。 胸の辺りまであるであろう黒髪をポニーテール風に束ね、ブラウスの襟を立て胸元はぎりぎりまで開けている。 男達はその胸元に注目するだけではなく、振りまく笑顔は人妻の艶香を漂わせている。 用の無い者まで打合わせブースの周りをうろつき、横目でその女性を見て通り過ぎていく。
打合わせが終わると「ちょっと」と断って出口とは反対方向に歩き始める。 誰もがその姿を目で追っていく。 そして、英生の席の前に来ると
「あなた、今日のお帰り何時? お夕飯、何がいい?」
その女性は話掛ける。
紛れも無い自分の妻、柚布子である。 部屋中の人がその一言に驚愕する。
「君の手料理は全部美味しいから、何でもいいよ」
「そう、じゃ、早く帰ってきてネ」
そう女は言うと部屋から出て行った。 その後に部屋の皆が英生のところに代わる代わるやって来て妻のことを褒めたり、英生を羨ましがることを言って来る。


英生の妄想である。 しかし、それは柚布子がSI会社の得意先であった場合で、実際は取引先で英生と変わらない立場である。 もしそうで、柚布子が自分の妻であることが分かると;

「なかつかさ~、あれ、おまえの女房かよ」
英生に仕事を依頼している設計部の連中がニヤニヤしながら、英生の席にやって来る。
「いい、女じゃないか、身体もいい線行ってるぜ、、忙しいお前じゃ、夜は満足させられないだろう?」
耳元で囁く。何も答えられない英生に更に
「代わりにさぁ、俺達が満足させてやるから、ちと、貸せや」
露骨に英生に要求する。 妄想の中では英生の反論はない。
「おっと、オイラ達より先に製品企画部の連中が味わうみたいだぜ」
そう言った男の視線を英生が追うと、柚布子が製品企画部の連中に手を引かれ何処かへ連れて行かれるところである。 英生はその後を急いで追う。
柚布子は応接室に連れ込まれ、ソファーに押し付けられ、男達の手によって、下着だげの姿にされる。 その下着の上から男達が執拗に愛撫をする。 柚布子から喘ぎ声が漏れてくる。 妄想の中の英生は声が出ない。 自分の妻が陵辱されようとしているのに・・・
「いい子だ、旦那の派遣を解除されたくないだろう?」
一人の男がそう言うとブラジャーを外し胸を直に揉み始める。 そして充分揉んだ後に柚布子を一旦立たせ、今度はソファーに手を突かせ、尻を突き出すように命令する。
「さあ、旦那の為に腰をうんと振ってもらうからね」
その男はパンティーを破るように剥ぎ取ると、柚布子の尻の割れ目に男根を押し当てゆっくり埋め込んでいく。 柚布子の悲鳴が部屋中に響く。 やがて、男が腰を本格的に使い始めると柚布子の口から喘ぎ声が出始めて来る。
「人妻のまんこは最高だぜ、旦那の為にしっかり腰振りな」
英生は目の前で自分の妻が陵辱されているのに声が出せないどころか存在すらない。


「中務さん、ちょっといいですか? 例の・・・」
「・・・・」
「中務さん、なかつかさ、さん」
英生は同じ派遣仲間に声を掛けられて我に戻った。 英生はチラッと自分の股間を見た。 股間の膨らみを気付かれていないか気になったからである。
「あ、その件ね、現場で実物見ながら話そう」
英生はそう言うと、派遣仲間と別の建物の調整室へと向かった。 反対側の入り口には柚布子が入って来るのが見えた。 

現場で仕事の話をしている間は気が紛れたのか柚布子の事を気にせずにいられた。 話が終わって派遣仲間は事務室へと戻って行ったが、英生は調整室に少し留まった。 椅子に座り製品を眺めているが、一人になると先程の妄想を思い出し激しく自分自身を嫌悪していた。 だが、それとは裏腹に股間は妄想に反応していた。

華やかな妻を想像をした直後、それとは真逆に妻が辱められることを想像してしまった。 しかし、その事に興奮を覚えた。 英生にとっては初めての経験であった。 自分の妻が陵辱されることで興奮する自分に嫌悪したが、妄想でのことであるならと自らを許すことにした。

1時間位は調整室に居ただろうか、英生は事務室に戻った。 どの打合わせコーナーの曇りガラスの仕切りにも人影は無かった。 英生は反射的にそこらじゅうを歩き回った。 柚布子を探してのことである。 柚布子に何か話がある訳でもないが、柚布子の所在を確認せずには居られなかった。

英生もそうであったが、初めてここに来た時に社内を案内してもらった。 柚布子も仕事柄そうされているのではと思った。 そして、心当たりの何処にも見つからず屋上の喫煙コーナーで思案していた。

英生は煙草を結婚した時に辞めていた。 だが、ここは自動販売機や植栽があって風向きさえ煙草の煙が来ない方向であれば、眺めもいいので愛煙家でなくてもリフレッシュ出来る所である。
英生が屋上から会社の正門の方を眺めていると、屋上の入り口に話声が聞こえて製品企画部の重盛とその部下が上がって来た。 英生は咄嗟に植え込みに隠れて気付かぬフリをした。

「それにしても、けっこうイケてますよね、生田さん」
部下が煙草を取り出しながら話始めた。 生田とは柚布子の旧姓である。 妻の話であると確信した英生は聞き耳を立てた。
「ああ、そうだな、頭の回転も速やそうだったな」
重盛は一服吐き出すとそう答えた。
「重盛さんのタイプですか?」
「悪くないナ」
「歳は幾つなんですかね?」
「さあ、それは未だ聞いていない、プライベートな事はこれからだな」
「そうですよね、付き合っている人が居るとかも、気になります?」
「ははは、取り合えず独身らしいよ」

え! 柚布子が独身?

英生は何故かこの時、疎外感を感じた。
  1. 2014/11/01(土) 09:20:26|
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序破急 - 序の32 面会票

柚布子は運がいいと思った。 3度SI会社に打合わせに出向いたが、夫と顔を合わせることが無かった。 もっとも、入り口近くの打合わせコーナーしか行っていないので反対側の夫の居る所まで行く必要がないからである。
そう言っても目と鼻の先に居て目が合えば夫婦間と言えども挨拶くらいの声を掛けることはするだろう。 仕事もアカウントマネジャーとして起動に乗り始めると、打合わせも長くなり、回数も増えてくる。 夫と遭遇しないわけには行かない。

柚布子は部長の末永がついた嘘を嘘でないようにしなくてはならない。 山田も打合わせの度毎に顔を出しては挨拶をしていくので嘘を突き通すしかないのである。
当初、柚布子は軽く考えていた。 何度目かの打合わせにネタバラシでもすれば済むと思っていた。

ところが、弥勒亭別邸で柚布子が具合が悪くなった事で山田にも負い目を感じているのだろうか、はたまた山田も男の勘で園田の企みを感じているのか柚布子を園田に会わせないように配慮してくれた。
最初の打合わせこそ営業の磯貝が同行したが、2回目からは柚布子一人であった。 この会社の入館システムでは、取引先は必ず最後に購買部に寄り、面会票に印鑑を貰って退館しなくてはならない。 そうやって取引先を不要に出入りさせないように管理しているのである。
磯貝が居れば磯貝が購買部に行くが、柚布子が一人の場合は自ら購買部に行かなくてはならない。 そうなれば園田の目に留まる可能性がある。 山田は購買部の小宮山を呼んで印鑑を押させたのであった。 流石に重盛が小宮山と同期であったとしてもそこまで出来るのは山田が執行役員という地位だからである。

柚布子も山田の日常を垣間見た。 それは、2度目の打合わせの時だった。 取引先の営業マンらしき男性を怒鳴りつけ始めた。 驚いた柚布子に重盛は気にしないように言った。 これが夫が言った山田の事だと思った。 山田はその男を退散させると、打合わせコーナーにやって来た。 柚布子は緊張した。
「こんちは、生田さん、ご苦労さまです」
「お世話になっております」
山田は先程の様子とは打って変わって穏やかに挨拶をして来た。
「打ち合わせは順調ですか?」
「はい、今日はお蔭様で助かっております」
「今日のところは、無事終わりました」
重盛がそう付け加えた。

「エミちゃん、購買のコミィー呼んで、ハンコ持って来いって」
山田は事務員の橋爪恵美に指示した。
「どうですか、うちの会社は」
「とても、いい雰囲気の会社で羨ましいです」
柚布子も営業トークを忘れていない。
「○○○○システムはもっと凄いんでしょうね?」
「いえ、どちらも同じですよ」
山田も柚布子が担当していたライバル会社のことが気になっているようであった。
「ところで、うちの、こーたはどうですか、上手くやって行けそうですか?」
「こーた?」
「いや、失礼、こいつ、重盛のことですよ、ハハハ、ハハ」
「失礼しました、そうでしたか」
柚布子もつられて笑顔で答えた。
「とても、親切にして頂いています」
「それは、よかった、仕事以外も親切にな、ハハハ、ハハ」
柚布子は笑うことは出来なかったが、笑顔で答えるしかなかった。
「おお、小宮山、ハンコ」
丁度、そこへ購買の小宮山がやって来た。
「生田さん、面会票を出して貰えますか?」
柚布子が打ち合わせノートの間から面会票を出し、山田に渡すと山田はそれを小宮山に渡した。
「あ、どうも、申し訳ありません」
柚布子は立ち上がってお礼のお辞儀をした。 山田は小宮山がハンコを押した面会票をニコニコしながら柚布子に渡すと、
「このまま、購買に寄らずに受付に出せばいいですからね」
と言い、自席に戻って行った。
「本当にありがとうございます。」
柚布子は山田と小宮山に深々と頭を下げた。 そして荷物を片付け製品企画部のある部屋を重盛、小宮山と共に後にした。

重盛と小宮山は受付まで柚布子を送る為に同行した。3度目の訪問も全く同じであった。
この状況では柚布子が既婚だというネタバラシなど出来るハズもない。 柚布子はこの状態を2ヶ月続けるのには夫の協力が不可欠と思った。
  1. 2014/11/01(土) 09:21:39|
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序破急 - 序の33 調整室

英生は駅から自宅マンションへの家路を俯きながら歩いていた。 顔を上げると目の前には自宅マンションが見えていた。 その中の一つの窓を見つめた。 それは自宅の部屋である。 カーテン越だが部屋には灯りが点っているようだ。

英生は少し残業をしての帰宅だった。 灯りは妻が帰宅している証拠である。 普段ならその灯りに安堵感を感じ歩く速度が早くなるのである。 しかし、今日は違っていた。 それは、今日妻がSI会社に来たからである。 英生はその光景を思い出していた。



英生は図面を広げて製品の仕様を確認していた。 すると、製品企画部の橋爪恵美の声が聞えてきた。
「こーたさ~ん、×××機器販売の生田さんと云う方が受付にお見えになったそ~で~すぅ」
他部署の席に居た重盛が「おぅ」と言って何か指示したが、その声は英生には聞えなかった。 重盛が自席に戻り資料を集めて周りの部下に声を掛けていた。 やがて、数名が打ちあわせコーナーに向かい、重盛は入り口へと向かった。 入り口のドアが開き妻の柚布子が入ってくる頃である。 英生は反対側のドアから出て行った。 だが・・・


調整室、そこは機械を組み合わせて一つのシステムとして試験や調整を行う場所。 工場のように天井が高く、測定装置や什器が並んで飛行機の格納庫を思わせる。 SI会社ではそこを現場と呼んでいる。


英生は妻と会わないように現場へ逃げて来るが、そこに柚布子が重盛に連れられてやって来る。 重盛に会社内を案内して貰っているに違いない。 そこに調整担当らしき男性が数人やって来る。 柚布子は一人一人に丁寧に挨拶をする。 現場では見掛けることの無いミニスカートのビジネススーツ姿の女性に男達はニヤニヤする。

現場にある電話が鳴り重盛が呼ばれる。 重盛は電話を切ると現場の担当に何か言い、柚布子を残し調整室を出ていく。 現場の担当に柚布子の案内でも頼んだのであろう。 男達は柚布子を自分達の休憩所に案内する。 そこは男達の溜り場で成人雑誌やらが散乱している。

休憩室の部屋は調整室の全貌が見渡せるように大きな窓がある。 英生は見つからないように、少し離れた場所の作業用の梯子を上り、休憩室の窓から中を覗く。 すると、柚布子がそこの男達に囲まれているのが見える。  英生は「柚布子逃げろ」と叫ぶが空気は英生の口の振動を伝播しない。

一人の男が柚布子の後ろに立ち、スーツの上着を脱がせる。 そして、後ろからブラウスの上を無骨な掌で撫で回す。 柚布子の首が左右に動き男の手で感じ始めているのが分かる。 男は首筋に舌を這わせ吸い付く。 柚布子は胸を突き出した格好でその吸い付きに応える。
男はブラウスの襟元から手を入れ、胸を撫で回す。 その荒々しい動きにブラウスの釦は飛び散り、柚布子の胸が露になり男の掌が激しく揉んでいるのがわかる。 それをみて他の男達は歓声を上る。 しかし、その声も英生には届かない。 サイレントムービーを見ているようである。

男は柚布子のブラウスとブラジャーを剥ぎ取ると、柚布子の身体を反転させて胸に吸い付く。 男の舌が柚布子の乳首を転がすと柚布子の口から喘ぎ声が出始める。 英生からは柚布子の後ろ姿しか見えないが、仰け反った頭が感じていることを分からせる。 男の口が胸から臍の方へ吸い付きながら移動すると、胸が唾液に塗れて光っている。

男はスカートのファスナーを下ろしスカートを床へと落とすと、手際良くパンストと下着を下ろし、柚布子の股間に舌を這わせる。 柚布子はたまらず男の頭を両手で掴む。 その光景を取り囲んで見ていた男の数人はズボンのジッパーを下ろし自分の男根を取り出し、自ら扱き始める。

柚布子の股間をたっぷり自分の舌と口で潤した男は、パンストと下着を片方の脚から一旦靴を脱がせ外し再び靴を履かせた。 そして、柚布子を休憩室の大きな窓の前に抱えるように連れて来ると窓の桟に手を突かせ、尻を突き出させた。 男はズボンのベルトを緩めると、ズボンと下着を一気に膝まで下ろす。 英生の目に誇張したの男根が飛び込んでくる。

男は左手で柚布子の股間を弄り、右手で自分の男根を扱き硬さを増そうとしている。 やがて、右手に唾を吐くとそれを自分の亀頭に塗り、柚布子の股間へ押し当てゆっくり腰を前へ突き出す。
男の一物は柚布子の膣口にすんなり入らないのか、男が腰を進めると押されるように柚布子は窓のガラスに押し付けられる。 柚布子は押されて、両手を窓ガラスに突いて支えるが更に押されて、ついには窓カラスに胸から押し付けられてしまう。

殆ど立った状態だが男は下から突き上げるように男根を柚布子に埋め込む。 柚布子の悲鳴が長く響く。 しかし、男の物は全部埋め込まれてはいない。 男が柚布子の腰を掴み、引き寄せる。 柚布子はガラス窓を掻き毟るような手の動きをする。

男は片手で柚布子の胸を揉み、もう片方を手を柚布子の恥骨辺りから陰核を弄りながら腰を使っている。 やがて、男も喘ぎ声とも思える声を出すと、柚布子は精一杯後ろを振り返りダメダメと首を振っている。 男が逝くのを感じ取ったのであろう。 果たして男は両手で柚布子の腰を掴むと、激しく腰を柚布子の尻に打ち込む。

「あ~」と振り絞るような低い声に柚布子の高い悲鳴が重なり、男の欲望が柚布子の膣の奥に放たれようとしている。

物理的には肌と肌が擦れ合っているのに過ぎないが、男の欲望が子宮に放たれれば物理的にも医学的にも、はたまた倫理的にも、持つ意味は大きく変わってくる。 英生はそれだけは阻止しようとしたのか、スパイダーマンの如く音も出さず物陰を伝って瞬時に休憩室の隣のコンプレッサーの陰に隠れた。 そして、中を窺おうと身を乗りだした瞬間、コンプレッサーの始動する音に驚き身を隠した。
「やっぱり、間に合わない」英生は諦めるしかないのか・・・



コンプレッサーが安定稼動に入り音が静かになると、英生は再び休憩室を覗いた。 と、その瞬間、英生は身体全体に強い衝撃を受けた。 それは紛れもなく現実の出来事であった。
  1. 2014/11/01(土) 09:23:22|
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序破急 - 序の34 滑稽な話

「あら、アナタ、どうしたの?」
「う、うん」
帰宅した英生に妻の柚布子は驚いた。 おでこが赤く腫れて瘤になっていた。 それが見る見るうちに更に腫れてきている。 柚布子は急いで冷蔵庫から氷を取り出すと、ビニール袋に入れてフェイスタオルで包み即席の氷嚢を作り英生のおでこに当てた。
「エントランスのドアにぶつけた・・・」
「なんで? また・・・」
「ちょっと、ぼーっと・・・ 考え事してた」

「もう、こうしてるから早く服着替えて」
英生はおでこに即席氷嚢を柚布子に押し当てられたまま寝室に行くと服を着替えた。 おでこを押さえられているから着替えはぎこちなかった。
「はい、自分で押さえて」
着替えが終わると柚布子に代わって氷嚢を押さえた。

「それじゃ、食事は少し後の方がいいわね」
「ああ、すまない」
英生は食卓には行かずに、ソファーに座りバツが悪そうに柚布子が食事の支度をしているのを眺めていた。
「考え事って何?」
「え? あ、あー、仕事のことだよ」
柚布子が調整室で陵辱される妄想を思い出していて、マンションのエントランスのガラス戸に気が付かなかったと言えるはずもない。 そして、沈黙が続いた。


「今日ね、貴方に話しておかなければならないことがあったの」
「え? なに?」
「大したことじゃないの、食事の後にでもと思っていたんだけど」
「今でもいいよ」
「いいの?」
英生が頷くと柚布子は台所からリビングの英生の所に来ると、隣に座った。

「実はね、あの会社では私独身っていうことになっているの」
「え? なんでだよ」
「うん、馬鹿げた話なんだけど・・・」
英生は屋上の喫煙所で重盛とその部下の話を思い出した。
柚布子は自分が独身として夫が派遣されている会社へ行くことになった経緯を説明した。 英生は幾分憤慨した顔つきになって;
「なんで、そんなことの為に嘘つかなきゃならないんだ、それに大したことじゃないか」
「そうよね、黙ってて、御免なさい、私も一旦は従う事にしたんだけど、嘘は良くないわよね、貴方の言う通りだわ」
柚布子は最悪夫の了解を得られなくても良いと思っていた。 どうみても嘘に嘘を重ねるのだから。

「だからね、今度行った時に貴方のこと話そうかと思うの」
柚布子は夫に協力して貰おうと最初は思っていたが、説明しているうちに馬鹿げた話に協力して貰う方がもっと馬鹿げていると気付いた。
「ああ、そうだな・・・」
英生がそうしたり顔で応えると暫く沈黙が続いた。

柚布子は末永に断ってから話そうか、それとも自分の責任で話そうか迷っていた。 それにあの山田にどう話そうかいろいろ頭で言葉を探していた。

英生は柚布子が自分のことを話すということになれば、柚布子にとって仕事上不利になるのではと思った。 今のところ柚布子の会社の製品を英生が手掛ける予定はないが、経緯が知れると柚布子の会社の製品は英生が手掛けることになるかも知れない。 英生の唯一のアドバンテージは前職の経験が柚布子の会社が扱う製品に長けていることである。 それを設計部が利用しない訳はない。
また、新婚時代のように同じ案件を手掛けることが出来ることは嬉しい。 なにより、夫婦が同じことを公私共に共有するのだから。 しかし、以前とは二人共立場が違う。 喜んでばかりは居られないのである。


二人の間に沈黙は続いていた。
柚布子は再び台所に戻り、夕食の支度の続きをした。 しばらくして食卓には柚布子の手料理が並べられて夕食の準備が整った。
英生はソファーから食卓の所に行き、椅子に座った。 そこに柚布子が来ておでこの状態を見た。 腫れは柚布子の素早いアイシングに依って殆ど引けていて、赤味だけが少し残っていた。 柚布子がその赤味を指で撫でると、英生は顔を顰めた。

英生はこの日、夕食時に「いただきます」を言わずに食事を始めた。 片手で氷嚢を押さえて、片手で食事をした。 かなり行儀が悪いが仕方がない。
いつもより食事に時間が掛かった。 しかもその間、二人に会話は無かった。

「ご馳走さま、今日も美味しかったよ」
長い沈黙を英生が止めた。
「お粗末さま」
柚布子はいつものように応えた。 しかし、その表情はいつもより固いと英生は感じた。 柚布子は食卓の食器を片付け始めた。 それを英生が片手で手伝った。 何時もと変わらない二人の夕食後の光景である。

「そうは言ってもさぁ、無理に言わない方がいいかもな」
「ええ? なに?」
台所の流しで食器を洗う準備をしていた柚布子の手が止まって英生の方を見ると、英生はテレビのリモコンを持って操作していた。 柚布子は再び後片付けを始めてた。

柚布子はいつもより手早く後片付けを終えると、食器洗い器のスイッチを入れた。
「あなた、お風呂いつもと同じ?」
そう、英生に問いかけると英生は頷いた。 いつものように柚布子が給湯器を操作する電子音が部屋に響いた。

柚布子は食卓に戻り英生の湯のみの番茶を入替えると、英生に差し出した。 すると、
「あの、山田だろう?」
英生は先程の話を続けた。
「外注苛めが好きみたいだからな、そのネタをわざわざ提供するようなもんだよ」
柚布子も山田の言動は知っていた。 弥勒亭別邸での態度とは一変していて驚いたのと、これから付き合って行くかと思うと気が重くなっていた。

「嘘がバレそうになった時の事だけ考えておけばいいんじゃないかな?」
「あなた、それでいいの?」
「君が満座の前で山田に怒鳴られるのは見たくないからね」
「あら、嫌だ女性にはそんなことしないでしょ?」
「そんなことないよ、社員の女性にも厳しく言うのを聞いたよ、それに・・・」
「それに、なあに?」
英生はその先をどう説明しようか悩んだ。 柚布子の夫が自分であることが知れると、柚布子の立場が悪くなるのではとは言い辛かった。

「柚布子が、俺に気兼ね無く仕事して頑張っているところを見たくなった」
「え?」
「それが、夫としても嬉しいから」
英生は心に思っていることと真逆の事を言っていると思ったが、もう取り返しがつかない。
本当は夫として頼って欲しかった。 これからの仕事でも助けになりたかった。 リストラされる前の新婚時のように。 だが、今は立場が違う。 柚布子の今の会社の社員としての地位を守るのも夫の務めだと思った。 それは英生が派遣社員だからであるが、それを妻に悟られないように、嘘をつくしかなかった。

「たとえ、独身じゃないのがバレても、俺のことは知られないようにしよう」
「え? どうして?」
「既婚のキャリアウーマンとしても頑張っているところを見たい」
「あなた・・・」
「なにしろ、俺は柚布子が自慢だから」
柚布子は椅子から立ち上がり、英生の方へ来ると英生も立ち上がった。 そして二人は抱擁した。
「俺、今夜、柚布子が欲しい」
柚布子が頷くと、給湯器の電子音が部屋に鳴り響いた。
  1. 2014/11/01(土) 09:25:31|
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序破急 - 序の35 ネット検索

英生は身体を洗い終えると湯船に身体を沈めて先程の会話を思い出していた。 柚布子は自分との関係をSI会社に話すと言っていたが、本心はこのまま独身として過ごしたいのだろうということが分かっていた。
結婚当初は会社の中でしか仕事をしていなかったが、親会社に引き取られてからは社外に出る事が多くなった。 それをきっかけにそういう気持ちになったとしても無理はないと英生も思っていた。 外の空気に触れると人は変わるのである。

もし、自分が柚布子と同じ立場なら結婚していることを隠さないとしても柚布子と夫婦であることを隠そうとしていたのは間違いないからである。 外見は何の問題もない共稼ぎ夫婦のように見えるが、英生が派遣で働いているということだけで、妻の立場を優先しなければならない事に劣等感を持っていたが、それを悟られないようにと、自分の思いとは逆の言動になってしまったのである。


英生が風呂から出ると、柚布子は台所で食事の支度をしていた。 いつもの事である。 翌日の朝食の準備をしておくのである。 普段の朝食はパンにサラダと卵焼きという変哲のないものであるから、準備と言えばサラダくらいである。 しかし、柚布子はお米を磨ぎ炊飯器のタイマーをセットしていた。

「出たの?」
「ああ、明日の朝食はご飯?」
「え?」
英生は明日の朝食のことを尋ねた。
「あ、これ? 貴方の夕食」
「そうなの?」
「明日ね、重盛さんが歓迎会をしてくれることになっていたの」
「そうなんだ」
「御免なさい、さっき、歓迎会のことも話そうと思ったんだけど・・」
英生は柚布子が独身と偽っている事に比べれば重要なことでもないし、歓迎会に行かないようにと言う訳でもないが、話して貰えなかったことにいささか不満であった。 そんな英生の様子を柚布子は探っているようでもあった。

「うん、そうなんだ、分かった」
柚布子をこれから抱くというのに、諍いをする訳にはいかない。 それに、英生にはある感情が芽生えていた。

「じゃ、私、お風呂に入るね」
「ああ、入っておいで」
英生は柚布子が風呂場へと消えると、パソコンを起動させた。


英生は自分に芽生えたある感情の正体を確かめようと検索サイトへ繋いだ。 検索キーワードには「妻」と入れて取り合えず検索した。 結果は膨大な量になることは想像していた。
絞り込む為にに「妻」の次に半角スペースを入れて「会社で」と打ち込み再び検索をした。
検索結果をの上位に目を通すが、これと言って共感出来るものはなかった。

英生は調整室で妄想した場面と「妻」をペアにして幾つか検索した。 「陵辱」と入れるとあるサイトが検索された。 それのトップを英生はクリックした。 そこはブログ形式のページで自分の妻を陵辱させ、それを覗くというものであった。 文字に出て来る妻は勿論柚布子となって脳に投影されていた。

確かに英生にも妻が陵辱される場面を見たいという願望に共感しないわけではないが、その為に策を講じるということまでは共感出来なかった。

検索でヒットするサイトの殆どはビデオの通販サイトであったが、それらのサンプル動画をクリックすることなく英生はさらに検索を続けた。 検索ワードも単語から文節に変えてみた。 それは単語で検索したサイトに掲載されていたコピーを拾ったものだ。 

英生も知識としてある小説で富豪の若き妻を書生の学生に抱かせその様子を屋根裏から夫が覗くというものがあることは知っていた。 古い耽美文学か怪奇小説の類だろうとしか思っていなかった。 それが、今は形を変えネット上には同じようなことが氾濫していた。 英生は自分の妻を他人に抱かせる趣向の夫が以外と多いのだと感じた。 そして夫自ら自分の妻の性体験をネット上に載せているのである。


自分の妻の性体験。 英生は「妻 性体験」で検索した。

『汚れていても愛せますか?』そのサイトに載せられているコピーが英生の目に止まった。 そして英生はそのサイトを一通り閲覧した。 チャットの待機メッセージには自分と同じ性癖を持つ者同士の呼びかけがあり、投稿ページには自分の妻の淫らな行為が小説のように掲載されていた。

脱衣所から柚布子がドライヤーをかけている音が聞え始めた。 英生は閲覧中のサイトをブックマークしようとしたが、思い留まった。 その代わりに自分の携帯のメモ機能に検索したキーワードを打ち込んだ。
ブラウザーを一旦閉じると、ブラウザーの来歴とキャッシュを手作業で消した。 そして再びブラウザを開き通信社のサイトを開いておいた。

自宅のパソコンは仕事柄、英生が買ったものだが柚布子もたまに使うことがある。 本来なら別々のログインを使いたいところであるが、夫婦間で隠し事があるよに思われるので共通のログインでしかも電源を入れると自動的にあるアカウントでログインされるように設定されている。 つまり、柚布子も同じログインを使うのでブックマークも共通なのである。


「あら、パソコン上がっての?」
髪を乾かし終えた柚布子がパジャマ姿でパソコンのところにやって来た。
「何かしてるの?」
「いや、もう終わった。 ちょっとメモリーが安くなったか見てただけだから」
「じゃ、ちょっと貸して」
柚布子は英生に代わってパソコン机の椅子に座って、器用にタイプを始めた。 英生はいつもその指に感心していた。 ネイルをしている指で良く一つ上のキーを押さないものだと。

「あれ~ 表示でないわ・・・」
柚布子が不思議そうに呟いた。
「うん? どうした?」
「ネイルサロンの予約の画面がいつものじゃないの」
それは英生が先程キャッシュと来歴を消した時に Cookie も消してしまったから前回のアクセス情報からサイトが動的に表示するコンテンツが表示されていないのである。
「そっか、何か大事なことでも消えた?」
「いいの、別のサロンにするから」
「そうなんだ」
英生は自分がした事が柚布子に見つかるのではと気が気ではなかった。 柚布子も多少英生の指南でパソコンには詳しくなっているからである。


「ないんだぁ~」
柚布子は検索をしていたマウスを止めた。
「ど~した?」
「うん、紹介されたネイルサロンがホームページ出していないみたいなの」
「へ~、今時ホームページ持ってないんだ、誰に紹介されたの?」
「く」
柚布子は慌てて口を押さえるところであった。 そして平静を装い
「磯ポンの彼女」
と言い直した。 英生の感心は Cookie を消してしまったことが見つかるかどうかだったので柚布子が言い直したことに気が付かなかった。

「ねぇ、あなた、何処見てたの?」
柚布子は検索窓に何かのキーワードを入れてマウスをクリックした。 すると画面にAVサイトのバナーを集めたサイトが表示され、画面が賑やかに動いていた。
「こんな、ところでしょ?」
柚布子は「久世」と言いそうになったのを気付かれないようにわざとそのようなサイトを開いて感心を逸らそうとした。 英生は Cookie を消してしまったことを気付かれないように
「正解」
と言うと、柚布子の肩に手を置き首筋にキスをした。 風呂上りのシャンプーの匂いが心地良い。

「ん、もう」
柚布子は振り返ると英生の唇に自分の唇を重ねた。 すると、英生の舌が直ぐに柚布子の唇を割って入って来た。 そして二人は激しく舌を絡め合わせた。
  1. 2014/11/01(土) 09:27:31|
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序破急 - 序の36 待機メッセージ

「明日、妻が会社の同僚に抱かれます」
先程ネット検索で最後に覗いたあるサイトのチャット待機メッセージである。 英生は柚布子から明日、重盛達に歓迎会をして貰うとことを聞いた。 歓迎会であり、重盛は英生の同僚でもないが、何故か待機メッセージに共感していた。



英生は柚布子のわき腹を脇の下へと撫で上げながら腹部に唇を這わせ吸い上げていた。 そしてチャットの待機メッセージを思い出していた。 既に柚布子の胸は露になっていて英生の目線からは丘のように乳房が盛り上がっていた。 

その丘の上には乳首が存在を主張していた。 それを見た誰もが、そこに唇を持って行き、口に含みたい衝動に駆られるに違いない。 それを英生は脇の下へ撫で上げた手の指で挟んだ。 柚布子は微かに喘ぎ声を上げ背中を浮かせた。 もし、柚布子が会社の同僚に抱かれるような事になれば、同じように喘ぐのだろうか。 そして、その同僚は今英生が見ている光景と同じものを見るのだと思った。


英生はもう片方の乳首を口に含んだ。 柚布子と肌を合わせるようになってから何年も何度もしていることであるが、飽きない行為である。 いつものように口に含んだ乳首を舌で転がすと、柚布子は鼻から抜けるような声を出し、英生の頭を抱え髪を掻き回した。 「俺以外の男の頭も同じように掻き回すのか・・・」 そう思うと英生はいつもより強く乳首を吸い上げていた。

英生は丹念に乳首を転がし続けるのと同時に、柚布子の股間に手を這わせた。

英生の中指は柚布子の小陰唇を的確に掻き分け、膣口へと侵入した。 中指には目が付いているかのように迷うことなく暗がりへと入る事が出来るのは、何年も幾度となくそれを繰り返しているからである。 そこが自分だけの所有物であることを誇るように・・・

英生の指は関節をこれ以上複雑な動きは無いと思えるように動かした。 やはり、ここだけは誰にも犯させない。 その思いが指の動きに表れたに違いない。



「明日、柚布子は得意先の男に抱かれます」
英生は待機メッセージを頭の中で書き換えた。 すると、いつになく興奮を覚え、調整室での妄想がそれに加わった。 英生の男根はもう準備が出来ていた。 柚布子の膣も英生の指で充分潤んでいた。 英生が枕元の避妊具を手に取ると、柚布子は目を閉じてその時を迎えた。

柚布子が目を閉じることは夫婦の間での暗黙の了解で、柚布子も挿入を待っていると云う意思表示である。
英生は避妊具の装着を終えると、柚布子の唇に舌を挿入して互いに舌を貪りあった。 それと同時に英生の指は柚布子の股間を弄り、避妊具装着で空いた間を埋めるのと潤いを更に増そうとしていた。 いつもの夫婦のルーティーンである。


いつもなら英生はここで柚布子の脚の間に入り脚を大きく開き、自分の腰を柚布子の股間に進め柚布子の中へと入るのである。 が、この日は違っていた。

絡めさせていた舌を離すと首筋、喉、胸と舌を這わせ、そしてわき腹から背中へ移動させた。 自然と柚布子は身体を裏返しにさせられた。 そして、首筋に唇を持って行き強く吸うのと同時に手は両脇腹を撫で上げた。

「あ、あ、あ~ん」
柚布子は何時もと違うルーティーンに新鮮さを感じたのか何時もより鼻に抜ける甘い喘ぎ声を上げた。 それは、英生には妄想では聞えなかった柚布子の喘ぎ声に聞えた。 現場の男に後から貫かれ感じていた時の声に違いないと。 英生は脇腹の両手をベッドと柚布子の身体の隙間へと入れて乳房を掴み揉むのと同時に背筋に沿って唇を移動させ強く吸った。
そして、英生の視線の先には二つの丘と快楽の壷へと続く谷間が見えていた。

誰もが今夜はこの姿勢のまま快楽の壷へ自分の物を埋め込みたいと思ったに違いない。 英生も片手を胸から抜き、その壷へと進め何時もと違う角度での挿入を探ろうとした。


「明日、妻が会社の同僚に抱かれます」
たったそれだけの短い待機メッセージに英生は興奮した。 英生は仕事柄パソコンには詳しい方だが、ソフト面にはあまり興味がない。 だから、チャットとかをすることもない。 そのチャットルームに入ってメッセージのことについてチャットする興味もないが、英生の妄想を膨らませるには充分過ぎる程の触媒だった。


この目の前の白い背中に明日は誰かの唇が這い、吸い付き、赤い痕跡を残す。 そう思うと、避妊具の中で英生の男根は我慢汁を滲ませた。 それが亀頭全体に広がり快感を助長させた。 たかが歓迎会である。 そこで柚布子が誰かに堕されるわけでもない。

しかし、英生は柚布子が言った言葉を妄想が膨らむ方へ解釈した。 「重盛さんが歓迎会をしてくれることになっていたの」 それは「重盛さん達」ではなかった。 製品企画部でする歓迎会なら部署名が出てくるが、そうではない。 重盛と二人だけの歓迎会なのか・・・

英生の妄想のターゲットが決まった。 今までは妄想の中で柚布子を犯す男は漫然とした像であったが、ハッキリとその像が一人の男になった。 それが決まると英生の興奮は昇りつめて、一刻も早く自分の興奮した物を柚布子の中へ入れたくなった。

英生は柚布子の背中に覆いかぶさり腰を柚布子の二つの隆起に重ねるべく柚布子の脚の間に入った。 そして男根の根元を片手で握り、もう片方の手で柚布子の襞を広げて狙いを定めた。
  1. 2014/11/02(日) 01:15:19|
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序破急 - 序の37 拒否された体位

英生はいつもと違う興奮を覚え、男根の根元を片手で握り、もう片方の手で柚布子の襞を広げて狙いを定めた。

「ん、もうやだ、なぁ~に?」
柚布子は鼻に掛かった甘えた声を出した。 そして片脚の膝を曲げると、身体を反転させ仰向けになった。 英生は正面を向いた柚布子と唇を重ね、舌を絡めて再び柚布子をうつ伏せにしよと背中に手を回した。

柚布子はその手を掴み阻止しようとしたが、再びうつ伏せにさせられてしまった。 そして再び背中に唇を這わせて、二つの丘に向かった。 手は丘の割れ目に沿って進み、急降下して襞を掻き分けて中指を襞の中に埋め込んだ。

「あっ、あ~ん」
柚布子は再び甘えた声を出した。 英生はそれをこれからすることの了解と思った。 均整の取れた二つの丘とその割れ目を見れば、誰もがそこに自分の物を埋め込みたいと思うに違いない。 英生もまた、その割れ目を俯瞰で眺め自分の物を埋め込むべく、脚の間に陣取った。 そう云えば、結婚後にこの光景を見ていないのではと思うくらい新鮮な眺めで避妊具の中で我慢汁を滲ませた。

「ん、うん、なにしてるの?」
柚布子は首を思い切り捻り英生に向けた。 柚布子の目は英生が自分の物をこの姿勢のまま埋め込むのを察した。

英生は男根のカリの下を握った。 避妊具を被せた後に我慢汁を出したのでその行為だけで亀頭が刺激され、一刻も早く柚布子の中に埋め込まなくてはならないと思った。 そして、柚布子のお腹に手を回し、尻を持ち上げ男根に近づけた。


「だめ、そこからは」
柚布子は微かな声で、しかし、しっかりと訴えた。 そして片手で丘の割れ目を押さえた。
英生は構わず割れ目に向かって男根を押し付けたが、やはり柚布子の手がそれを遮った。 柚布子の手は英生の亀頭を刺激するような格好になり、男根は避妊具の中で我慢汁でヌルヌルになっていた。

英生は柚布子の手を退かす為に一旦持ち上げた尻をベッドの上に落とした。

その瞬間、柚布子は機械体操をしていたわけではないが、器用に膝を折り仰向けに身体を回転させると、両脚で英生をは挟んだ。

「このまま来て」
柚布子がそう言うと、英生は三度柚布子をうつ伏せにすることは無かった。 と、言うよりか英生の男根は体位に関係なく埋め込まなければ爆発するのではないかと思う位、この夜は興奮した状態であった。

英生は立ち膝のまま前へ進むと柚布子の脚を大きく開き男根を柚布子の中へと埋め込んだ。 そして、一旦奥まで埋め込むと「っあ~」と溜息を漏らした。

「あん」
英生の男根が奥まで届くと、柚布子はいつもの甘えた声を出した。

英生は前かがみになると柚布子の舌を吸い絡ませた。 それと同時に腰をゆっくり律動させた。 英生は何時でも爆発出来る状態だった。 腰の動きを早くすると、埋め込んだ男根と避妊具が我慢汁を多量に出した為に別々に動き、いつもの柚布子の締め付けを感じなかったが、海綿体を固くするのには充分であった。

「あ、柚布子、いい」
「あん、あなた、あん」
いつもの、夫婦の営みであるが、明らかに英生の腰の動きは速い。 柚布子の声は裏声のように高い声で喘ぎ始めていた。

「あ、柚布子、逝くぞ」
柚布子は、喘ぎながら頷き英生の背中に手を回した。 そして、英生は柚布子の両脚を折るように両腕で押し広げ、腰を打ち付けた。

「あっ、ゆーこ」
英生は激しく打ち付けた腰を密着させた。 すると。内腿から肛門へと筋肉が勝手に収縮し、亀頭の先端に快感が走った。 やがて亀頭全体が圧迫され、自ら放出した液によって包まれていくのを感じた。

「あ、あー」
英生が果てたを知って柚布子が締め付けたのだ。 英生は身震いするような快感を亀頭に感じていた。 そして荒々しい呼吸が暫く続いている間二人は同じ姿勢を保っていた。

柚布子の呼吸が先に静かになり、脚が脱力していた。 英生は腕立て伏せの格好の腕を片方づつ外し柚布子の脚を楽にさせた。 そして、柚布子から離れた。

いつものように枕元のティッシュを取り柚布子の股間を拭き、毛布と掛け布団を柚布子に掛け避妊具の後始末をした。
避妊具の後始末をして英生はベッドに入り柚布子の頭の下に腕を入れた。

いつもなら柚布子が英生の胸に顔を埋め眠りに付くのだが、この日柚布子は反対側を向いて眠りについた。


柚布子はこの夜、明らかに逝ってなかった。
  1. 2014/11/02(日) 08:48:27|
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序破急 - 序の38 一斉退社

「それって、方向性が変わったということ?」
柚布子の声が会議室に響いていた。 午後のプロジェクト進捗会議でのことである。 定期的に関係者が一堂に会し主要プロジェクトの精査を行うのである。 精査と言っても殆どが工程会議みたいなものである。

「それじゃあ、手配の変更が間に合いません」
柚布子は上席のマネジャーに耳打ちすると、マネジャーは頷き腕を組んで沈黙した。 柚布子はその姿を見ると腕時計に目を落とした。 SI会社の打ち合わせの為に会社を出なければならない時間までに会議が終わりそうにないからである。 柚布子は会議のアジェンダを捲ると溜息をついた。


SI会社の打ち合わせは午後4時半からであった。 柚布子がSI会社の受付を通ったのは5時を過ぎていた。 社内でのプロジェクト進捗会議が延びた為である。

打ち合わせスペースで柚布子は重盛達に遅れたことを詫びた。 事前に遅れる旨の連絡は入れてはあっても遅刻は遅刻である。 柚布子はこれからの仕様決めで多少分の悪いことも受け入れなければならないことを覚悟していた。

仕様決めの作業であるから、遅れた時間を短縮する為に手を抜くことも出来ない。 だから、この後の歓迎会の開始時間にも影響してくるハズである。
だが、重盛は機嫌が良かった。 無理な要求をして来るでもなく、柚布子が要求したことはあっさり受け入れてくれた。 もっとも、その為に事前打ち合わせをしているのである。

重盛の部下たちも自分の持分の仕様が決まると席に戻って行った。 そして、彼達は帰り支度をして重盛と柚布子に「お先に」と挨拶をして、何人か連れ立って部屋を出て行った。 その光景を他の部署の者が見て
「なんだ、お前ら、今日、飲み会か?」
と、いう問い掛けに笑いながら頷いていた。

「じゃ、我々も行きましょうか」
「はい」
柚布子は重盛と一緒に先に行った部下を追うものと思っていた。 気が付くと製品企画部には誰も居なくなっていた。 他の部署も大方同じように閑散としていた。 既に照明が落とされてる部署もあり暗くなっていたが、奥の一角だけ人が昼間と変わらず仕事をしているようであった。

その一角は委託や派遣、関連会社の社員が居る場所である。 勿論、そこに柚布子の夫の英生も居るかも知れないが、 柚布子は敢えてそちらの方向に視線を向けなかった。

重盛も帰り支度をし、出口に向かった。 柚布子はその後に従った。 柚布子は首筋に視線を強く感じていたが、振り返らなかった。 それは夫、英生のものと分かっていたからである。


SI会社の受付嬢は既に退社し、代わりに警備員が受付のカウンターに座っていた。 重盛は警備員に何やら話しをし、受付の電話で何処かに電話をした。 そして、柚布子から受付票を受け取ると、柚布子を受付に待たせ購買部の部屋へ向かった。

SI会社の受付は正面玄関にある。 そこから少し離れた脇が社員等の通用口である。 そこを英生が派遣仲間とやって来た。 柚布子も英生も予期していなかったので隠れたり、視線を逸らしたりすることが出来なかった。 始めてSI会社で顔を合わせた瞬間だった。

一瞬、お互いに驚いた顔になったが、直ぐに普段の顔を作った。 柚布子は口元を締め笑顔を作って目だけで頷いた。 英生は鞄を持っていない方の手を掌だけ返してそれに応えた。
「貴方、お疲れ様」
「お疲れさん、君も」
そんな会話があったかのように・・・

柚布子は通用口を出て行く夫の背中を見つめていた。 リストラされ背中が丸く見えるようになった夫の背中が今は一段と丸く見えていた。 英生と並んで歩く派遣仲間の背中も丸く見えていた。 やがて、二人の後ろ姿は正門を出て見えなくなった。 すると、柚布子は少し沈んだ表情になった。

「何か見える?」
重盛が声を掛けた。 購買部から戻って来たのである。
「いいえ、だた、漫然と外を眺めていただけです」
「物憂げに眺める横顔は素敵でしたよ」
「え?」
重盛は警備員に受付票を渡すと、柚布子の肩を軽く押して正面玄関へと誘った。


柚布子は重盛に肩を押されるように正面玄関を出た。 そこは車寄せである。 そこで重盛は立ち止まった。 すると、正門から一台の車が二人の方へ向かってやって来た。 その車はタクシーであった。

タクシーは二人の前で停まると助手席のパワーウィンドウが降り、
「シゲモリさん?」
と、運転手が問い掛けると、重盛は屈んで頷いた。 すると、後部座席のドアが開いた。 柚布子はこの時、重盛が受付で電話していたのはタクシー会社であったのだと悟った。

重盛は柚布子に手で「お先に」と合図した。 立場からすると、重盛が先に乗るのが礼儀であるので、柚布子も「お先に」と同じように手で合図した。
重盛は柚布子の肩を今度は強く押すように、先に乗るように促した。 柚布子も意固地になることは逆に相手を不快にさせると理解していたし、重盛が呼んだ車でもあるので、一礼して乗車することにした。

柚布子はお尻から後部座席に腰掛け脚を社内へと入れた。 そして腰を浮かして、奥へ移動して行った。 ごく普通の女性の所作であるが、今日の服装がビジネススーツ、しかもタイトのスカートであったので気を使った。

案の定、柚布子は膝に視線を二つ感じていた。

  1. 2014/11/02(日) 08:50:40|
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序破急 - 序の39 噂

英生と派遣仲間は曲がり角でタクシーとすれ違いざまにぶつかりそうになり避けた。
「あっぶねーなー」
派遣仲間が振り返りながら言った。
「だね」
英生も賛同した。


「さっき、受付に女性が立っていたでしょう?」
「え、そう?」
派遣仲間の問いに英生は気が付かなかったフリをした。
「最近、ちょくちょく来てますね、なんでも×××機器販売の後任プロマネらしいですよ」
「へえー、そうなんだ、誰から聞いたの?」
「ほら、うちの女性派遣が橋爪さんから聞いたらしいです」
「なるほどね」
「女性はそういうのは早いから」
英生は柚布子の事がどういう風に知れ渡っているか気になった。

「なんでも、歳は33で、重盛と一つ違いの独身だそうです」
おい、おい、柚布子はまだ31歳だぞ、と突っ込みを入れたいところだったが我慢して聞いていた。 それにしても噂は広がるのも早いが正確性に欠けるもんだと実感した。
「へ~、そんな事まで仕入れたんだ」
「なんでも橋爪さんが嫉妬しているらしいですから」
「え? なんで?」
英生は意外な展開になったと思った。

「ほら、橋爪さんて重盛のファンじゃないですか、だから気になるらしいですよ」
「そうなの?」
「知らないんですか? ま、中務さんはそういう下世話なことには感心がないと思いますけど、結構噂みたいですよ」
「でも、橋爪さんは結婚してなかった? 俺、そう聞いていたけど・・・」
「ま、そうなんですけどね、そこは男女の何とかってネ」
「ふ~ん、そういうのあの山田が嫌うんじゃないの?」
「そ、そこなんですよ、山田も社内で不倫騒動になってはと重盛に独身の恋人が出来ればと思っているらしいですよ」
「って、ことは重盛と橋爪さんはそういう関係?」
「さあ?」
派遣の間では女性以外の社員を陰では名前を呼び捨てにしているのである。 英生は関心がないが、派遣仲間では社員のスキャンダルは心地良い息抜きなのである。 男性はプライドがあるから、派遣と社員とでスキャンダル的な情報を交換することはないが、女性同士は男性のような壁はなく情報交換が行われるらしい。

「今のところそういう関係ではないようですよ、橋爪さんは定時でさっさと帰ってしまいますからね」
「そうだろうね」
英生は重盛が悪いヤツであって欲しいと思ったが、現実はそうでもなさそうである。 が、
「でもね、重盛は人妻好きっていう別の噂もありますよ、人妻喰いらしいですよ」
「え! なんだって!」
英生の語気が大きかったので派遣仲間は一瞬驚いた顔になった。
「どうしたんですか?」
「い、いや、別に、ただ、そんな感じの人には見えていなかったから、さ」
「ま、我々もここに来て長くないですから、知らないことは沢山ありますよ」
「そ、そうだな」

英生は柚布子が独身としてここに来ていることが良かったと思った。 もし、別の噂が本当で柚布子の素性も偽っていなかったら、格好の獲物になっていたかも知れないのである。 英生は安心しつつ、獲物として狙われる柚布子に興奮し始めていた。

「で、さあ、他にはどんなこと仕入れたの、その×××機器販売の女性について」
「ま、あんまり無いですけど、いい女ですよね」
「え? そう?」
「中務さんは、あっちにあまり行かないから分からないと思いますケド、結構近くで見ると色っぽい女ですよー」
「そうなんだ・・・」
英生は同じ派遣仲間が柚布子のことを観察していたことに驚くと同時に自分の妻が晒されている錯覚に興奮を覚えていた。

「他の部署の連中は犯りたい女だって言ってましたよ。 重盛の部下達もそうかも知れないけど、重盛の前だから遠慮してるんでしょうね」
「なんか、凄いな」
英生の素直な感想であった。

「彼等の間では、重盛が最初に堕とすのが既定になっているようですよ」
「マジかよ」
「後は、順番に部下に払い下げるとかね」
「嘘だろ! そうだったら、橋爪さんなんかとっくに堕とされてるだろう!」
「おっしゃる通り、でも社員には手を出さない掟なんじゃないですか? 何かと面倒な事になりますから」
「馬鹿気てる!!」
「中務さんは真面目だからこういう話になると興奮するんですね?」
「え?」
英生は真面目だから興奮してるのではなく、自分が柚布子の夫だから興奮しているのだと言いたいのを我慢した。

「堕とす云々は検査部の連中から聞いたんですけどね、 現場の連中は下ネタが好きなんですよ。 だから、どこまで本当なのか・・・」
「そ、想像に決まってるさ・・・・」
「そうだと思いますけど、前科があるからそういう噂になるのかも知れないですよ」
「・・・・・」
英生は興奮と不安が入り混じった状態とはこういうことなのだと実感していた。 そして二人は無言で駅に向かっていた。

英生も噂というのは殆どが伝播させる為に面白く作っているものだと分かっていても何処まで真実か分からない以上、不安は拭えなかった。


駅に続く商店街の入り口まで来た時だった、二人の脇を先程のタクシーが追い越して行った。 それとなくタクシーに目を遣ると、後部座席の女性が目に入った。 見慣れた髪留めは間違いなく柚布子のものである。 後部座席の二人は楽しげに会話しているように英生には映った。
車は駅のロータリーに続く道には曲がらず、駅を通り越す跨線橋へと上がって行った。

「おっ、さっきの女だ、重盛と一緒だ、 こりゃー、今夜犯られちゃうな」
派遣仲間の言葉に英生は激怒するのを必死に堪えた。

「中務さん、ちょっとひっかけて行きますか?」
英生は飲んで帰りたかった。 もっと重盛に関する情報を知りたかった。 しかし、柚布子が前の夜から用意してくれた食事がある。 それは、柚布子が英生の妻であるという証。 今の英生にはそれが唯一の柚布子からの愛に思えた。

「い、いや、妻が食事を用意してくれているから・・・」
「中務さん、愛妻家なんだ」
  1. 2014/11/02(日) 08:52:03|
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序破急 - 序の40 気になる乗客

吉原辰夫は勤続25年の構内タクシーの運転手である。 出稼ぎで都会に来たが出稼ぎ先が倒産し、それを機にタクシー運転手となった。 長い間タクシー運転手をしていると個人タクシーへと転向するが、吉原辰夫は会社で社員運転手をしている。

近頃の不況のお陰で流しの営業に出るより送迎の仕事の方が率がいい。 会社も乗せる乗客によって車を替えたりする。 勿論ハイヤーも所有しており吉原辰夫はハイヤーも担当する。


この日、吉原辰夫は昼間の勤務だった。 もう上がろうとする時に送迎の依頼がSI会社からあった。 これが上がりの仕事と志願して車を急行させた。

ハイヤーを運転する時は丁寧な運転だが、タクシーとなると昔ながらの習慣なのか運転は荒い。 途中で誰かを引っ掛けるのではないかと思うくらい飛ばしてSI会社の正門で急停車した。 正門でいつもの様に一礼して、正面玄関の車寄せへと向かった。

車寄せには男女のカップルが立っていたので、そこに車を停車させた。 そして、助手席のパワーウィンドを降ろし、
「シゲモリさん?」
そう聞くと、男が屈んで頷いたので、後部座席のドアを開けた。


何処にでもある光景である。 どちらが先に乗るか譲り合っていた。 女が先に乗ると踏んでルームミラーを車道側に少し向けた。

予想通り女が後部座席に腰掛け、身体を回転させて脚を車内へと入れた。 タイトスカートから伸びた脚はしゃぶりつきたい程魅力的だった。 その脚を見ない男がいるであろうか。 
長年の経験でどの辺りで声を掛けて振り返れば眺めが良いか知っていた。 車の揺れ具合から尻を浮かしながら車道側へと移動しているのが分かる。

「はい、どうぞ」
後ろを振り向く口実の為に言葉を掛けた。 駆動系が収まった箇所を乗り越えるのには脚を揃えては出来ない。 タイトスカートから出た脚はバラバラに動いて前席からは奥まで見えていたに違いない。

タイミングは合っていたが、その光景は視野の左下でぼやけていた。 女と一緒に移動しているバッグに見蕩れてしまったからである。 使い古したトートバッグに柄の付け根に小さな熊のマスコット。 何処かで見た記憶があったからである。


女が車道側の座席に移ると、直ぐ様男が乗り込んで来た。 男はやはり女の脚を見ているのがルームミラー越しにも分かった。

「ボン・ハイムでしたよね」
「はい、そこでお願いします」
男が答えるとドアを閉め発車させた。 バッグのことを思い出そうとしていたら正門を通り越すところだった。 慌てて急停車すると、男と女は前にのめり、そして守衛に一礼してアクセルを噴かすと今度は背もたれに押し付けられた。 少し荒い運転である。
ルームミラーの中で後部座席の二人はやれやれという顔つきで互いに視線を合わせていた。

「新しく出来たところですよね?」
「ええ、そうですよ」
再び声を掛けた。 女が座席の中央寄りへ首を傾けて前方を見ようとでもしたのであろう。 ルームミラー越しに目が合った。 女は少し驚いた顔をした。 仕事柄乗客のことが気になるので自然と詮索するような目つきになっていたのに驚いたのかも知れないと思った。


「どちらに行くんですか?」
「弥勒亭別邸」
「え?」
男の答えに女の顔が曇った。 前方を見ながらルームミラーに何度も目を遣った。 女は男の顔を睨んでいるようだった。

「ご、御免、申し訳ない」
男は急に困った顔になった。 冗談のつもりで言った言葉が女を不快にさせてしまったからであろう。
女は男の困った顔を見て更に抗議する言葉でも探しているようだった。 だが、言葉が見つからないようであった。


-弥勒亭別邸- あの時の女だ。 吉原辰夫は思い出した。
飲みすぎて具合が悪くなったらしい女と同じ会社の男らしい二人を弥勒亭別邸から乗せたのである。 しかし、ただ飲み過ぎたくらいではないことは仕事柄感じていた。 この男もそれに加担したのか? 自然とアクセルが緩んだ。 ルームミラーを頻繁に覗かなくてはならないからだ。

女はしばらく考えた後に、急に表情を変えた。
「いいえ、すいません、あの時はちょっと飲み過ぎたの」
先程とは打って変わて穏やかな表情で見つめていた。
「い、いや、気に触りましたか? そんな、つもりじゃ・・・」


「どんな、つもりなんですか?」
「・・・・」
今度は悪戯っぽく見つめていた。 見方によっては色っぽくとも思える目つきであった。 そして
「また、酔わせるつもりなんですか?」
「い、いや、いや・・・」
女は自然と男を誘うような眼差しと微笑みで見つめていた。


この状況で誤解しない男が居るだろうか? この女、男を誘っているのか? いったいどういう心境の変化があったのか理解出来ないままアクセルを踏み込んだ。
弥勒亭別邸から乗せた時も同乗の男にスカートの中を触らせていたし、別れ際におでこに女の方からキスをしていた。 あれは何だったんだ? 恋人同士ではなかったのか? そしてこの男は・・・浮気?
全く運転に集中出来ない気になる乗客だと思った。



「もう、皆さん着いているのかしら?」
「え? ああー、さて」
「・・・・・」
男は答えに窮したような表情になった。 そして暫く間が空いた。


女の視線が外へと急に向き、後方へと頭を動かした。 そして急に真顔になった。 ドライバーから死角になる方向だったのでそこに何があるのか分からなかった。

吉原辰夫がアクセルをキックダウンすると車は荒々しく駅を通り越す跨線橋へと駆け上がっていった。 そして、運転席側のサイドミラーには二人連れの男性が駅の商店街へと続くアーケードを潜っていくのが小さく映っていた。
  1. 2014/11/02(日) 08:53:01|
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序破急 - 序の41 二人だけの歓迎会

開店して間もない店のようであった。 入り口には開店を祝う花がまだ飾られていた。
重盛が名前を告げると、係りの者に奥へと案内された。 入り口近くはカウンターと4人掛けの小さなテーブルが並んでいた。

柚布子は変だと思った。 他の製品企画部の人達が居ないのである。

奥に歓迎会が出来る大きなテーブルがあるのかと思ったが、案内されたのは個室のような4人掛けのテーブルに椅子が二つだけある席であった。 既にテーブルの隣り合う2辺にはランチョンマットのようなものが用意されていた。

係りに案内されるがままにテーブルに着いた。 二人だけとは言え、相手は得意先である。 向かい合わせに座るものと思っていたが、隣合わせである。 これは親しいカップルの席の着き方である。

既にセッティングされたテーブルを直して貰うことも出来るが、そこまでしたら今後の付き合いに支障が出ると思った。 それに、これを重盛が手配したのか、店が勝手にしたのか分からないからである。

「他のみなさんは?」
柚布子はやはり聞くことにした。 というのも、今までの重盛とこうなるまでのやり取りを席に着きながら整理したのである。 確かに重盛は皆で歓迎会をするとは言っていなかった。 柚布子が勝手に製品企画部がする歓迎会と思い込んでいたかも知れないからである。
だから、柚布子も漠然と聞いた。

「うん、今日は一斉退社日で、どっか飲みに行っただろうね」
重盛のもっともらしい返事であるが、目が泳いでいた。 柚布子はしてやられたと思った。
「いい雰囲気のお店ですね、みなさんも一緒なら良かったのにネ」
柚布子のせめての反撃であった。


係りの者が注文を取りに来た。
「ビールでいいですか?」
柚布子が頷く。
「黒の中グラスを」
重盛が指を2本出して注文した。 重盛はその他に2品料理を注文した。

「何か注文しますか? ビールが来たら頼みましょう」
重盛はそういうと、柚布子にアラカルトのメニューを渡した。

ビールは直ぐに運ばれて来たので、柚布子も2品注文した。

「じゃ、お疲れさん」
重盛がジョッキを片手で掲げたので柚布子もジョッキーを両手で掲げてそれに応えた。
「お疲れさまです」

重盛はジョッキの半分位を一気に飲んだ。 柚布子は2,3口飲んだだけにした。
「ビールがお好きなんですか?」
柚布子は微笑ましく重盛の飲みっぷりを見て聞いた。 ビールのコマーシャル以外で美味しそうにビールを飲む男性を見たことがなかったからである。
「好きですよ、柚布子さんは?」

「ほど、ほど、にですよ」
「ほど、ほど、ですか・・・・」
柚布子は差し障りない答え方をした。


程なく料理が幾つか運ばれて来た。 ソーセージと酢漬けのキャベツの盛り合わせを柚布子はフォークで切って、取り皿に取り分けた。
「ありがとう、女性にこうして貰うと嬉しいです」
重盛はそう言うと、ソーセージを口に放り込むと残りのビールを一気に飲み干した。 柚布子もその光景を嬉しそうに見つめていた。


重盛は4杯目のビールを頼んでいた。
「ところで、プライベートな事聞いてもいいですか?」
柚布子はやっぱりその話題になったと思った。 今まで仕事の話題でなんとか繋いできたが、そろそろネタ切れだった。

「どんな事ですかぁ?」
柚布子は頷くとちょっと悪戯っぽい眼差しで聞いた。
「ズバリ、決まってる人いるんですか?」
「え?」
「彼氏とか・・・」
柚布子は残りのビールを飲み干した。 下手な小細工をするとボロが出る。 柚布子はそれを知っている。 しかし、上手な小細工を自分は出来ないことも知っていた。
「居ないですよ」
飲み干したグラスに付いた口紅を指で拭き取りながら上目使いに答えた。
  1. 2014/11/02(日) 08:54:03|
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序破急 - 序の42 相々傘

重盛がかなりの手応えを感じたのも無理はなかった。


二人は駅へと続く道を肩を並べて歩いていた。 柚布子は何処を歩いているのか分からなかった。 地図の読めない女ではないが、流石に始めての場所で、しかも夜ともなれば方向感覚も怪しくなる。 多少なり酒が入っていれば尚更である。


「何処に向かっているんですか?」
「駅ですよ」
「本当に?」
「はい、本当ですよ」
「逆の方向ってことないですよね?」
店の前の道を左に出たのを柚布子は覚えていた。 そして、タクシーを降りた正面が店だったことも覚えていた。 つまり、タクシーが来た方向とは逆である事くらい分かっていた。
店は少し高台にあったのか道は緩やかな下り坂であった。 そして、住宅街の先には原色のネオンが幾つか闇夜に異彩を放っていた。 ラブホテルのネオンである。

「この少し先に、駅があるんですよ」
「そうなんですか?」
柚布子も多少の地理は理解していた。 確かにSI会社の最寄駅である路線を越えると別の鉄道会社の路線があり、それを少し上るとSI会社の路線との乗り換え駅があることは知っていた。
「この坂を右へ行くと直ぐに駅です」
その路は原色のネオンに挟まれていた。

重盛は柚布子の腰に手を廻しエスコートするような体制で歩いていた。 柚布子はネオンの方へエスコートされるのを警戒して歩の速度を速めた。

暫く早歩きをしていると踏み切りの警報音が聞えて、電車が通過する音が聞えた。 建物で電車は見えないが、駅が近いのには間違いがないようである。

「タクシーで来た道の駅じゃダメだったんですか?」
「うん、それでも良かったけど・・・」
重盛は柚布子の腰に少し力を入れた。
「会社の人に見られるかも知れないからサ・・・俺は構わないけど」
「・・・」
柚布子は重盛の手から少し逃げるように歩いた。 ネオンの光る建物へ誘う事を隠す為の口実かも知れないと思った。



この日の夜は店を出ると異様に湿っぽい空気に包まれていた。
駅の入り口らしい看板の灯りが見えた頃に、それは重力に耐え切れなくなり霧雨となって降りて来た。 急げは傘など必要もないくらいであった。 

柚布子は急いでトートバッグから折畳傘を出すと重盛に翳した。 柚布子にとっては得意先であるから当然のことである。
重盛は腰を屈めその下に入った。

駅まで数十メートルである。 駅から出て来る人々は傘を差さずに家路へ急いでいる。 逆に傘を差しているのは柚布子くらいであった。 駅前の道を渡る横断歩道の信号が赤になった。

「これじゃ、君が濡れてしまうよ」
重盛はそう言うと柚布子から傘を取り上げ柚布子の方へ翳した。
「それでは、重盛さんが・・」
柚布子がその先を言いかけると
「じゃ、こうすればいいよ」
重盛はそういうと傘をもっていない方の手を柚布子の腰に廻し引き寄せた。 重盛は合法的に身体を密着させることに成功した。

横断歩道の向かいには電車を降りて家路へ向かう人々が信号待ちをしていた。 その誰もが向かいの柚布子と重盛を視野に入れているのは言うまでもない。
ここで重盛の手を振り払えば対峙している人々に重盛が良くない男に見え、恥を掻かせる事になる。 勿論、そういう行動を取っても冷静に考えれば今後の仕事に影響は出ないであろう。

「今日は飲み過ぎたんですか?」
柚布子は重盛の行動を酒のせいにすることで傷つけないようにした。
「君は飲み足らなかった?」
「え?」
柚布子は重盛が酒のせいにして身体を密着させていることを止めると想定していた。 それに身体を引き寄せられた時に反射的に拒否するような態度を取ればよかったが、今のタイミングでは容認したように取られても仕方がなかった。 柚布子はまた、してやられたと思った。

「ほど、ほどに頂きましたわ」
「ほど、ほどですか・・・」
信号が変わり、二人は歩き始めた。 横断歩道を渡るともうそこは駅舎の庇の下で傘を差す必要のない場所である。

先ほどの信号で降車した乗客は家路へと向かい、駅員の他には誰も駅舎には居ないようであった。 柚布子は傘を受け取るべく手を重盛が持つ傘の柄に手を伸ばした。 すると、
「ほど、ほどなら、まだ酔っていないってことだよね」
重盛は柚布子の瞳を見つめて言った。
「え?」
「俺も、まだ、酔っていない、だから酔っていないうちに聞いて欲しい」
誰もがそうであろう、柚布子も何かの告白があるような予感を感じていた。

「彼氏、居ないんだよね、だったら俺はどうかな?」
「・・・・」
柚布子は、はやりと思ったが、告白の仕方としてはストレートだと思った。 騙したと言っても最初のデートである。 断られたらとか考えないほど楽観的なのか、よほどの自信家だろうと思った。

「ごめんなさい」そう言えば済むことである。 理由は実は既婚であるということでなくても幾らでも考えることが出来る。
「ごめんなさい」そう言えば今日のようなことは二度と無い。 無難に仕事を切り抜けて二ヵ月後には次のマネジャーに引き継げるのである。

だが、店での会話、店を出てからここまでの雰囲気を柚布子は未だ味わったことが無かった。 英生とも仕事関係で一緒になった結果であるが、身内過ぎていて今日のような緊張感があったのかと言うと記憶にない。 また、他の得意先の久世と比べれば、久世とは同窓生同士の気安さで学生時代に戻ったような感じでこれとも違っていた。

柚布子は男女が出逢って恋人同士になる過程の緊張感は本当はこんな感じなのではと思った。 だとしたら自分は早くに結婚して損をした錯覚になった。 取り戻してもいいのでは?と・・・


長い間見つめ合ってたよな気がした。 柚布子は重盛の手から傘を取ると、それを畳んだ。 そして
「わからないわ」
そう答えた。

二人はこの駅で別々の方向へと帰っていった。 そんな付き合いが繰り返されて柚布子はもう「わからない」とは言えない状況に追い込まれていった。
  1. 2014/11/02(日) 08:54:57|
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序破急 - 序の43 夫の知らない妻(5)

柚布子は結構多忙であった。 SI会社のプロジェクトの案件も一つ手配を完了させて後は仕上がりを待つだけと、その合間に次の案件の引き合い対応をしていた。

プロジェクトはSI会社だけではなく○○○システムは勿論のこと他の得意先でも相談を受ければ対応していた。 この時期は年に一度の同業者の展示会が臨海地区で開催される。 その展示会は柚布子の会社にとっては最大の催し物なので柚布子の会社の規模なら殆どの会社の人間が何らかの形でそれに携わるのである。

柚布子も嘗ては製品の説明員をしたことがあったが、女性説明員となると製品の内容より柚布子を冷やかす者ばかりであることを経験済みなのでここ数年は裏方として精を出していた。

SI会社との次の引き合いはまだ具体化していなかったので谷間の状態であった。 しかし、重盛からこの日も誘われていた。 時間を作れないこともないが、流石に気が乗らなかった。 何か理由をつけて断っても構わないが、断るきっかけが無ければズルズル重盛のペースに嵌って行くのを感じていた。


今週のスケジュール表を眺めながらぼんやりしていると、社用の携帯の電話が鳴った。 柚布子は表示された着信を見て、席を立ち人気の無い所へと移動しながら携帯のフック釦を押した。 顔の表情は既に微笑んでいる。
「はい、生田でございます」
「くぜ(久世)で~す。 ゆ~こぉー、おひさー、げんきぃー」
「まぁ君」
柚布子は声を落としたが、口調は弾んでいた。 まるで久しぶりに恋人にでも逢ったかの弾み具合であった。
「んだから、さぁ、まぁ君じゃねぇーっつうの、 おっ、どうした? 泣いているのか?」
「・・・・」
「何だよ、俺が泣かしたのか?」
「違うの、移動したから、息が切れてて」
「なんだ、そっかー、心配させんなよ」
「御免なさい」
「何処にいるんだよ」
「会社です」
「あ、そうだったんだ、てっきり浮気してんじゃないかと、携帯に電話しちゃったよ」
「もう、浮気なんてしてません!」
「仕事上のことだよ、ったくぅ」
「分かってますぅ」
「浮気してないんだ、じゃ、ここ数週間何処行ってたんだよ」
「・・・・」
「ほら、浮気してたんだろう?」
「仕事だから、仕方ないでしょ?」
「まあな、 ところで、今夜軽く行くか? 来るよな?」
「え? 今夜? 今夜はちょっと・・・」
「なぁんだ、浮気相手と時間外デートか?」
「え?」
柚布子は一瞬凍りついた。 まさか競合会社の久世にまで重盛とのことを知られていたとは予想外であったからである。

「おまえさん、さぁー、イケメン好きだから、しょうがねぇ~なぁ」
「・・・」
「なんだよ、図星かよ、マジ?」
「違いますぅ、もう、相変わらずだから、返事しなかったダケですぅ」
柚布子は何とか取り繕った。 それにしても久世はいつもヒヤヒヤさせる存在であった。

「あのね、まぁ君、今度の展示会の準備でちょっと立込んでいるの」
「ほう、そっかー、そんなのあったな」
「でも、ちょっと時間作ってみる、だから・・・後で折り返しますから」
「りょ~かーい、必ず電話よこせよ」
「うん、まぁ君、電話くれてありがとう」
「愛してるからな、ほいじゃねぇ~」
柚布子は携帯畳んで自席に戻った。



「製品企画部でございます」
事務員の橋爪恵美が電話に出た。
「お世話になります、×××機器販売の」
柚布子が名乗り終わらないうちに受話器の向こうから「こーたさ~ん、でんわ~、かのじょ~」と重盛を呼ぶ声が聞えて来た。
「お待ち下さい」
ぶっきらぼうな橋爪恵美の声に続き電話の保留音を聞かされた。

「お待たせしました、重盛です」
「×××機器販売の生田でございます」
「うん、わかってる」
「お世話になります」
「はい、お世話になっています、で、どうする?」
「それなんですが、今日これから展示会の打ち合わせ等が入ってしまいまして」
「そうなんだ」
「はい、もう開幕日まで日が無いもんですから」
「そうだね、じゃ、その次の日にしようか」
「いや、あの、次の日は別の予定が入っていまして」
「ふ~ん、仕方ないな、じゃ、展示会に行くからその帰りにしよう?」
「あ、はい」
「決まりね」
柚布子は結局、展示会の日に重盛とデートをすることを承諾させられてしまった。 しかし、今夜久世と久々に逢えることに比べれば今夜のことを優先しなければならないからその代償としては仕方ないと思った。


柚布子は帰り支度を始めていた。 展示会の準備といってもイベント会社に製作資料を渡してしまえば、後はイベント会社がブースをそれなりに設計して作ってしまう。 忙しそうであまりやることは無かった。 柚布子は所在を記入するボードに「休み」と赤のマーカーで書くと、バッグにノートパソコンを入れ、それを手にして会社を後にした。 他の社員は展示会の準備で出払っていて、会社を出ていく柚布子の姿を見た者は居なかった。


柚布子はいつになく軽やかな足取りで地下鉄への階段を降り、来た電車に乗り込んで時計を見た。 「遅れてない」そう呟いて笑顔になった。 遅れると久世にイビリのネタにされるからである。

いつもは郊外へ直通運転する電車を待つが今日はその必要が無かった。 久世との待ち合わせの店は地下鉄のエリアだからである。 だから電車は帰宅時間にしては空いていた。 柚布子が降りる駅では相変わらず郊外への直通電車を待つ乗客がホームの乗車位置で整列していた。 柚布子はその列を掻き分けるように改札口へと向かった。

ここは他の地下鉄と環状線との乗り換え駅でもあるので人の流れに逆らいながら柚布子は地下街を急いだ。 人の流れは邪魔だが、それを避ける所作も楽しく感じていた。 それは待ち合わせ場所のショットバーが目の前に見えていたからである。

薄暗いショットバーの入り口を入るとバーテンダーと目があった。
「いらっしゃいませ」
声を掛けられた柚布子は軽くお辞儀で応えて店内を見渡した。
「お待ち合わせですか?」
「はい」
「今日は私の方が早かったわ」そう思い、久世といつも座っているカウンターの席へ進むとそこには先客らしい人の荷物が置かれていた。 予約するような店ではないので仕方ないと思った。 と、その時臀部に何かが当たった。
「ひぁっ」
柚布子は思わず小声せ叫んでしまった。

「おっせーんだよ」
久世の声が懐かしく感じて臀部を触られているのを咎めることが出来なかった。

  1. 2014/11/02(日) 08:55:49|
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序破急 - 序の44 夫の知らない妻(6)

乗り換え駅の地下街にあるショットバー。 柚布子は臀部に何か当たっているのが人の手であることが分かっていた。 それは久世の手に他ならない・・・・

「おっせーんだよ」
久しぶりに逢う久世の第一声が背後から聞えた。 柚布子が振り返るのと同時に臀部の手も離れていったがその間際に軽く揉まれたような気がした。

「うっそー、まぁー君」
柚布子は腕時計を見ながら久世に抗議する目を向けた。 いつも遅れるが、今日は絶対に早く着いた自信があった。 現に待ち合わせの時間より7分ばかり早かった。

「いいから、席につけよ」
久世はいつも二人が逢う時の席を指差した。 先客の荷物だと思われたのは久世の荷物であった。 A4サイズくらいの赤い手提げ袋でまるで化粧品の買い物袋のようであった。 それを男性の荷物だとは誰も思わないであろう。

席に着くとバーテンダーがタイミング良くおしぼりを渡した。 そして久世がいつもの飲み物をオーダーすると、柚布子もいつものスタイリッシュなグラスに注がれたビールをオーダーした。

「久しぶりね、まぁー君」
「だから、まぁー君じゃ、ねぇーての、ところで、どうよ、最近」
「どうって、何が?」
「決まってんじゃねかよ」
「仕事?」
「ばーか、そんなこと聞いてどうすんだよ、うちに最近来てねぇーんだから仕事は暇だろ」
「もう、さっきも展示会の準備で忙しいって言ったでしょ?」
「それはさっき聞いたから分かってるさ、で、どう?」
「えー?」
久世との今までの会話の経験で何を聞きたいのか分かっていた。 ここのショットバーでの会話は同窓生感覚もあってか意外と会社の同僚や夫とは出来ない話を今迄してきた。 だからと言っていきなり柚布子からそのことを切り出すことは出来ない。

「あっちだよ、旦那とのことだよ」
「うん」
「やっぱり、ご無沙汰か」
ご無沙汰ではない。 だが、こういう場では、たとえそうであっても旦那とやりまくってるなどと言うハズもない。 そこそこと答えるかさっぱりと謙遜するかである。 そこそこと答えるのも、やってることに変わりがないので、そのことでネタにされる。 だから柚布子ははっきりではないが営みが無い旨のことを以前話していた。 それはそれでネタにされるが、生々しい夫婦の営みを深く追求されるよりかはましなのである。

柚布子は「もう、まったく」といった感じで久世を見つめていた。
「そっかー、じゃ、尻触って悪かったな」
「え?」
「エッチな気分挑発してしまったかもな」
「もう、そんなことないってば」
「尻だけじゃ足りなくて、帰りに知らない男にナンパされちゃうんじゃないかと心配だよ、おまえさん、イケメンに弱いからな」
「あ・り・え・ません!!」
「そう? 尻触られて平気な女は意外とスキ有りだからな」
「もう、平気じゃないですよ、まぁ君だから、大声出さなかったんです」
「そうか、それは助かった、じゃ、次は他触っても声出すなよ」
「・・・・」
柚布子は困惑した顔つきではなく、久世のいうことを暗黙に了解しているようにも取れる微笑で久世を見ていた。

バーテンダーが久世と柚布子の飲み物をカウンターに置いた。 それを互いに取って掲げた。
「取りあえず、お疲れさん」
「おつかれさまです」
久世の言葉に柚布子も応え、互いのグラスを合わせた。

飲み物を口にすると、二人ともグラスをカウンターに置いた。 すると久世が隣の椅子に置いてあった赤い手提げ袋を柚布子に手渡した。

「可愛い袋、なーにー? まさか、プレゼント?」
「その、まさか・・・・ んな訳ねーだろ」
柚布子は少しガッカリした顔になったが、手提げの中身を覗いた。
「出して見て」
久世の言葉に促されて柚布子は中の物を取り出した。

それは、いつも目にする仕様書の束と折りたたまれた図面であった。 柚布子は一番上の取り纏め表に目を通した。 久世の会社から手配されるものには決まってこの取り纏め表があり、それから書類が展開されてシステムが手配されるようになっている。 それを大体は久世や遊佐と打ち合わせて、遊佐が仕上げていた。 今回も遊佐が取り纏めたものと疑わなかった。 その先入観が後でとんでもないことになることを柚布子はこの時気付くはずもなかった。

「もう、ちゃんと出来上がっているなら、営業に渡すだけで良いのに」
柚布子は書類を見ながらそう言った。
「おまえさんだけじゃなくて、営業も足運ばねーからさ」
「相すいません」
「営業呼びつけて渡せば良かった? ま、そうすれば今日逢わずに済んだかもな」
「もう、そんなこと言って・・・」
「なに、俺に逢いたかった? 愛しちゃったか?」
「・・・・」
柚布子は嬉しかった。 久世のお陰で久世の会社からの取引が増え柚布子の株が上がっているからだ。 そして、また労せずに受注が決まった。 SI会社の時も同じような受注であるが、こうも効率が違うものだと感心した。 もっとも久世の会社では久世の意を汲んで処理する遊佐があっての事だと柚布子も分かったいた。
それに比べるとSI会社は組織で動くので重盛が奮闘している割には仕様が纏まるのに手間が掛かっていた。


「俺に逢いたかった?」そう聞かれたことが何より嬉しかった。 そう聞くということはそれだけ柚布子のことを気遣っているからこそと思ったからである。 「愛しちゃったか?」は今までも久世流のお世辞で何度か聞かされていて、流していたが、今日は心にその言葉が留まったような気がした。


「でも、ちゃんと営業に手配のメール出しておいてよ」
「ああ、出したよ、丁度、おまえさんが会社出たくらいにな」
「そう、それなら安心だわ」
「書類の現物は、今夜、中務柚布子にベッドの中で渡しておきますって付け足しておいたよ」
「もう、まぁー君ったら、嘘つき」
柚布子はこれも怒るのではなく、いつものからかいのことのように微笑んで応えていた。 もっとも柚布子より久世の会社の方がこの店から遠く、先に店に着いているので柚布子が会社を出た頃に久世がメールを出すのも不可能なのである。 だからメールの内容も嘘ということである。

「まあ、まあ」
「もう、また、そういう悪い嘘ばかり言って」
「じゃ、今度は嘘じゃないようにするさ、おまえさん次第だけどな」
「え?」
「おまえさんの好きなバックでな」
柚布子はいつもの久世の調子だがいささか過激であるとは薄々感じていた。 だが、今迄の久世との会話の慣れと久しぶりに逢ったというギャップが過激さを許容してしまっていることに気が付いていなかった。

「また、そんな目をする、本気か?」
「・・・・」
「悪かった、悪かった、謝るよ、だから、もうその書類仕舞えよ」
柚布子は書類を自分のバッグに仕舞おうとした。 しかし、どう見ても柚布子のバッグには入りそうになかった。

「その手提げに入れて持って帰っていいよ、何の為に俺がその手提げ用意したと思っているんだよ」
柚布子の仕草を見て久世が空かさず言った。
「ありがとう、まぁー君、そんなことまでしてくれて」
柚布子は嬉しかった。 久世の得意の口説き術かも知れない。 散々責めて、不意に優しくされるとその優しさが倍以上に感じることを。 しかし、普通以上であることには変わりはなかった。

「だって、さ、その、おまえさんのくたびれたバッグじゃ底抜けて書類を道にばら撒いちゃうだろ?」
「もう、ちゃんと、底はついてますぅ」
「それに、その、熊のマスコットも汚れて白熊が月の輪熊になってるみたいじゃん」
「失礼ね」
柚布子は少し本気に怒った。

「ま、大事にしろや、そのバッグ、思い入れがあるんだろうから」
久世は急に声を落として真面目な表情になった。
「うん」
柚布子はまたしても久世の緩急にしてやられたと思った。 思い入れのあるバッグに無理に詰め込むようなことがないようにと、ましてやバッグに思い入れがあることまで見透かされているのだから・・・・
  1. 2014/11/02(日) 08:57:00|
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序破急 - 序の45 夫の知らない妻(7)

二人は世間話を少ししながらグラスを傾けたが柚布子はグラスを干すことは無かった。

「ところでさ、以前紹介したネイルサロン、行った?」
柚布子は首を振った。
「明日、時間が取れたから行こうと思うの」
「そっかー、ちゃんと指名しろよ、雄太を、お姉キャラだけど、腕は確からしいから」
「うん、指名してあるわ」
「その、ネイル最後に逢った時と同じだもんな、ってことは結構忙しいってことか、やっぱり」
「ありがとう、まぁー君、気が付いてくれて」
「何が?」
「結構、忙しいってこと」
「ああー、そう忙しいから、旦那とご無沙汰は嘘じゃないと思っただけさ」
「もう」
柚布子は悪戯っぽく見つめた。

「それに」
「それに、何?」
「ここで紹介したイケメン業者とも連絡取ってないみたいだし」
「連絡する訳ないでしょ、用無いんだから」
「あれ、冷たいな、仕事じゃなくて、良かったのに、だってイケメンで好印象だって言ってたじゃん」
「・・・」
「あいつ、バック得意って、言ってたぜ、 おまえさん好みだろう?」
「・・・」
「旦那以外とはバック専門だって、違ってないよな?」
「まー君、私、帰る」
柚布子はバッグと手提げを持ってカウンターのスツールから降りようとした。


「まあ、まあ、待てよ、未だ渡す物があるんだから」
柚布子は本気で帰るつもりであった。 しかし、久世の言葉に反射的に動作を止めた。 柚布子の身体は責められた後には良いことがあることを学習してしまったようである。

「これは、正真正銘のプレゼント」
久世はポケットから白く光る小さな四角いペンダントを取り出し柚布子に渡した。
「わー、嬉しい、これプラチナ? それとも銀? かしら」
「ばーか、アルミだよ、見れば分かるだろ?」
「なーんだ」
柚布子は手に取るとそれが小さな四角いアルミ片ではないことが直ぐに分かった。 そして、そのペンダントには『U5』と『Maa』の刻印が別々の面に彫られていた。 それが何を意味するか柚布子には直ぐ分かった。

「アラブの職人がさぁ、門前通りの角で露天出しててさぁ、冷やかしているうちに買わされちゃってさ」
「そうなんだ」
「漢字は流石に活字が無いので彫れないからさ、それに『柚布子』って彫ったらマズイだろ?」
確かにそうである。 そうでなくても家では着けられないと柚布子は思った。


「貸して」
久世は柚布子の手からペンダントを取ると、柚布子に近づき柚布子の首にペンダントを着けた。 いままでの付き合いの中で一番接近した場面かも知れない。
「おまえに、首ったけ、なんてね」
久世はペンダントを留め終わると、手に掛かった柚布子の髪をそっと撫でながら手を引いた。 柚布子はその手に頬ずりしたい衝動を必死に堪えていた。 そして、
「ありがとう、まぁーくん」
「ん、だから、まぁー君じゃねーだろう」
柚布子は掛けられたペンダントを親指と人指し指とで挟んでそれを実感していた。

「それ、着けたまま混浴温泉入るなよな」
「え?」
「鍍金とはいえ、黒くなっちゃうからな」
「やっぱり、アルミじゃないのね」
「アルミだよ、黒くなるアルミ、硫黄のような酸に浸かると黒くなるアルミ」
「また、嘘ばっかり」
「嘘じゃないさ、じゃ一緒に混浴で確かめるか?」
「何で、混浴なの?」
柚布子はまた久世流の話術だと分かっていたが、そのままその話に合せた。


「さて、おまえさんも、これ以上飲む気ないみたいだから、引き上げるか?」
「うん」
二人は割り勘で会計を済ませ店を出ると、地下街を並んで改札口まで歩いた。


柚布子の乗る路線の改札口に着くと柚布子は改札を入り、振り返った。 そこには久世が片手をポケットに入れ、もう片方の手で小さくバイバイをしていた。 柚布子も同じようにそれに応えた。


柚布子は自宅とは反対方向の電車に乗った。 会社へ戻る為である。 書類を渡された時にそう決めていた。 だからビールを一杯しか飲まなかった。

会社に戻ると事務所の部屋には誰も居なかった。 周りの机を見ても誰かが勤務している様子では無かった。 柚布子は久世から預かった書類を机に広げると、酔い覚ましの為に自動販売機コーナーに向かった。 一杯とはいえ飲んだ後の仕事であるから、あまり褒められたことではない。 柚布子は同僚や上司に見られないことでほっとした。

缶コーヒーを一口飲むと、トートバッグの中からノートパソコンを取り出し起動させた。


メールを立ち上げると、新着メールが2件入っていた。 1件はあろうことか久世からだった。 メールボックスへの着信時間を見ると。 何と、柚布子が会社を出た後でショットバーに着く前であった。 久世の言った通りであった。

柚布子は急に指が震えた。 ここまで久世の言う通りだと、ベッドで書類を渡すということが書かれているかも知れないのである。 メールでも冗談をそのまま書くのが久世流である。

果たしてメールの内容は;
『メールで送れない図面の元本は、本日打ち合わせに来てくれたゆうこりんに預けましたので受け取って下さい。

以上、宜しくです。

○○○システム株式会社
久世 昌哉』
であった。 柚布子はメールの内容が先ほど聞いた物と正反対なのでホットした。
「もうっ」
柚布子はそう呟くとペンダントを触ってまた親指と人差し指で挟んでそれを実感していた。
そして、もう一通は担当営業からのお礼の返信メールであった。


柚布子は図面をコピーして関係者に配り、手配リストを作成して営業からの返信メールのスレッドで社内の関係者に手配した。 手配リストも久世からのメールに添付されいたエクセルを編集して社内向けにするだけなので楽だった。 柚布子はあまりにも順調に進む手配に重要な事を忘れていた。

それは、社内レビューであった。 さらに運の悪いことに展示会で忙しいことも有り、他の者もその手順が抜けていることを指摘せずに手配されてしまうことになるのである。

柚布子はペンダントを外すと机の引き出しに仕舞い、帰り仕度を始めた。




自宅の最寄駅に着くと流石に疲れが出て来た。 少し重い足取りで改札口を出ると、
「柚布子」
柚布子を呼び止める声が聞えた。

英生であった。 偶然にも同じ時間に帰宅したのであった。
「あなた、遅くなってごめんなさい」
「何が?」
「今日、急に、手配しなきゃならない案件があって、遅くなったの」
「そーなんだ、お疲れさん」
「うん」
柚布子は久世と逢ってたことを少し後ろめたく思い、謝った。 以前も久世といつものショットバーで飲んで帰ったことがあったが、夫より後に帰宅することは無かった。 勿論、会社に戻らなければ先に帰宅出来ていたのである。

久世と遊んで遅くなったのではなく案件の手配をしたが為なので、仕事で遅くなった訳だが、それは久世の為に早く手配したいという柚布子の思いであったというならば、久世の為に遅くなったと言える。

「帰ったら、直ぐに夕飯作るわね」
「いや、今日はラーメン、食べて帰らないか?」
「え?」
「折角、こうして二人になったんだから」
「うん」
柚布子は英生の提案を断るはずが無かった。 だが、夫と並んで歩く柚布子は久世と地下街を並んで歩いた時より離れて歩いていることに気付いていた。

  1. 2014/11/02(日) 08:57:55|
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序破急 - 序の46 有給休暇

英生がゴミ袋を持って出掛けるのを柚布子は見送った。 今日、柚布子は有給休暇を取っていた。 自宅マンションのインターフォンの入れ替えがあるからである。 マンションのインターフォン工事は1ヶ月前の休日に一斉に行われていたが、柚布子たち夫婦は親戚の用事で出掛けていたのでその時に工事していなかった。 今日がその時に不在だった部屋の工事日である。

マンション全体は新しいインターフォンシステムに更新されているので、柚布子の部屋のインターフォンはその間使えていなかった。

英生は派遣社員である為休みが取り辛い。 社員の柚布子が立ち会うことになった。


インターフォンの工事は午前中というだけで詳細の時間は決まっていない。 柚布子は簡単なメイクだけは済ませて洗濯や掃除をした。 そして、あることを始めた。

それは、久世とショットバーに行った夜は英生が帰宅するまでの間行っていたことである。 昨夜は帰宅が英生と一緒になったので行わなかった。 だから、それをこれからするのである。

念の為、戸締りを確認してカーテンを閉めた。 しかし、一旦閉めたカーテンをレースのカーテンだけに戻した。 10階建てのマンションの5階である。 いつもは夜行うのでカーテンが開いていても部屋の電気を消せば暗闇であるが、今は午前中なので明るい。 明るい時間帯の行為は初めてで、刺激的かも知れないと思った。

いつもは、英生が何時帰宅するかも分からないので大胆なことは出来ない。 だが、今は違う・・・


柚布子は寝室のドレッサーの鏡をベッドの方へ向けて、ベッドから身体が映せるようにした。 次に、ドレッサーの引き出しからあまり使わないヘアーブラシを取り出し、洗面所に持って行き無水アルコールで柄の部分を消毒した。 それを寝室のベッドの枕元に置いた。 ヘアーブラシを準備するようになったのはつい最近のことである。 そして一旦リビングに戻った。


リビングのソファーに座ると、ワンピースの胸元から左手をインナーの下へ入れた。 更にブラジャーの淵から指を滑り込ませ乳首を挟んだ。 そして、指を動かし始めた。



「あ、あーん、だめよ」
自ら声を出して、喘ぎ、舌で唇の淵をなぞった。 その唇に右手の指を這わせ、唇を弄った。 その指を舌が追いかける。 ついに、舌が指に追いつき指は唇に包まれて舌で弄ばれた。 柚布子の脳裏にはディープキッスをしている光景が浮かんでいるに違いない。

「あっ、だめっ」
柚布子は硬くなった乳首を指で揉んだ。 そして掌全体で乳房を包み揉み始めた。 唇を離れた右手は右の太腿からミニのワンピースの中へと容易に滑り込んだ。

「あっ、いけないわ」
右手は太腿から脚の付け根へまっしぐらに進み下着へと到達した。 柚布子の両脚はきつく閉じられているが、手の侵入と共にゆっくりと開いていった。

「そこは、だめっ」
右手は下着の縁から懸命に中へ入ろうと演出している。 暫く演出した後、下着の中へと滑り込んだ。 そして、指にしっとりした湿り気を感じていた。



いつもは英生が帰宅することを想定してこれ以上リビングで行為をすることは無いが、今は大胆に出来る。 柚布子はパンティーを脱ぎ、フローリングの上へ落とした。


明るい日差しの中での自慰行為。 柚布子にとっては初めてであった。 柚布子はソファーに腰掛けたまま窓の方へ脚を向けて、外が見える姿勢になった。 外には空しか見えない。
その空に向かって脚を広げ右手で股間を揉んだ。


「あ、いやん」
陰核を爪の先で掻いた。 同時に左手で乳首を揉んだ。 自然と腰が前へ突き出していた。
柚布子はその行為に暫く耽った。 しかし、柚布子の身体はそれだけの行為で終わるように出来ていない。

柚布子は指で大陰唇を挟み揉んだ。 それに続き小陰唇を今度は広げ。日差しの下へ晒した。 太陽からは柚布子の身体の奥まで見えているに違いない;

「あ、あん」
柚布子は小陰唇を広げ膣口を露にした。 そこに指を入れて揉んだ。 もっと奥まで指を差し込みたい衝動を堪えていた。 それは、柚布子のネイルが邪魔して奥まで差し込めないのである。 仕方ないので小陰唇を指で押さえるようにして揉んだ。 時折、膣口を広げ、胸から左手の応援を得て陰核や広げられた膣口をネイルの先で掻くことを繰り返した。

小陰唇から指が離れるとと指から糸を引いたように柚布子の陰汁が伸びた。 もはや、この状態を繰り返して居られるはずかない。


柚布子は寝室に行くと、生まれたままの姿になりベッドにうつ伏せにダイブした。 誰かにベッドに放り投げられた光景でも想像したのであろうか・・・・

「あー」
柚布子は溜息を漏らし、腰をゆっくりと持ち上げ下半身だけ膝立ちの姿勢になった。 顔は掛け布団に埋もれているが横を向いてドレッサーの鏡を見つめている。 そこには下半身だけの自分が映っていた。

「あー、見ないでぇ」
その下半身を誰かに見られているかのように天井に突き出した。 そして、片手で小陰唇を開き、膣口を天井に見せつけた。 そこは既に潤いギラギラと光っていた。 その光る膣口に指を入れ潤いを指に絡めると陰核に塗り、指で捏ねた。 すると、潤いは更に増した。

柚布子はその臀部を誰かに掴まれえいるかのように振り、小陰唇をこれでもかというくらい押し広げたり、窄めたりした。

柚布子の陰汁は小陰唇から溢れてくるのではと思うくらい潤んでいた。

いつまでもこのままで居られるはずもない。 身体は快楽を求めている。 柚布子は枕元のヘアーブラシ引き寄せ、ブラシの部分を握った。 そして、柄の部分を恥丘の方から小陰唇へと這わせた。

柚布子夫婦はバイブを使うプレイをしていない。 だからバイブを持っていなかった。 内緒で買うつもりも柚布子にはない。 しかし、夫意外の男根の代わりのバイブのそのまた代用品が今は必要である。 ヘアーブラシの柄がそれである。

「あ、だめよ、それは」
柚布子は自ら甘い言葉を吐くことで陶酔を深めた。 夫以外の男根は陰核を擦り、小陰唇をなぞった。 英生がいつも行っていることと同じである。 浮気の経験の無い柚布子は夫のする行為と同じ事を代用品に求めた。 しかし、柚布子が覗いている鏡の中は英生ではない男の男根が柚布子を堕とす寸前の光景なのに違いない。

「あー、許してー」
誰に許しを乞うのか。 不義を働くことなのか、堕とさないでくれということなのか。
代用品の男根は膣口に宛がわれ、柚布子の貞操を破ろうとしている。


柚布子は実際のセックスのようには昂ぶらないことを知っていた。 柚布子を貫こうとしているものは代用品のそのまた代わりである。 柚布子は肉体的な昂ぶりの代わりに精神的な満足を得ようとしていた。 この体位がそうである。 夫の英生はノーマルな体位が多いのでこの体位は妄想の時だけに取って置きたかった。

柚布子の本心は妄想の中の男の為にだけこの体位を取りたかったのかも知れない。

柚布子はドレッサーの中の自分の下半身と脳裏の男性を重ねた。 そして妄想の世界へ入って行った。



柚布子の臀部は男の手に掴まれていた。 その手は無骨でゴツゴツした肉体派とは程遠く白く細長く冷たい物であった。 そして、腰を密着すべく狙いを定めている。

男は柚布子のヴァギナを押し広げるとペニスをそこにあてがった。
「柚布子、いいね?」
男は柚布子に最終確認をした。 柚布子は小さく頷いた。 すると、男は腰を少し押し出した。
「あ、あー」
柚布子の悦びの声が部屋に響いた。

男は、ペニスのをカリの部分まで埋め込むと小刻みに腰を振動させた。 ペニスを包んでいた襞にあっという間に柚布子の陰汁が染み出て来た。 それは奥までペニスが挿入されることを催促しているかのようである。

「柚布子、じゃ、いいんだね」
男は腰を進めペニスを柚布子の中に埋め込み腰を柚布子の臀部に密着させた。

「あ、あーん」
柚布子は先ほどに増して大きな悦びの声を上げた。
男はゆっくり腰をグラインドさせながら、腰を律動させた。

「あ、あ、あん」
柚布子の鼻から抜けるような喘ぎ声が男の腰の律動に合わせて漏れている。 柚布子は時折胸を揉まれ、その手で感じ易くなっているクリトリスをも揉まれていた。 臀部を天井に突き出した格好で男に貫かれていた。 その光景に自ら昂ぶっていった。


「あ、あ、いいー」
男の腰の動きが激しくなってきた。 柚布子も歓喜の喘ぎを加速させていった。 柚布子のヴァギナは激しい動きに歪み、クリトリスは強く指で揉まれて逝きそうであった。 そして、
「ゆ、柚布子、愛してやるぞ」
「まっ、昌哉さ~ん」
柚布子は妄想の中の男の名前を叫び身体を硬直させ、背中を仰け反らせた。 そして目を閉じて余韻に浸ろうとする中、異様な振動と人が呼ぶような声を遠くに感じていた。

  1. 2014/11/02(日) 12:42:51|
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序破急 - 序の47 インターフォン

「まっ、昌哉さ~ん」
柚布子は久世の名前を叫びながら身体を硬直させた。 名前を叫ぶことで精神的に満足させていた。 そしてその余韻に浸ろうとしていると、異様な空気の振動と人声のような音を感じた。

余韻の中でその振動が自分の部屋の玄関ドアを叩く音で、誰かが名前を呼んでいる声であると気が付いた。

柚布子は正気に戻った。 状況から判断すると、インターフォンの工事業者が尋ねて来たに違いないのである。 習慣とは恐ろしいものである。 人が尋ねて来るのであればインターフォンのチャイムが鳴ると思っていた。 しかし、柚布子たちの部屋はチャイムが鳴らないということを忘れていた。

柚布子は慌てた。 今、全裸である。

ベッドの脇に脱いだインナーとワンピースを取りあえず着けた。 そして玄関ドアへと手櫛で髪を整えながら向かった。


玄関のドアスコープから外を覗いた。 もし、工事業者であれば暫く待ってもらって身だしなみを整えようと思った。 柚布子の頭の片隅に、もしかすると音は空耳だったかも知れないとの思いがあったからである。

ドアスコープの外には誰もおらず、何の物音もしなかった。 空耳だったのである。

柚布子は念の為ドアの外を確かめる事にした。
ドアのチェーンを外しロックレバーを開放にした。 レバー式のドアノブを下に降ろし、ドアを押し開けた。 機密性の高いマンションのドアは空気が通う瞬間まではとても重く力が要る。

ドアを開けた瞬間、柚布子はドアと一緒に外に出てしまった。 と、その時確かにドアの前には人は居なかったが、インターフォン工事の関係者だろうか、二人の若い作業服姿の男性が他の階へ行くつもりでエレベータの前に居たが、勢い良く開いたドアの方を振り返った。

作業員は開いたエレベータの扉には目もくれず、一目散に柚布子の部屋の前にやって来た。 

「おはようございます、 またお留守かと思いました」
「すいません、奥にいたものですから」
柚布子は咄嗟に答えた。 もし、作業員が居たならドアを開けずに少し待たせて身だしなみを整えてから中に入れようと考えていたが、誰も居ないという想定でドアを開けたところ作業員が来てしまったのでそれが出来なくなった。
作業員も工事のことは事前に通知済みで部屋の前で待たされたのだから、直ぐに中に入って作業が出来ると思っていた。

「508号室、これから作業に入ります」
一人の作業員がトランシーバーで管理人室の作業員にでも連絡をしたのであろう。 もはや、柚布子は作業員を待たせることは出来ない。

「どうぞ」
柚布子は作業員を部屋の中へ入れた。
「失礼しまーす」
一人の作業員が養生シートを抱えながら柚布子に続いた。 最初は下を向いて入って来た作業員だが、急ににやけた表情になり視姦するかのように目線を身体に這わせたのを柚布子は感じた。

作業員は居間に来るなり独特な匂いを感じ取っていたようだ。 それぞれの世帯には個性のある匂いが付き物であるが、あの匂いはどこでも同じである。 作業員は柚布子の陰汁の匂いを嗅ぎ付けたに違いない。 そして、柚布子の姿を観察した。 特にミニのワンピースの裾から膝にかけて視線を何度も這わせた。 柚布子は気が付いていないが、作業員には両方の膝頭から脛にかけて薄っすらと肌が腫れるほどではないが、赤味を帯びていることがはっきり見えていた。

部屋着姿であるのは当たり前である。 だから生脚であっても不思議ではない。 だが、作業員は柚布子が纏っている服が少ないことに気が付いていたかも知れない。 インナーとミニのワンピースのみである。 しかも膝頭から脛にかけて擦れたように赤い。 それは四つん這いの姿勢でいたことを物語っている。 そしてその臭いはワンピースの裾の奥からも漂っていたかも知れない。

もう一人の作業員は玄関の外で玄関のインターフォンを壁から外していた。 中に入った作業員はリビングのインターフォン周りを養生シートで養生を行っていた。 柚布子はそれを少し離れて見ていた。

「工具を取ってきます」
中に入った作業員は養生を終えるとそう言って玄関に向かった。 そして何かひそひそと一言二言外の作業員と言葉を交わして工具箱を提げて戻って来た。 柚布子はまだどうしていいのか考え付かずにただ立っていた。

作業員は手際良く壁のインターフォンを取り外した。 養生など必要のないくらいの手際良さであった。 すると玄関からもう一人の作業員が新しいインターフォンを持って入って来た。 柚布子に目礼するその顔は初対面の時とは違ってにやついていた。

「古いコードを引き出しますので、もう少し養生します」
そう言うと反物のように丸めていた養生シートをリビングの中へ伸ばした。 と、その時作業員の手が止まった。 作業員の視線の先には白い小さな布が落ちていた。


柚布子もそれに気が付いた。 寝室から出て来る方向からは見えない位置にそれは落ちていたので柚布子はすぐに気が付かなかった。 柚布子は咄嗟にワンピースの上から股間を押さえようとするのを止めた。
もし、それを見られたら自分がその小さな布切れを身に付けていないことを白状しているようなものである。

作業員は思ったに違いない。 今、この女を押し倒してミニのワンピースを捲れば、何も身に付けていない生身の女体が現れ脚を広げ容易に女の体内に自分の欲望を突き刺すことが出来ると。 一人でも可能な状態だ。 もう一人と共謀すれば、隣の寝室に連れ込みベッドで抵抗できない状態で思う存分楽しむこが出来る。

柚布子もまた、同じように危険な状態であると感じていた。 なんとか口実を考えて他の部屋で身だしなみを整えようとしたが、リビングは中心に位置しているので何をするにも悟られてしまう。 何も気が付かないフリをするのが最善だと思い立ち尽くすしかなかった。

柚布子には作業員の背中に目があるかのように感じていた。


作業員の手際は相変わらず良かった。 一人の作業員が準備を済ませたのか再び玄関へと戻っていった。 そして掛け声が聞えるとリビングの作業員は古いコードを壁からみるみる引き出した。 そのコードは養生シートの上へ長い蛇のように畝っていた。 そして。その蛇の先には小さな布切れが柚布子のミニのワンピースの中は何も着けていないことを物語るように落ちている。

あと少しで蛇が柚布子の布切れを飲み込むのではないかと思うくらい近づくと、蛇は止まり、その根元に新たな蛇の頭が現れた。

古いコードを通線代わりに新しいコードを玄関から通したのである。 同じ技術系の柚布子はそのやり方に感心していた。

作業員が新しいコードの先端のビニールを剥がすと、そこには幾つかのコネクターが既に付いていて新しいインターフォンの裏に差し込んでボタンを操作した。 そして暫く操作した後、壁に取り付けた。

取り付けが終わるとトランシーバーで連絡して柚布子の方を振り返った。
「奥さん、取り付けが終わりましたので説明します」
「はい」

柚布子はインターフォンの前へ来ると、作業員と肩を並べるように立った。 作業員は柚布子の胸元から中へ視線を這わせた。 インナーとミニのワンピース以外にその下に着衣がないことが手にとるように分かった。


築15年以上のマンションのインターフォンは映像記録付きの最新のものに交換された。 柚布子が使い方の説明を受けているうちにもう一人の作業員が養生を片付けていた。 最後に玄関のインターフォンの説明を聞くと所定の書類に印鑑を貰って作業員は次の部屋の作業へ向かった。

柚布子は気恥ずかしい時間が過ぎてほっとしたに違いない。 だがリビングに戻った柚布子に新たな事件が待ち受けていた。
 


「人妻のマン汁たまんねぇ~な」
「朝っぱらからオナ狂いだからな」
「犯らせてくれるかもな、お、その5階に停まるぞ」
ここは一般のマンション、ビジネス用ビルのエレベータに比べれば昇降速度が遅い。 幅広い年齢層に対応する為、停止してからの扉の開閉速度も遅い。

柚布子は外出の為エレベータの前で待っていた。 その人声はエレベータの降下と共に降ってきた。 エレベータの扉の奥からの人声なので周りに聞えるほどではなく、エレベータの前で待っている人にしか聞えなかったであろう。

柚布子はその会話が自分の事に違いないと思った。 だから、エレベータの中の人と顔を合わせたくなかったが、エレベータの扉は開く寸前である。 もし、開いてエレベータに乗らなかったら不自然だし、扉の前から離れる時間もない。 柚布子は聞えなかったフリをしてエレベータに乗るしかなかった。


インターフォンの工事作業員が部屋を出て行った後、柚布子はその重大なことに気がついた。 インターフォンの工事中には恥ずかしい思いを隠しつつ平静を装っていた。 その原因となった小さな布切れ。 柚布子が不用意に脱ぎ捨てたままで、作業員に発見されたかも知れない下着。 それをいの一番に片付けようとしたがソファーの陰にそれは無かった。

状況からみて柚布子がインターフォンの説明を受けている間に養生シートを片付けた作業員が一緒に持ち帰ったに違いないのである。 物が物だけに、作業員を追いかけ問い詰められない。 それは柚布子に恥ずかしい行為の最中だったことを逆に弱みとして握られるかも知れないという思いがあったからである。

これ以上係わらなければ何事も起こらないと思った。 現にどういう経緯のものであろうが、窃盗なのであるからそれを盗んだ者がそれをネタに何かしてくるとも思えない。 ましてや窃盗が知られれば職を失うことは間違いないのである。 仮に警察沙汰にならなくても、その手の業者は住居内のものに手を出さないように常に教育していることになっているからである。

柚布子の恥ずかしい行為を盗まれた下着からは証明出来ない。 だから大人しくその下着を諦めればそれ以上大きな事件にはならないのである。

柚布子は作業員と顔を会わせたくはなかったが、ネイルサロンの予約があったので出掛けなくてはならなかった。


果たして、エレベータの扉が開くとそこには柚布子の部屋のインターフォン工事をした作業員たちが乗っていた。 一人は初対面と同じように養生シートを丸めて抱えて手には工具箱を提げていた。 そして、もう一人は古いインターフォンやゴミをビニールに入れて持っていた。

柚布子は軽く会釈をしてエレベータに乗ると、身体を反転させて外を向き「閉」の釦を押した。 5階より下でエレベータに乗って来る者は無くエレベータは1階まで降りた。 その間皆無言だったが、作業員たちがにやにや笑いを堪えているのが息遣いで感じていた。

エレベーターが1階に着くと柚布子は振り返らずにエントランスの外に出た。 柚布子の姿が見えなくなると高らかに何か話す声が聞えた。 柚布子は自分の痴態を話し始めたのだと思った。 そして足早に駅へと向かった。
  1. 2014/11/02(日) 12:43:57|
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序破急 - 序の48 ネイルサロン

柚布子は朝から落ち込んでいた。 インターフォン工事の一件である。 せめてネイルサロンで気分を変えて落ち込みを取り戻すことにした。



初めて来るネイルサロンである。 久世の紹介である。 久世にその趣味があるのではなくネイリストと知り合いだからである。

柚布子は受付で名前を告げると待合室に通された。 暫くすると、受付の女性が5番と書かれたパーティションで区切られた部屋(?)に通された。 そこは、他のサロンと変わりない部屋であった。

「アサミさん5番にお客さん」
受付の女性が入って来た誰かに話しかける声が聞えた。 5番は自分の部屋であるが、『アサミ』は久世に紹介された人ではない。 柚布子は違うと思い入って来た女性に間違いであることを告げるべくドアの方に向かって立った。

「ごめんなさーい、待ちましたぁ?」
入って来たのは女性のネイリストではなく男性であった。 しかもその話し方でお姉キャラであることが直ぐに分かった。

「久世さんの紹介の柚布子さんね?」
柚布子は頷いた。
「そう、よかった、じゃ、座って」
「あのぉ」
柚布子は座りながら、久世から紹介された人ではないことを告げようとした。
「久世さんから紹介されたのはアサミさんではありませんが・・・」

「あら、聞えた? ゆーた(雄太)でーす、よろしくね?」
「はあ・・・」
「アサミはお店での名前なの、分かる?」
「あ、そうなんですか」
柚布子は店と聞いて全てを理解した。 そして雄太はバッグの中から名刺を取り出し柚布子に渡した。

「お時間大丈夫? じゃ見せて?」
柚布子は雄太に手を差し出した。
「まあ、なかなかじゃない、今度はどうする? 久世さんからは任せるって言われているけど・・・」
「はい、その通りにお願いします」
「分かったわ」
雄太はリムーバーをコットンに付けると柚布子のネイルに当てた。 そして古いジェルを丁寧に剥がしていった。

「あの、久世さんとは、どんなお知り合いですか?」
「聞きたい?」
柚布子は頷いた。 こういう場所では無言でいることが稀である。 仕上がるまでの間のトークも楽しみの一つだからである。

「別に知り合いじゃないの、 お店にねお客さんに連れられて来たのね、だから、お店とお客の関係でしかないのよ・・・」
雄太はそう話しながら柚布子の指を自分の鼻に近づけて匂いを嗅いだ。 そして少しにやけた表情をして話を続けた。
「オカマは趣味じゃないと思うけど、話を合わすのは上手な人よ、結構盛り上がったわよ・・・・ そこでね貴女の話も出たのよね」
「そうなんですか、で、どんな話だったんですか?」
「怒らないでよ、お酒の席での話しだから」
「ええ」
「私が昼間はネイルサロンで働いているって言ったら、私に頼みたい欲求不満の人妻が居るって言うのよ、なんでも旦那とは随分ご無沙汰な人妻なんですって、でも、ネイルが印象的だから、もっと男好きするネイルにしてくれって」
柚布子は思わず両手を引いた。

「冗談よ、男好きするネイルなんて出来ないわよ、私は貴女に似合うネイルをするわよ、任せて大丈夫だから、ところで久世さんは私の事何て言ってた?」
柚布子は再び両手を雄太に委ねながら話した。
「美大出のセンスの良いネイリストが居るから、頼んで見ろって、その人の手に掛かったネイルアートを見てみたいって」
「正解!! さすが久世さん、初対面からそういう眼力のある人だと思ったのよね」
雄太はクイズ番組のMCのようにはしゃいだ。 そして、古いネイルを全て落とすと柚布子の素の指が現れた。 それはネイルアートを施さなくても充分魅力的であった。

雄太もそう思ったのか、柚布子の素の指を眺めてうっとりしているようだった。


「ところでさぁ、立ち入ったこと聞いてもいい?」
「どんなことですか?」
柚布子はなんとなく話の流れから夫との夫婦生活のことだろうと予想した。
「久世さんとはもう寝たの?」
「え?」
予想外の質問に柚布子は当惑した。

「あら、そういう関係じゃないみたいね、ま、仕事柄初対面でそんな関係になっていないとは思っていたけど・・・」
柚布子は久世との関係を誤解されていないことに安堵した。
「御免なさいね、変な事ばかり聞いて、ほら、私たちって男女の線越えてるでしょ? だから未婚だの既婚だのって区別していないのね、男と女は寝たか寝ていないかなの、ホホホ・・・」
雄太が笑うので、柚布子も釣られて笑ってしまった。

「人妻に私のネイルアートをさせたい男、その男の勧めでネイルをする人妻・・・
どうみても二人は相思相愛としか思えないでしょ?」
柚布子は頷く代わりに首を傾げた。 しかし、目をじっと見ている雄太には見透かされていると思った。

「さてと、ベースコートは済んだわ、ちゃんと乾くまで手をそうしててね
ところでペディキュアはどうしてるの? 見せてくれる?」
柚布子は雄太が信用出切る人だと思い、任せた。

雄太は柚布子の座っている椅子を回転させると、その足元に膝を突いて座った。 そして、柚布子のヒールを脱がせた。
雄太はストッキング越に柚布子のペティキュアをチェックした。

柚布子は指が乾くように手を伸ばして何も出来ない格好をするしかなかった。 すると、雄太はペティキュアをチェックしていた手を脚の甲から脹脛へと這わせ片方の手を脛に当ててマッサージを始めた。

驚いている柚布子に
「あたしね、マッサージの修行中なのね、ほら、この業界ってお店だけじゃ遣っていけないじゃない? だから・・・・ 一応、免許皆伝の手前の腕前だから大丈夫よ」
「じゃ、マッサージでも稼いでいるんですか?」
「まだね、今は一応、美大を出た経験生かしてこれね、でも皆男に貢いじゃうのね」
雄太は笑いながら話しているが、柚布子は合わしていいか分からず
「大変ですね」
と、だけ応えた。

雄太の手は膝裏から腿へとマッサージをした。 柚布子は思わずスカートの裾を押さえた。 すると雄太はもう片方の脚を同じようにマッサージした。 そして今度も腿へ手を伸ばした。
「心配しないで、女同士でしょ?」
柚布子の手が緩むと雄太の手は太腿辺りまでマッサージをした。 雄太からは柚布子の下着がはっきり見えている。 柚布子も不思議な気分でマッサージを受けていた。 本当の女同士でも恥ずかしい。 下着が見えないようにブランケットで隠したりする。

雄太はまだ男性に違いないが、中身は女性に成りきっているようだ。 その男性に見られているのがあまり恥ずかしいとは感じなかった。 女性なら下着のセンスやらで詮索されるが、男はそんなことに興味はない。 逆に男は下着の良し悪しでなく単に女性のスカートの中というだけで興奮するだろうが、女性はそんなことで興奮はしないのである。
そんな、何とも中途半端な状態が恥ずかしさを打ち消しているのかも知れない。

柚布子はこのままマッサージが続くと思ったが雄太はあっさり止めて爪の状態をチェックした。 その切り替えに感心した。

「じゃ、貴女に似合う久世さんの為の仕上げをするわね」
雄太は道具箱から筆を取り出し下地のマネキュアを塗り始めた。 ベースコートの処理までは今までのネイリストとの差が判らなかったが、マネキュアを塗り始めるとその手付きの違いに驚いた。 流石美大出であると思った。

雄太が下地を塗り模様を描いている間も世間話に興じた。 そして、柚布子は今朝の一件をアレンジして話した。
「そう、それは災難だったわね、ま。男なんてそんなちっぽけなもんよね」
「・・・」
「ところでさあ、話作ってるでしょ?」
「え?」
「本当は、貴女朝から自分で慰めていたでしょう?」
「・・・」
「図星でしょ?」
「・・・」
「判るのよ」
「どうして、判るんですか?」
柚布子は反撃を始めたが、瞬殺されるのである。

「だって、爪の間からマン汁の匂いがしてたもの」
柚布子は雄太が爪の匂いを嗅いでいたことを思い出した。 そして、観念した。 それも雄太の人柄のせいかも知れない。 女性とも男性とも云えないことが何故か許せるのである。 柚布子は頷いた。

「今頃、貴女のパンティーでオチンチン擦っているわよ」
柚布子は不快な顔をした。
「そして、べっとりザーメン付けて、貴女を犯したつもりになっているわ」
柚布子には男性のそういう行動が理解出来ずにさらに嫌悪感を露にした表情をした。
「貴女も楽しんじゃいなさいよ、どうせオナするんなら」
「え?」
「作業員にザーメーン掛けられるネタでオナしちゃいなさいな」
「・・・・」
「夫の留守中に工事に来た若い作業員に身体を与える人妻なんて設定どう?
女の柔肌をまだ知らない若い男、人妻の秘部に触れた瞬間若い血潮が暴発なんて・・」
「・・・・」

「ごめんなさい、 ちょっと、調子に乗り過ぎたわね、 一応、ワタシも昔はそんなことしてたかな?」
「はあ?」
「驚いた? でも安心して、今はもう男捨てているから・・・」

そんな会話をしているうちに柚布子のネイルは完成した。 今までとは違った感性のもので柚布子も満足だった。
「なかなか良い出来だわ、これで久世さんのオチンチン握るのね?」
「もう、そんなことしませんってば・・・」
「久世さんのどんなのかアタシも興味あるわ、後で教えてね」
「もう、知らない」
だが、柚布子の頬は少女の恥じらいのように赤くなっていた。


「今度は家に来て、名刺に書いてあるから」
そして、雄太は声を潜めて
「ここ、手数料高いの、それに今度はベディキュアとマッサージを無料でしてあげるわ」
柚布子はここのネイルサロンの仕組みを雄太との会話で理解した。 ここはフリーのネイリストが場所を借りて商売しているのである。 自前で店を出せない者や自宅で商売している者が、ここで客を集めるのである。 勿論サロンを安定させる為に数名の専属のネイリストは雇っている。
改めて部屋を見渡すと監視カメラが設置されていた。 ネイルサロンのオーナーに内緒でオプション料金を貰ったりするのを監視しているのだと思った。 勿論、防犯の目的もあるだろう。

柚布子はカウンターで料金を支払った。 メンバーズカードを作るように勧誘されたが、断った。 更に勧められていると、雄太が「その人、いい人と逢う時間が迫っているから次にしてあげて」と助け舟を出してくれた。

柚布子は次回はもう雄太の家に行くことを決めていた。

そして、午前中と違って晴れやかな気分になりウィンドウショッピングを楽しんだ。 店の店員がそれとなく柚布子のネイルをチェクするのに優越感を感じていた。
帰りの電車の中でもつり革に捕まる指を誰もがチェックしているかのようであった。

だが、晴れやかな気分も帰宅するまでの間でしか無かった。
  1. 2014/11/02(日) 12:45:15|
  2. 序破急・中務
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序破急 - 序の49 雄太の言葉

それは明らかに雄太の影響に他ならない。 雄太の言葉が頭に残っていた。

「今頃、貴女のパンティーでオチンチン擦っているわよ そして、べっとりザーメン付けて、貴女を犯したつもりになっているわ」
雄太の言葉が現実になっていた。


柚布子は全裸でベッドに寝ていた。 朝と同じように一人で慰めていた。 朝と違うのは妄想の対象が久世ではないことだ。 午前中のインターフォン工事の作業員である。

「柚布子さん、もう我慢できないよ」
二人の作業員の一人がそう言った。 二人とも全裸の柚布子を見下ろしながら、自分のペニスを扱いていた。 柚布子は二人のペニスがもっと誇張されるように胸を自ら揉んだり身体をくねらせて挑発した。

「う、逝く」
一人の作業員がそう呻くと誇張されたペニスから白い液を柚布子の胸へ放った。
「あっ、あっ、あっ」
扱きながら柚布子の胸へと白い液を扱き出した。 
そして、もう一人は膝立ちの体制になって柚布子の足元へ進み柚布子の脚を割った。 それに呼応するかのように柚布子も股間に指を這わせヴァギナを広げて見せた。
「そこに掛けていいんだね、俺も、逝く」
作業員は柚布子の茂みに向かって白い液を放った。
「うっ、うー、ふー」
この男もまた最大限大きくなったペニスを扱きながら最後の一滴まで柚布子の茂み付近に搾り出した。


柚布子は妄想の中で午前中の作業員にザーメンを浴びせられた。 柚布子の視線の先には白い布切れが転がっている。 それは午前中に盗まれたものである。 それにべっとりと汚れのようなものが付着して光っていた。 柚布子の妄想の原点である。

柚布子はそれを眺めて妄想していたが、手に取った。 そしてその一部を指で掬い乳首に塗り揉んだ。
「あ、あ、あん」
柚布子は声をげながら一人目の男の行為を脳の中でプレイバクさせた。
男が柚布子の胸にザーメンを掛けるとそれを柚布子は乳房に塗り乳首を激しく擦った。 乳首のザーメンは擦り方の激しさのあまり直ぐに乾いた。


最初はそれを眺めてネタにして自慰をするだけのはずだったが、手に取りそれを自分の身体の一部に実際に塗ることで妄想が拡大した。 それでお仕舞いにしようと思った。

だが、汚れは意外と多量で、布に染みこんだものも多い。 乳首に塗ったのはほんの一部だったが、残りのものにも手を付けたい衝動が湧いてきた。

「べっとりザーメン付けて、貴女を犯したつもりになっているわ」
雄太の言葉がまた蘇る。 柚布子の手が再びザーメンで汚されたパンティに伸びた。

「あ、あん、あ、だめー」
そう言いながらパンティーを裏返し、ザーメンが付着した部分を表にした。 そして、脚を広げその汚れの部分を股間に近づけた。 だが、手はそれ以上股間に近づけるのを躊躇しているかのように止まった。 一旦、それを遠ざけ止めようとしたが、再び近づけ、また股間直前で止まった。
柚布子は行為を続けるか迷っているかのように何度か同じ動作を繰り返していたが、
「あー」
と悲しい小さな叫びを洩らすと、ザーメンの付いた部分をクリトリスとヴァギナに擦り付けた。 貞淑な妻が淫魔な快感の誘惑に負けた瞬間だった。 そして、先程の妄想を修正した。

もう一人の作業員は柚布子の足元へ進み柚布子の脚を割った。 それに呼応するかのように柚布子も股間に指を這わせヴァギナを指で広げて見せた。
「そこに入れていいんだね」
柚布子は頷いた。すると、作業員はペニスを扱きながらヴァギナにペニスを押し当てた。 後は腰を押し出しペニスを埋め込むだけである。 しかし、
「あ、我慢出来ない、柚布子さん、逝く」
そう言うと、どくどくとザーメンをヴァギナに注いだ。


「あ、あん、いやーん」
柚布子は激しくそれを擦り付けた。 ザーメンと柚布子の淫汁とでパンティのクロッチ部分はヌルヌルの状態になった。 柚布子はさらにそれをヴァギナに押し込んで擦った。
「あ、あー、あーん」
柚布子は腰を浮かせ身体を硬直させた。 硬直の後、腰をベッドに落とし、暫くして上半身を起こした。 そして両手で頭を抱え髪を掻き分け、ついには両手で自分の両肩を抱き悪寒に震えた。

思いたったかのように浴室へ行き、パンティーを洗濯機に放り込みシャワーを浴びた。 胸と股間をソープで何度も洗った。 柚布子は少し後悔していた。 射精して時間の経った精液だから妊娠するこもないし、子宮に入れたわけでもない。

そうは言っても夫との行為はいつもゴム付きであるから、それを女性器に付着させたのは数ヶ月ぶりである。 しかも夫以外のものである。

流石に柚布子は嫌悪感が沸いて来た。 部屋着を着ると汚されたパンティーを洗濯機から取り出しビニール袋に入れゴミ箱の奥へと隠した。



それは柚布子が帰宅して夕食の支度が一段落した頃だった。 玄関で物音がした。 柚布子が不審に思い玄関へ注意深く行くと、玄関に小さな布切れのような物が落ちていた。 玄関ドアの新聞受けの小窓から落とし入れられたのであろう。 それは午前中に盗られたパンティーであった。 それを拾いあげようと、それに触れた瞬間、指にぬめり気のある感触が伝わり、柚布子は思わず、手を引いた。

パンティーのクロッチの部分に多量の精液が付着していた。 経験上一人分ではないと思った。 しかも、それが真新しいことくらい触れた温度で柚布子には判った。 柚布子はその事実に鳥肌が立った。
それは何処か他の場所で雄太の言うような自慰をし、柚布子の部屋のドアの新聞受けの小窓からに入れたのではなく、このマンションの何処か、しかも柚布子の部屋の近くで精液を付着させたことに他ならないからである。 恐らく非常階段の物陰だろうと思った。

柚布子は朝のようにドアのスコープから外を覗いた。 今度は午前中のように外に出たりはしなかった。 取りあえず盗られたものは戻って来たのでこれ以上何かあることが無いと思った。

「今頃、貴女のパンティーでオチンチン擦っているわよ そして、べっとりザーメン付けて、貴女を犯したつもりになっているわ」
雄太の言葉が頭をかすめた。 そして催眠術の暗示にでも掛かったようにベッドに全裸になった。


柚布子は暫く自己嫌悪に陥っていた。 もしかして、自分に誰かに襲われたい願望があるのかと不安になった。 そんな時電話が鳴った。

「あ、俺」
「あ、あなた」
「これから、帰るから、今、会社出るところ」
「うん、気をつけて帰ってきてね」
「何かあった?」
「え、どうして?」
「携帯出なかったから」
「あ、御免なさい、鞄に入れたままだわ」
「そっか、それならいいよ、じゃ」
「あ、あなた」
「なに」
「本当に気をつけて帰ってきてね」
「ああ、わかってる、じゃ」
  1. 2014/11/02(日) 12:46:23|
  2. 序破急・中務
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序破急 - 序の50 以前のセッションを回復しますか?

柚布子は電話を切ると、時計を見た。 英生が帰宅するまでにはまだ時間があった。 テレビのリモコンを取り電源を入れて番組表の釦を押した。 表示されるどの番組にもお笑いタレントの名前が出演者にあり、どこも同じような番組に感じたので電源を切った。
他にすることがないか考えていると、昨日の手配の事が気になった。


柚布子はトートバッグからノートパソコンを取り出すとモバイルカードを挿入して起動した。 そして会社のメールをチェックした。 昨日手配した案件について数人の担当から質問や納期回答が入っていた。 他にもインターネットで確認したいことが出て来たが、モバイル環境でインターネットを検索するには速度が十分ではなかった。

柚布子は自宅のパソコンの電源を入れた。 起動画面に続き選択を促す画面が現れた。 それは前回のシャットダウンが予期しないものであったのでセーフモードで起動するかどうかの選択画面であった。

柚布子は「通常のウィンドウを起動」を選択した。 英生からそういう画面が出たらそうするように言われていた。 本来ならセーフモードで起動すべきなのであろうが、その後の操作を柚布子は知らないからである。

ウィンドウは普段通りに起動した。 すると、初めて目にするポップアップが現れた。

『前回のセッションを回復しますか?』

柚布子は「はい」を選択したてみた。 柚布子にとっては前回のセッションなどどうでも良かった。 それは前回柚布子が操作した時に予期しないシャットダウンが発生したわけではないからである。

しかし、直感的に気になった。 それは英生がパソコンで何をしていたか気になったからである。

暫くすると、ブラウザーが起動し、とあるサイトが表示された。

『汚れていても愛せますか?』

黒の背景に白い文字で書かれたそのサイトのキャッチコピーである。
「え? なに? これ・・・」
柚布子は呟くと今まで自分が何か調べ物をしようとしていたことなど忘れてそのサイトに見入ってしまった。

『あなたの妻の赤裸々なを体験をお聞かせ下さい』

それは自分の妻を他人に抱かせることや汚されることが性癖の輩が集まるサイトのように柚布子には思えた。
柚布子はブラウザの更新釦を押した。 するとイメージカウンターの下2桁が変わった。 わずか1分も経っていないのにでアクセスが多いのだと思った。

夫がこのサイトを常習的に見ているのだろうか? 柚布子に疑問が沸いた。

ブラウザーのブックマークを確認したが見当たらなかった。 更に来歴にも前回と思われる記録しかなかったが、トップページ以外にも見ていることが判った。 もしかしたら、偶然このサイトを見ていてパソコンがフリーズしたのかも知れないとも思った。 柚布子のパソコン知識からはこれ以上の詮索は出来ないのであった。

柚布子は来歴に記録されているこのサイトの他のページを見た。 チャットにはM癖の夫が過激なメッセージで待機していた。 柚布子にはそういう心境が理解出来なかった。 S癖のある人には分かるのだろうか? と納得しないまま他のページを見た。

柚布子は妻が自らの夫以外との体験を告白する掲示板の入り口を見つけリンクをクリックした。 その内容は表題通りのものであった。 いとも簡単に夫以外の男に抱かれる様子を読んで信じられなかったが、限られた容量の中で告白するには心情の変化はかなり省略されているか表現出来ないのだろうと思った。
柚布子は全ての妻の告白を読みたかったが、限られた時間の中では諦めざるを得なかった。 しかし、何か勇気を得た気分になった。

妻の告白のページは来歴には無かったので柚布子は最後の来歴をクリックして、今自分が見たページの来歴を消した。
最後の来歴は自分の妻の体験を書き込む掲示板であった。 幾つかの投稿に目を通した。 流石に妻の告白とは違い男性雑誌に出てくるような露骨な表現のものが多かった。 その中で柚布子は一つの投稿に目が留まった。

それは、英世という夫が裕子という妻を自分の会社に派遣として働かせ女遊びが好きな若い社員に堕させるという物語風の投稿であった。 裕子は会社の若い独身男と次々関係を持ち、夫の直属の部下にまで身体を開いていた。 そして身篭ってしまったのである。
名前の読みが自分と同じで夫の名前も酷似していた。 もしかして夫が投稿したのか?

「ぷっ」
柚布子は噴出した。 それは、もし、夫が投稿してたものならあまりに芸のない設定と思ったからである。 それに夫にはそんな文才があるとは思えなかったからである。 結婚前に夫の報告書を読んだが同じように噴出したのを思い出した。
「有り得ないわね」


柚布子は夫がこのサイトをネットサーフィンか何かをしている時に偶然辿り着いたのだと思っていたが、それにしてはその日の来歴が少ないのであった。 柚布子は日付別に来歴を並び変えた。
すると、その日は二つのサイトしか記録されていなかった。 一つは今見ていたサイトである。 そしてもう一つは検索サイトであった。
柚布子はその来歴をクリックした。

検索結果の中にリンクが紫色のものがあった。 先ほど見ていたサイトである。 そしてページトップの検索窓には『妻の性体験』と表示された。


柚布子は夫が偶然このサイトに辿り着いたのではないという疑問が再び沸いてきた。 そして、この後のパソコンの状態をどうしようかと考えている時にインターフォンが鳴った。


朝の説明通りにインターフォンを操作すると、小さな画面に夫の顔がいっぱいに表示された。 柚布子は笑いながら
「お帰りなさい」
とマイクに向かって話すと「開く」の釦を押した。 すると画面の夫はドアへと方向転換していた。

柚布子はパソコンの前で慌てていた。 咄嗟にトートバックからUSBメモリーを取り出し、パソコンに差した。 柚布子は玄関を何度も振り返り早くUSBメモリーが認識されるのを待った。 そして自動的にUSBメモリーの内容が展開するとエクセルを軌道させ、ブラウザの来歴を本日の分だけ消した。

程なく玄関のチャイムが鳴り、柚布子はインターフォンで画像を確認して玄関の鍵を開けた。

「ありがとう、鍵持ってたけど、新しいインターフォンがどうなのか試したくて」
「うん、私も、丁度良かったわ、あなたカメラに近づき過ぎよ」
「そっか、次は離れるよ」
「そうね」
「ところで、うちは何時工事した?」
「午前中よ」
「そうだよな」
「どうして?」
「うん、インターフォンの工事らしい作業員がまだ作業していたからさ、夜でも良かったならうちもそうすれば、柚布子も会社休まなくても良かったのにって」
「そうなんだ」
柚布子はインターフォン工事の作業員がまだマンションにいることに一抹の不安を憶えた。


「あっ、パソコン使っていたんだ」
英生はいささか慌てた様子で柚布子に聞いた。
「ええ、ちょっとエクセルの修正したくて」
「そうなんだ、立ち上げる時にエラー出てなかった?」
「特に気にしなかったけど」
「そう、それならいいけど」
「食事、用意するわね」
「ああ、腹減った・・・」

柚布子は夕食の準備に台所へ行った。 台所からパソコンは見えない。 後に英生が入浴中にブラウザの来歴を確認したらあのサイトの来歴は残っていなかった。

柚布子は夫に投稿のような性癖があるのでは? と、思うようになった。


そして、物語は序の1~6へと続くのである。
  1. 2014/11/02(日) 12:47:30|
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心の闇・北斗七星 (11)
1話完結■不倫・不貞・浮気 (18)
■寝取らせ (263)
揺れる胸・晦冥 (29)
妻がこうなるとは・妻の尻男 (7)
28歳巨乳妻×45歳他人棒・ ヒロ (11)
妻からのメール・あきら (6)
一夜で変貌した妻・田舎の狸 (39)
元カノ・らいと (21)
愛妻を試したら・星 (3)
嫁を会社の後輩に抱かせた・京子の夫 (5)
妻への夜這い依頼・則子の夫 (22)
寝取らせたのにM男になってしまった・M旦那 (15)
● 宵 待 妻・小野まさお (11)
妻の変貌・ごう (13)
妻をエロ上司のオモチャに・迷う夫 (8)
初めて・・・・体験。・GIG (24)
優しい妻 ・妄僧 (3)
妻の他人棒経験まで・きたむら (26)
淫乱妻サチ子・博 (12)
1話完結■寝取らせ (8)
■道明ワールド(権力と女そして人間模様) (423)
保健師先生(舟木と雅子) (22)
父への憧れ(舟木と真希) (15)
地獄の底から (32)
夫婦模様 (64)
こころ清き人・道明 (34)
知られたくない遊び (39)
春が来た・道明 (99)
胎動の夏・道明 (25)
それぞれの秋・道明 (25)
冬のお天道様・道明 (26)
灼熱の太陽・道明 (4)
落とし穴・道明 (38)
■未分類 (569)
タガが外れました・ひろし (13)
妻と鉢合わせ・まさる (8)
妻のヌードモデル体験・裕一 (46)
妻 結美子・まさひろ (5)
妻の黄金週間・夢魔 (23)
通勤快速・サラリーマン (11)
臭市・ミミズ (17)
野球妻・最後のバッター (14)
売られたビデオ・どる (7)
ああ、妻よ、愛しき妻よ・愛しき妻よ (7)
無防備な妻はみんなのオモチャ・のぶ (87)
契約会・麗 (38)
もうひとつの人生・kyo (17)
風・フェレット (35)
窓明かり ・BJ (14)
「妻の秘密」・街で偶然に・・・ (33)
鎖縛~さばく~・BJ (12)
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妻を育てる・さとし (60)
輪・妄僧 (3)
名器・北斗七星 (14)
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京子の1日・北斗七星 (6)
1話完結■未分類 (1)
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